名前を呼んで? アーサとナユタの住む家の一階の階段側。そこが紆余曲折ありながらも、再び戻ってきた残され島で変わらず便利屋を営むシグナと、ナユタの作業スペースなのは変わらない。
今、アーサとクレハ、ノイは出かけていて留守なため、家にはナユタとシグナの二人しか居なかった。
「そう言えば」
と、ポストに届いた便利屋宛の手紙を仕分けながらシグナが呟いた。
「どうしたの? シグナ。難しい依頼でもあった?」
「いや、そんなんじゃねぇけど」
話がてら、ナユタ向けの依頼を渡しつつ、シグナが続けた。
「お前、最後までずっと俺のことを"セラム"って呼ぶことは無かったな、とおもってさ」
ふと、思い出したように呟かれたそれは、ナユタにとってもシグナにとっても決して忘れることの出来ない夏の思い出。
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