空閑汐♂デイリー【Memories】18 かつて目指したものにはなれなかった、けれどもかつて目指した場所には辿り着く事が出来た。一度は喪ったと思っていた全ては、まだ自分の中に残されていて――喪失感に打ちのめされそうになる夜に抗い、空閑は約束の場所へと降り立つ事が出来たのだ。
「ようこそ、オーベルトへ」
静かの海に位置するオーベルトの玄関口であるオーベルト宇宙港で空閑を迎え入れたのは、いち早くオーベルト勤務を拝命し既にこの地で働きはじめていたフェルマーで。整った相貌にお手本みたいな笑みを浮かべて空閑を出迎えた彼に、空閑は小さく笑みを浮かべて頷いた。
「――で、アマネの事振ったんだって?」
宇宙港から少し進んだ場所にあるノースエリアのダイニングバーで、フェルマーは不機嫌そうな表情を浮かべてビールを呷る。刺すように繰り出されたフェルマーからの問いに、空閑は困ったように笑みを浮かべながらも頷いて。
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