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    ゆら@原稿

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    ゆら@原稿

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    snd.さんとの合同誌。発行時期未定。
    呪専卒業後、番になったごゆが子どもを授かり家族になったごゆ家族合同誌第二弾の進捗です。
    第三子を身籠っている時のお話。

    きみは、ぼくらのたからもの2 これは少し前のお話。
     二人の第三子となる長女がまだ悠仁のお腹の中にいた頃の話だ──。
     
     * * *
     
    「あ、また動いた」
     ぽっこりと大きくなったお腹に触れながら悠仁はうれしそうな声を上げた。
     その声に悠仁の傍にいて仲良く遊んでいた二人の息子が母親の顔を見上げ、子どもたち用のジュースを手にキッチンから家族のもとへと向かっていた五条がふっと笑みを浮かべる。
    「よく動く子だね。また動いたの?」
    「すげぇボコボコ蹴ってくるよ。腹痛ぇ」
     腹部の痛みを訴えながらも悠仁の顔は幸せそうで、五条はテーブルの上に持っていたジュースを置くと、彼が座っている隣に腰かけた。
     そして愛しいパートナーのお腹にそっと手を当てる。
    「どれどれ?」
     確かめるように五条が言うと、お腹の中の子どもは父親に応えるようにボコッと悠仁のお腹を蹴った。
     力強い胎動に五条も目を細める。
    「本当だ。今日も元気そうでなによりだね」
     妊娠初期とはちがってまもなく出産を迎える悠仁のお腹はそこに新しい命が息づいていることがはっきりと分かるようになっている。
     けれど、そうして視覚で見る以上に、胎動を自ら感じると改めてそこに自分と悠仁の子どもが存在しているのだと感じられてうれしいのだと、以前五条は悠仁に言っていた。
     それゆえに五条はよく悠仁のお腹に触れたり、声をかけたりしてくれる。
     子どももお腹の中にいるうちから父親のことを認識しているのか、それに応えるように反応を返してくるので彼はそれもまたうれしいようだ。
     だから彼がそうして自分のお腹に触れて微笑んでくれると悠仁までうれしくなる。
    「ママ! ぼくもあかちゃんいいこいいこする!」
     長男がそう言って遊んでいたおもちゃを床に置き、悠仁のお腹に触れた。
     まだ幼い次男とちがって、この子は悠仁のお腹の中に新たな自分の兄弟が存在していることを理解している。
     だがそれもこの子が成長したからだ。
     小さい頃から天真爛漫で素直な性格だった長男だが、次男となる弟が生まれた時は今の次男のようにまだ小さくて、自分が兄となったことをよく分かっていなかった。
     生まれたばかりの次男を見て『かわいいね。あかちゃんかわいいね』とまるでぬいぐるみをかわいがるかのように喜んでいたのを思い出す。
     オマエの弟だよと悠仁が教えてやっても、あの頃はあまりよく分かっていないようだった。
     五条や悠仁の真似をするのが生まれる前からのブームだったからお腹にいる時も両親の真似をしてお腹を撫でて『げんきねー』、『いいこねー』なんて言っていたし、生まれてからもおもちゃの哺乳瓶を知育用の人形に上げたりもしていた。
     けれど目の前にいるのが自分と同じ『人間』であり、血を分けた『兄弟』であることは分かっていなかった。
     成長するにつれてそれが分かるようになってきて、今では弟の世話も進んでしてくれるようになっている。
     留守がちになってしまう父親である五条の分も、自分が母親である悠仁と弟を守らなければと思っている節も見られた。
     そんな彼なので今回は新たな兄弟が自分のもとにやってくることを報告されると、母親の妊娠を父親である五条とともにとても喜んでくれた。
    『ぼくね、やさしいおにいちゃんになるよ』
     そんな頼もしい決意を示してくれた通り、妊娠初期で悠仁がつわりに苦しんでいた時には今まで以上に一生懸命弟の世話をしたり、簡単な家事を手伝ったりしてくれて悠仁はとても助かったのだ。
