儚さと優しさを噛みしめる 真っ白な器に注がれた黄金色に透き通ったスープ。しっかりと茹でられてスープの底の方を泳ぐ細めの麺。切り落としのベーコンのようなチャーシューに、白身部分がほんのり茶色に色づいた半熟の味玉。少し長めにカットされたメンマに、ツンとした鮮やかな香気を放つ白髪ねぎ。
メニューにある中で一番安い故かもしれないけど、これが比較的オーソドックスかつシンプルな塩ラーヌードルの構成らしい。
僕は器を上から覗きこんで、わざと芳醇な香りの直撃をくらいに行った。ほかほかと立ちのぼる白い湯気を吸い込めば、鶏出汁の豊かな匂いで鼻腔の奥まで満たされる。
一度食欲をそそる香りを嗅いでしまったらもう、目の前のラーヌードルのことしか考えられなくなってしまう。長時間の商談の疲れと空腹で回らなくなっている脳が、いいから早く食べろとせっついてくる。何時間も空っぽの胃が刺激されてぐうと唸った。
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