Recent Search
    You can send more Emoji when you create an account.
    Sign Up, Sign In

    ちょこ

    主に企画参加の交流小説、絵など投稿してます
    よその子さん多め

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 398

    ちょこ

    ☆quiet follow

    アイドラ小説
    文化祭の話(if) 佐々木先生と時雨が1日限りの復活祭

    あぁ、なんて事だ。一日だけアイドルとして復活しろだと?ふざけるな、もうアイドルとしての俺は死んでいるというのに、いまさらステージに立てというのか?あの日あの時重圧に耐えきれなくてステージから、アイドルから逃げたこの俺に立てというのか。しかも佐々木巡と組めと言うのか、トップアイドル同士組んだら盛り上がるから、と簡単に言ってくれたが俺の気持ちはそれどころじゃなかった、自分よりトップアイドルとして輝いていた佐々木巡、自分がいざトップアイドルになった時初めて彼の凄さを知ったのだ、その重すぎる重圧に。アイドルをしていた頃は彼からそんなの微塵も感じなかった、キツイ、やしんどいなんて言葉すらだ。どんな気持ちで、彼はアイドルをしていたのだろうか、未だに分からない。
    「………もう”アイドルの水無瀬時雨”は死んでるんです、俺はもう……」
    そう言ったものの、もう決まった事だからとそのまま1日限りのトップアイドル同士の復活祭は決まってしまった、憂鬱だ、本番のステージの事を考えて既に吐き気が込み上げてくる。観客の声、ペンライトの光、照明、熱気、全てが自分にとってはトラウマのように気持ち悪く、考えるだけで震えてしまう。だが決まった事は仕方ない、そのまま先に待っている彼の元へ行く。レッスン室へ向かうと既に彼は紙を見つつ確認していた、顔を顰めそうになりつつも声をかける。
    「……早かったですね」
    「水無瀬!いや〜お前と組めるとは思わなかったなぁ!」
    「……そうですね」
    呑気そうに考えている彼に嫌悪感を抱きそうになる自分にため息を吐く、自分にそんな感情を持つ資格などないというのに、彼から紙を渡され読む、なるほど、それぞれのデビュー曲と書き下ろしの2人だけのユニット曲を歌うらしい。書き下ろし曲を書くのも元アイドルだった教師らしい、よかった、自分が書かなくて。
    「本番まであまり期間はないし、練習しようか」
    「……はい」
    着替えて早速練習をする、ブランクはあるものの昔の感覚を思い出していく2人、練習でも笑顔を見せる彼と反対に、無表情で踊る自分。ステージで見せる笑顔の仕方なんて忘れてしまったが、それでも彼はそれに関しては何も言わなかった。
    「水無瀬やっぱすごいな、数回しか見てないのに踊れてるし」
    「……貴方こそ、あの頃みたいに出来てるじゃないですか」
    自分は笑顔すら出せないと言うのに、その言葉を飲み込んで練習を続けた。

    本番当日、そっとステージの脇からみると既に観客で溢れていた。当たり前だろう、あの元トップアイドルの佐々木巡と水無瀬時雨が1日限りの復活を果たすのだ。テレビで見ない日はなかった2人のライブに来る人も多い、それだけに既に吐き気が込み上げてくる。そしてセッティングされたステージもみる、あそこで歌うのかと。あの頃の見えない重圧を思い出しそうになり顔を曇らせる、その時バンッと強く背中を叩かれた。
    「おっ……と」
    「辛気臭い顔しないぞ水無瀬。……俺は先に辞めたから、その後のお前に何があったか知らないけど。今お前はアイドルなんだから、笑顔出せなくてもいい、無理して笑うな、けど、練習で聴いたお前の歌声は変わらなかった。だから大丈夫、お前は立てる」
    「………」
    「ほらそろそろ本番だ、行こう水無瀬!」
    彼から手を引っ張られステージに勢いよく行ってしまった、自分らを歓声と共に耳に痛いほど入る。心臓がうるさい、久しぶりのステージだ、けれど、何故かさっきまで嫌というほど出ていた吐き気が抑えられていた気がした。ペンライトや照明が眩しくて目を細めそうになる。曲が流れる、この曲は彼のデビュー曲だ、自分はハモリとして入る。アイドルだった頃の時雨と今の時雨の姿を見て観客の数人が話す。
    「ねぇ水無瀬時雨髪切ってるよね?」
    「というか雰囲気かわってる?なんか暗い?」
    その声は聞こえなかった、彼が歌う、練習通りタイミングをみてハモリを入れていく。綺麗な、あのころの変わらない声、その声を聞いて巡は笑う。練習よりもいい声だ、と。そしてさっきまで話していた観客は時雨のハモリに固まる。
    時雨は巡が笑ってることも、観客が固まってることも気づかなかった、無我夢中だった。あれほど立つのが怖いと思っていたステージだ。怖い、けど、なんだろうか、この胸に溢れてくる気持ちは。忘れかけていた気持ちのような気もする。懐かしくて、少し熱い。そして時雨のデビュー曲を歌ってる時も同じ気持ちだった、声が震えることなく、歌えていた。
    「次は書き下ろしの曲!行くぞ水無瀬!みんなも盛り上がってな!」
    巡がそういうと観客は盛り上がる、まるであの頃みたいに、トップアイドルだった佐々木巡のステージだ、と時雨は泣きそうになった。やっぱりこの人が正真正銘のトップアイドルだったんだ、と。トップアイドルだった佐々木巡は、今ここで復活していると。先ほど分からなかったこの気持ちがわかった、今自分は、ライブを楽しんでいる。目の前の彼と競い合って、歌って、踊っていた頃のあの気持ちに、そしてこの胸の熱い気持ちを歌に込めて時雨は歌う。
    時雨が歌う顔をチラリと見る巡、本人は気づいてないだろうなと笑う。時雨の顔は、練習の時1度も出来なかった笑顔だったのだ。死んだ光の無い目は色んな光を映して、固まった表情は柔らかく優しい笑顔だった。綺麗な歌声も変わらない、いやあの頃よりも綺麗に聴こえる。まさしくトップアイドル──水無瀬時雨の復活だ。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    ちょこ

    DONEダミアさんお誕生日小説
    ダミアさんお借りしました!お誕生日おめでとうございます!
    モンブラン「ダミア、お誕生日おめでとうございます」
    「おー! ありがとな!」
     レイフが借りている拠点と言っていい住まいにダミアを呼び、目の前にケーキを出す。ダミアと前もって連絡を取っていたため、こうして呼べたのだ。ケーキはレイフの手作りだ。本当なら、料理も出そうかと言ったのだが、間髪入れずに断られてしまった。今度こそ上手く作れるような気がしたのにな、とレイフは残念そうに思いながらも、ダミアを見た。
    「このケーキ……モンブランか?」
    「そうです、アマロンを使ってます」
    「へー! 王様って呼ばれてるやつじゃん!」
     ダミアは感心したようにケーキを眺めた。アマロン、様々な栗の中で特段に甘い栗の事だ。身も大きいのだが、育てるのが難しく、しかも、大きく育てようと魔力を使うと、すぐに枯れるという性質を持っていた。なので、完全な手作業、時間をかけてゆっくりと育てる。そのため、栗の中の王様、という意味で【アマロン】と呼ばれるのだ。一粒だけでも驚くほどの高額で取引される。その高額さに、一時期偽物のアマロンが出回るほどだった。偽物のアマロンと区別を測るための道具すら開発されるほどに。
    1309

    recommended works