     買い出しには五条がいる時に行くようにしているが、悠仁が軽いものだけでも持とうとすると『ぼくがもつよ!』と小さな身体で運んでくれることもある。
     悠仁には軽いものでも子どもである彼にとっては重いものもある。
     それゆえ過保護と言われても悠仁や五条は心配になってしまうのだが、母親とお腹の中にいる兄弟のためにがんばろうとする兄の姿を見守るようにしていた。
     張り切った日にはいつも以上に疲れて早く眠ってしまうけれど、その寝顔すら親には愛おしいものだ。
    「あかちゃんはやくでておいで~。にぃにがまってるよ」
     キラキラと輝く純粋な瞳でお腹を撫でる息子の顔を悠仁は目を細めて見た。
     この子を妊娠した時はまさかこんなにいい子に育ってくれるなんて思いもしなかった。
     それ以前に無事に生んでやれるかどうかも分からなかったのだ。
     家族を失っている悠仁にとって、新たな家族である五条との子どもを授かったことはとてもうれしかった。
     五条と手を取って喜んだし、本当に妊娠しているのか診断を下した家入に何度も確かめて彼女を呆れさせたぐらいだ。
     だが、その喜びもつかの間で、今度は少し怖くなった。
     自分はふつうの人間ではない。
     身の内には両面宿儺という呪いが宿っている身なのだ。
     その宿儺の器である自分の影響を受けないだろうかとか、両親のいる家庭を知らない自分が本当に子どもを育てていけるのだろうかと心配にもなった。
     しかし、それらはすぐに払拭された。
     だって悠仁の傍には五条がいてくれて悠仁の妊娠を手放しで喜んでくれたし、この数年の間に固い絆を結んできた仲間たちが悠仁の中に宿った命を歓迎してくれたおかげで、この子が歓迎されているという喜びを感じることが出来て、安心してこの世に生み出すことが出来た。
     たくさんの人の愛情を受けたこの子は誰にでも誇れるような自分たちにはもったいないような子に成長してくれている。
    「ねぇ、ママ。あかちゃんよろこんでるかな?」
    「おう! 早く兄ちゃんに会いたいって言ってさ」
    「ほんと? ぼくもたのしみ。はやくあいたいな」
     ふへっと笑う笑顔は小さい頃の面影が今も残る。
     弟が生まれてからというもの、少ししっかりしたけれど、この子だってまだまだ小さな子どもなのだ。
     小さい頃に夜蛾にもらった五条と悠仁の姿を模した呪骸は、弟が生まれてから悠仁の方を弟に譲って今は五条を模した呪骸のみ傍に置いているけれど、今も寝る時だって一緒だ。
     そんな長男とのやりとりを見つめる視線を感じて悠仁はそちらを向く。
     すると次男が母親と兄とのやりとりをぼんやり見つめていた。
     長男と同じく父親である五条から譲り受けた色素の薄い髪の色と長いまつげ、だけど瞳の色は悠仁の色を受け継いだアンバー色。
     それをとても喜んだのは五条だった。
     長男は悠仁が自分に似た子どもを生んでくれたということがうれしかったようだが、次男が自分と悠仁の姿を受け継いできてくれたこともまたうれしかったらしい。
     学生時代に子どもが嫌いだと言っていた五条は一体どこに行ったのか。
     二人の子どもたちに深い愛情をかける自慢のパパだ。
    「オマエも触ってみろよ。コイツが生まれたらオマエも兄ちゃんだぞ」
     次男に向かって声をかける。
     すると次男は悠仁の言葉に反応して小首を傾げた。
    「にぃちゃ?」
    「そうだよ、ぼくといっしょになるんだよ」
     にこにこと笑って自分を指差しながら長男が言った。
     兄の言葉に次男は兄の方を見る。
    「ここにおててをぺったんしてごらん。あかちゃんが『にぃに~』っておはなししてくれるよ」
     そう言って長男は弟の手を掴んで悠仁のお腹に手を当てた。
     幼い次男はまだ理解出来ていないらしいが、それでも兄にされるがままになり、やがてそれに応えるかのようにお腹の中の子どもが元気よく動いた。
    「!?」
    「わっ、うごいたね。やっぱりにぃににごあいさつしてるんだよ。『こんにちは』っていってるんじゃないかな」
     ビックリして手を離した弟に向かって長男は笑顔のままで話しかける。
