ヤング・クロウリー ~始まりの物語~ 第二部㉕話「翼を継ぐ者」 この森に降り立つのは十何年ぶりだろう。
ディアヴァルは、思い出の詰まったあの森に帰ってきた。
楽しいことも、大変だったこともたくさんあった。そして胸の潰れそうな悲しい思い出も……。
真実の泉の小島に、聖なる樫の巨木は今も変わらずそびえていた。
ディアヴァルは樫の木の枝に舞い降りると、木の洞に飛び込んだ。
そこにあの石があった。すべての光を吸い込むような深い闇を宿した黒い石が、昔ディアヴァルが置いたそのままに木の洞の中に安置された一対の翼の間に置かれていた。
ディアヴァルは石をそっとくわえあげた。
あの鏡は、石を飲むように言っていた。そうすれば闇の力が我がものとなる、と。
彼はためらうことなく嘴を天に向けて振り仰ぎ、一気に黒い石を飲み込んだ。石はするりと喉を通り抜け、体内へと落ちていった。
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