ともかがみ(仮)②◇◇
山をふたつ越えた先にある村は、思っていたよりもずっと大きく豊かな村だった。
水干姿の犬耳の青年に、若く美しい巫女と、可愛らしくはあるが普通の村娘。謎の組み合わせは好奇の視線を集めるには十分で。石置屋根の民家や広い田んぼや畑……そこかしこで作業していた村人たちが、戸惑いと疑念が混ざった視線を向けてくる。
犬夜叉もかごめも慣れたもので、涼しい顔で足を進める。ふたりに倣い、りんも平常心で歩き続けた。やがて石置屋根が途切れた向こうに一際大きな建屋が現れて、りんは馬を引く手を止めた。藁の屋根と土壁で作られた家屋は、村人たちの住まいよりもずっと大きく、家人の裕福さを示していた。
草鞋の裏で踏みしめた土がざらりと音を立てる。凍てついた風がぬばたまの髪を通り抜け、細い首筋を撫でていった。
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