     キラキラと目を輝かせる兄の姿に気付くことなく、次男は手に感触に驚いたのか、自分の手をジッと見つめていた。
     そんな息子に向かって五条がクスッと笑って頭を撫でる。
    「もう一ヶ月もしたらママのお腹にいる赤ちゃんが生まれて、君はにぃにになるからね。ママやにぃにが言うように優しいにぃにになってあげて」
    「ぼくといっしょにやさしいにぃにになろうね」
     ねーと小首を傾けながらにっこり笑いかける兄の姿を見て、次男は理解出来ているのかいないのか分からないながらもこくりと頷いた。
     そんな弟のしぐさに長男はとても喜ぶ。
     長男と次男の会話はいつもこんな感じだ。
     次男はもともと言葉数が少ない子だから、長男がよくしゃべっている。
     弟の同意を受けてうれしかったのか、長男は顔を上げて悠仁を見た。
     まるで飴玉のように丸くて、水晶玉のように澄んで綺麗な瞳だと我が子ながら惚れ惚れする容姿だ。
    「ママ、ぼくたちやさしいにぃにになるよ! 赤ちゃんいいこいいこするね」
    「おう! 期待してるからな」
     そう言って悠仁が二人の息子の頭を撫でると、長男はきゃあと声を上げて笑みを見せて、次男も無口ながら喜んでいる素振りを見せる。
     そんな二人の姿を見ていると、悠仁も五条も微笑ましくて口元が緩んだ。
     五条が自然に悠仁の肩を抱き、悠仁もそんな彼に甘えるようにして身を預けたその時、お腹の中から思いっきり蹴りが入る。
    「いてっ!」
     痛みに顔を顔を顰める悠仁を見て、五条は一瞬驚いた顔をして、そしてフッと笑った。
     自分の腕の中で呻く悠仁に向かって彼は声をかけてきた。
    「大丈夫、悠仁。それにしてもすごく元気な子だね。この子たちもこんな感じだったっけ?」
    「いや~? どっちも元気に蹴りを入れてくれてたけど、これほどじゃなかったよ」
     長男の時も次男の時も、どちらもとても元気な子だったから悠仁は痛みよりも微笑ましさが勝っていた。
     今も胎動はうれしいけれど、上の二人で経験しているというのにそれ以上に蹴られる痛みを感じてしまう時がある。
     かと思うとお腹の中で爆睡をかましているのか、まったく胎動が起こらない時があって冷や冷やすることもあるのだ。
     悠仁が急に動かなくなったことを心配して五条に相談すると彼はいつも「さすが悠仁の子だね」と言う。
    「こんだけ元気ならこりゃあまた男かなー」
     お腹をさするように撫でながら悠仁は笑った。
     長男は優しくておっとりしているし、次男は言葉数の少ない大人しい子だから、三人目の子はきっと兄たちを圧倒させるようなやんちゃな子になるんじゃないだろうか。
     過去の自分を彷彿とさせるような子が生まれてくる気がして、悠仁は苦笑した。
     この様子では多分男の子の可能性が高いとは思っているけれど、実際のところは男と女、どちらが生まれてきても健やかな子だったらそれでいい。
     そう思っている悠仁と五条は上の二人と同様に、今回の子どもも性別を聞いていなかった。
     一人目も二人目もそうだった。
     子どもを授かることが出来たのが奇跡であり、二人にとって幸せなことだったので、そこまで注文をつけるつもりはない。
     自分たちのもとへ来てくれたことを歓迎しようと、子どもを授かるたびに二人で話している。
     だけど、これだけ元気な子なので、上の二人以上に手のかかるやんちゃな男の子が生まれてきそうだ。
     頼もしいお兄ちゃんが二人もいてくれるので、その点は助かると思うけども。
    「兄ちゃんたち頼むぞ。やんちゃな弟だと思うけど、世話してやってくれよな」
    「うん! ぼく、おせわするよ、ママ!」
     長男がキラキラと目を輝かせて悠仁の言葉に頷く。
     次男は兄に「ねー」と声をかけられてこくんと首だけで頷いていた。
    「僕も三人のパパがんばるからね、悠仁!」
    「そう思うなら伊地知さんを困らせずに任務に行ってよね。気の毒だろ?」
    「えー、だって愛する家族と一秒でも一緒にいたいんだもん。後進も育ってるんだし、もうちょっとゆっくりさせてもらいたいんだけど」
