猫は悟る つい最近、私に夫が出来た。
相手は隣国の公爵家の当主で名をカミルという。
噂では血塗れ公爵だの鬼将軍だの酷い言われようだが、カミル本人は非常に誠実な美男子だ。敵に対して容赦がない事からそう言われているのだろうが、私には優しい良い夫だ。ただ一つ残念な事があるとするならそれは彼が常軌を逸した猫好きということだろうか…。
家の中をゆっくりと歩いていれば目につくのはひたすら猫の調度品だ。
壁に架けられた絵。庭の薔薇を生けた花瓶。飾られた彫刻に壁紙とこの屋敷には至る所に猫が居る。
この世界に猫という生き物は存在しているが、それは幻獣のようなものでまず人がお目に掛かることはない。しかし、そんな猫の血を引いている我々猫の獣人には遠に失われた猫の特徴を色濃く遺していた。
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