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    ちょこ

    主に企画参加の交流小説、絵など投稿してます
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    ちょこ

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    よそのこさんお借りしてます

     倒された落武者を見て終わった事を察した、里は刀を仕舞うと、燕志の元へ行く。まだ後ろ姿でしか見れてないが、息が上がっているのか肩が上下ゆっくりと動いているのが分かった。里は小走りで走ると、燕志に声をかけた。
    「えーじ……」
     里の声に気づいたのか、燕志が後ろをむく。怪我をしない日はないのではと言うほど、燕志はよく怪我をする。今もこうして、腕を斬られたのか一部服が血で滲んでおり、そこだけではなく他の所も怪我をしているのが見て分かった。これは看護班の所に連れていった方がいいな、とそう思った矢先に、燕志から唐突に抱き上げられた。
    「え、えーじ下ろして……」
    「……」
    「……えーじ……」
     これが初めてではなかった、落武者との戦闘が終わっても昂っているのか分からないのだが、こうして里の事を抱き上げるのだ。里としては、自分を抱き上げるより治療しに行って欲しいのだが、強く拒絶してはいけない気がして、あまり抵抗出来ないのだ。先程のように、一応下ろしてと言ったが、降ろされたことは無い。そうしているうちに、燕志は里を抱き上げたまま歩き出した。このまま看護班の所へ行くのだろう。
     ふと、向こうの方で燕志の兄である鷹晴の姿が見えた。鍛治班なのだが、今回現場の復旧に時間がかかるため来たのだろう。里と目が合った鷹晴は少し眉を下げて少し笑っていた。里は苦笑いをして返し、少しだけ抱きつき返した。
     看護班がいる所へやってくる、他の侍が治療されている中、一つの建物へと入っていく。中にはもちろん看護班の人達が居たが、二人の様子に慣れているのか何も言われず……いや、皆どこか生暖かい目で二人を見つめるため、毎度の事なのだが里はいたたまれず顔を隠した。そして、目の前の人物まで燕志は歩く。その人物は先程の鷹晴の妻の前だ。鷹晴の妻は、冷静に話す。
    「燕志くん、抱えたままではみれないわ」
    「でも義姉さん……もう少しだけ……」
    「駄目よ。治療が先」
     相手の一言にどこか落ち込んだ燕志は、ゆっくりと里を降ろす。里は人の邪魔にならないように離れようとしたが、燕志が即座に腕を掴んだ。
    「えーじ……俺邪魔になっちゃうから……」
    「……いてほしい、です」
    「……えっと……」
     チラリ、と里は鷹晴の妻に助けを求めるかのように目線を送る。すると、看護班の一人が椅子を持ってきてくれた、申し訳なさに謝りつつお礼を言うと、むしろ『大丈夫』と何故か笑顔でその返答をされた。なんだろうか……そういえば、比較的笑顔で返答をされるような気がすると里はぼんやりと思いつつ、燕志の様子を見た。燕志は里の手を握りながら治療されている。それほど時間がかからず治療は終わる。
    「はい、治療終わりよ」
    「ありがとうございます」
    「里くんも、いつもありがとうね」
    「い、いえ」
     自分は何もしてない、と思いつつお礼を言って外を出る。外を出ても、燕志は里の手を握ったままだった。
    「えーじ、一緒にご飯食べる?」
    「……食べます」
    「ならお家お邪魔していい?」
    「……はい、だいふくも喜びます」
    「俺もだいふくちゃんに会いたかったから、なら材料買いに行くね」
    「俺も行きますよ」
    「ダメだよ、治療したばっかりなのに……」
     そう言った時、また燕志が落ち込んだ気がした。眉を下げ、里をじっと見る。そして、ないはずなのに犬の耳が垂れたようにも見える。そして、その表情の燕志に非常に弱い里は少し唸った後、口を開く。
    「うぅ……。……一緒に……行こっか……」
    「……! はい!」
     ぱぁ、と喜んだように見える燕志に、里はやはり燕志に弱いのだろうかと思いつつ歩く。

     後日、手のひらを擦りむいた里に対し、焦った燕志がすぐさま里を抱き上げると、勢いよく看護班の所へ来ることになるのだが、まだその時の里は知らない。
    「義姉さん! さっちゃんが! さっちゃんが怪我しました!」
    「えーじ! ちょっと手のひら擦りむいただけだよ! あぁすみません……! 違うんです……! もう……えーじ……!」
    「過保護すぎる」
     焦ったように話す燕志、そして顔を真っ赤にして謝る事しか出来ない里、そして里の師匠である芽白は二人の様子を見てそう言ったそうだ。
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    ちょこ

    DONEよそのこさんお借りしてます
     倒された落武者を見て終わった事を察した、里は刀を仕舞うと、燕志の元へ行く。まだ後ろ姿でしか見れてないが、息が上がっているのか肩が上下ゆっくりと動いているのが分かった。里は小走りで走ると、燕志に声をかけた。
    「えーじ……」
     里の声に気づいたのか、燕志が後ろをむく。怪我をしない日はないのではと言うほど、燕志はよく怪我をする。今もこうして、腕を斬られたのか一部服が血で滲んでおり、そこだけではなく他の所も怪我をしているのが見て分かった。これは看護班の所に連れていった方がいいな、とそう思った矢先に、燕志から唐突に抱き上げられた。
    「え、えーじ下ろして……」
    「……」
    「……えーじ……」
     これが初めてではなかった、落武者との戦闘が終わっても昂っているのか分からないのだが、こうして里の事を抱き上げるのだ。里としては、自分を抱き上げるより治療しに行って欲しいのだが、強く拒絶してはいけない気がして、あまり抵抗出来ないのだ。先程のように、一応下ろしてと言ったが、降ろされたことは無い。そうしているうちに、燕志は里を抱き上げたまま歩き出した。このまま看護班の所へ行くのだろう。
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