     三人の父親になろうとしているのに、五条は残念ながら任務に関しては相変わらずだった。
     伊地知に迷惑をかけまくっているし、玄関で長々と行きたくないと渋るのも日常茶飯事だ。
     この前、さすがに申し訳ないと思って伊地知に詫びた悠仁だけど、彼はにっこり笑って『大丈夫ですよ。渋られるのを分かっているので早めにお迎えに上がっています』と言っていて、彼もこの数年で学習したようだなと感心してしまった。
     高専の頃から五条のことを知る彼は五条の態度に困りながらも、喜んでいる節がある。
     今までただ単に多忙過ぎるスケジュールを嫌がって任務を渋っていた五条が、家族と離れたくないという情を持って家から出るのを渋るのが過去の彼を知る伊地知からするとうれしいらしい。
    「伏黒や乙骨先輩だってがんばってるじゃん。前よりは負担も減ってるんだし、俺のヒートの時とかすげぇ世話になってるんだから文句言わないの」
     発情期ゆえに妊娠している時には起こらないが、定期的に起こるヒートの影響で五条はその間、任務を休むし、子どもたちも呪術高専に預かってもらっている。
     仲間たちは誰一人としてイヤな顔をせずに助けてくれるけれど、それが当たり前と思ってはいけないことを悠仁だってちゃんと分かっていた。
     当然ながら五条も分かっているのだろうけれど──やっぱり悠仁や子どもと離れることは寂しいらしい。
    「僕、もう一生働かなくても悠仁どころか子どもたちも養えるようなお金あるのになんでまだ働かなきゃいけないのか分かんない」
    「まぁまぁ、そう言わんで。任務がんばってきたらまたコイツらと出迎えるから。だからがんばってよね、パパ」
     ぶつぶつと文句を言う五条の肩に持たれて悠仁はクスクスと笑った。
     五条との子どもはお腹の子どもを合わせて三人。
     だけど自分にはパートナーであるはずの五条という大きな子どもがもう一人存在する気がすると思いながら、悠仁はその腕に甘えた。

     * * *

    「……ってことがあったんだよ」
    「へぇ。まぁ、その調子じゃ男に間違ってもおかしくないわね」
    「断言は出来んけど、三人の中で間違いなく一番元気だからな」
     二人で楽しそうに遊ぶ子どもたちに視線を送りながら、悠仁は対面に座る伏黒と釘崎に苦笑しながらコーラを含んだ。
     伏黒の前にはコーヒー、釘崎の前には紅茶が置かれており、二人も悠仁につられるようにしてそれに口をつける。
     久しぶりにオフが重なったのだといって訪ねてくれた二人に、つい先日の話を話題としてあげたのだ。
     あれから一ヶ月近くが経って、悠仁は妊娠十ヶ月を迎えていた。
     家入にはいつ生まれても問題ないと言われているが、一向に生まれる気配がない。
    「上の二人が出来過ぎだったんじゃない? アイツの子どもとはいえ、半分はアンタの子どもなんだもの。一人ぐらいゴリラが生まれなきゃおかしいでしょ。あぁ、アイツもああ見えてゴリラよね」
    「人の子どもをゴリラ扱い……」
     釘崎の言葉に悠仁は苦笑いを浮かべた。
     しかし彼女は悪びれる様子もなく、「あら、ホントのことじゃない」と返してくる。
    「ともかく、元気に育ってるならそれでいいんじゃないか? あの人もそれだけが望みだろ」
    「まー、そうなんだけどな。三人兄弟ってすげぇ騒々しくなりそう」
    「そりゃあアンタの子なら三姉妹でも騒がしくなるわよ。でも一番上は出来がいいし、次は大人しいしバランス取れていいんじゃないの」
     釘崎の言うことは一理ある。
     長男は人並みのはしゃぎ方をするけれど、度を越したようなことはせず、弟である次男にとっても頼れるお兄ちゃんだ。
     次男は言葉は話せるけれど、五条や悠仁の子どもに似せん自分から言葉を発することが少ない。
     ただ、よく食べるし、よく暴れるのはやはり血筋か。
     二人で遊んでいるとやはり小さな怪獣だなと思うことがたびたびあった。
    「のばらちゃん、ふしぐろ!」
     弟の手を繋いだ長男がトコトコと三人のところへやってきた。
     相変わらず人懐っこい長男は五条と悠仁の仲間たちのことが大好きだ。
