遅効性の初恋 もう何年も会っていない同級生が、夢に出てきた。
一人暮らしを始めてからもう何年も経つというのに、未だに手放せないアイマスクをずらす。御幸の意識は夢と現実の狭間で揺蕩っていた。
起き上がった時の些細な脳の振動で忘れてしまいそうだと思ったらそれが何となく勿体なくて、そのままベッドの上で動かずに夢の内容を思い出して脳に刻み込むことにした。
夢の中の彼の左手には銀色が光っていて、結婚したのかとぼんやりと思ったことを覚えている。これは所謂虫の知らせと言うやつだろうか。夢占いとか予知夢とかジンクスとか、生憎そんなものは信じない性格だ。しかし、普段夢なんて見ないのにも関わらずしっかりと刷り込ませた成果が本人の望み以上に叶ってしまったお陰か、写真のように鮮明にその場面が脳裏に刻まれているからなんだか気になって仕方がない。
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