     ちゃんと言葉が話せるようになって長男は伏黒のことを『ふしぐろ』ではいけないと判断したのか『めぐみくん』と呼ぼうとしていたが、伏黒本人が『今まで通りでいい』と言ったため、相変わらず小さい頃と同じ呼び方をしていた。
     ニコニコとうれしそうな顔をして笑う長男と、ぼんやりと見上げてくる次男の頭を釘崎はわしゃわしゃと犬を撫でるかのように撫でた。
    「相変わらず元気そうね。野薔薇お姉様がケーキ買ってきてあげたから、後でママと食べなさい」
    「おい、俺も金出したぞ」
    「けーき……!」
     突っ込みを入れる伏黒の声と被って言葉を発したのは次男の方だった。
     大食漢なのは悠仁に似ているのだろうが、特に甘いものを好むのは父親の血を強く引いているからなのだろうか。
     洋菓子も和菓子も人一倍食べるし、それを見た長男が『ぼくのぶんもちょっとあげる』と言うとさらにその分も食べる。
     長男のように『おいしいね、ママ! これ、すっごくおいしいね』なんていう言葉での表現はないけれど、食べている時には雰囲気はふわふわしていて夢中になっているからかわいい。
    「ちゃんとご飯も食べんのよ? いいわね?」
    「うん、ちゃんとたべるよ。だってママのごはん、おいしいもん。ねー?」
     釘崎の言葉に頷いて、長男は弟に声をかける。
     すると次男は兄の言葉にこくんと頷いた。
     心配しなくてもこの二人が食事を残すことなんてよっぽどのことがなければなくて、悠仁も食事の作り甲斐があるというものだ。
    「それじゃあ私ら帰るわ。生まれたら報告しなさいよね」
    「連絡待ってる」
    「おう、伏黒も釘崎も来てくれてサンキュな。また遊びに来てよ。その時は一人増えてさらに騒がしくなってるかもしれんけど」
    「のばらちゃん、ふしぐろ、またね」
     玄関へと向かう伏黒と釘崎の後ろを悠仁と子どもたちも追いかけて、彼らを送り出す。
     伏黒も釘崎も学生の頃とちがって、呪術師として多忙な毎日を送っている。
     そんな二人のオフが合うのはなかなかないので次に逢えるのはいつになるだろうか。
     笑顔で見送りながら、悠仁はまた二人に逢える日が近ければいいなと思った。
     ガチャンとドアが閉まり、子どもたちに向き直る。
    「さて、伏黒たちが持ってきてきれたケーキでも食うか」
    「たべる!」
    「その代わり、夕飯もちゃんと食うんだぞ? そうじゃなきゃ、釘崎に言い付けるからな」
    「ちゃんとたべるよ! さっきもいったでしょ。ママのごはん、おいしいもん」
     子どもたちはとっても素直だ。
     そんな素直な子どもたちにそう言われるととてもうれしくて、悠仁はにっこりと二人に微笑みかけた。
     悠仁と結婚するまでは食事をろくに摂らずに甘いもので済ませていた五条も、悠仁が料理を作るようになってからちゃんと食事を摂るようになった。
     祖父と二人暮らしで幼い頃から料理を作っていたので人並みには作ることが出来るが、五条も子どもたちも悠仁の料理を美味しいと言ってくれるからとても張り合いがあるというものだ。
     三人でキッチンに向かうと、冷蔵庫に入れてあるケーキの箱を悠仁が取り出した。
     箱を開けるとそこにはまさしく釘崎チョイスというべきおしゃれなケーキがいくつも入っていた。
     ケーキやタルトの上に乗ったフルーツたちがまるで宝石のようで悠仁は年甲斐もなく目を輝かせる。
    「すげぇ美味そう! さすが釘崎だな。ほら、オマエらも見てみろよ。すげぇ美味そうで……ッ!!」
     子どもたちにケーキを見せてやろうとした瞬間、悠仁は腹部に痛みを感じてしゃがみ込む。
     例えようのない鈍い痛み。
     それは悠仁がこれまで二度経験したことのある痛みだった。
    「まさか、このタイミングで……」
     もう少し早ければ伏黒と釘崎がいてくれたというのに──。
     彼らに連絡を、いやそれよりも先に五条に……そんなことを考えていると心配そうに見つめる視線を感じる。
     ハッとして顔を上げると、急にうずくまってしまった悠仁を心配そうに見つめる長男と不思議そうな顔をする次男がそこにいた。




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