放課後、たまたまユニットが休みで美男と時間の合った世良は、美男が用があるということでついて行く形で一緒に表通りを歩く。世良も美男も学生でありアイドルであるため、すれ違う人達がチラリと二人を見てはもしかしてと話す声が聞こえるが、お互いに今日はオフと伝わっているからか話しかけられたりはされなかった。お互いのファンの気遣いに感謝しつつ歩いていくと何やら美味しそうな生地の焼ける匂いと甘い匂いが鼻に入る。
なんだろうかと世良がキョロキョロと見回すと一台の移動販売車に目が入った。それはクレープの移動販売車だった。女子高生達が列を作っては嬉しそうに手に持っているクレープをみてスマホで撮っている。遠目でしか分からなかったが、そのクレープのクリームがなにやら動物に見えたのだ。そのクレープを見て思わず世良は美男の服の袖をおもむろに掴む。探していた店をちょうど見つけた時に突然捕まれた美男は思わず後ろをむく。
「なんだ世良? どうした?」
「王さま王さま! あのクレープ食べよう!」
「なに?」
世良があまりにもまるで子供のように言って指を指すため、美男は世良が指さした目線の先を見てなるほど、と見る。だがまだ自分の用事が終わっていない。あの列ならまだ暫くここに留まっているだろうと考えた美男は世良に言った。
「俺の用事はすぐに終わる、その後に食べるならいいぞ」
「やったー! ありがと王さま!」
にっと笑い早速美男の用事を終わらせるため店に入る。探していたものが見つかり早めに店を出る。店を出た時まだ移動販売車は止まっており、列もそこそこに並んでいた。ほぼ女性……ほとんど女子高生が並んでいたが二人は気にせず並ぶ。突然男子高校生、しかも顔立ちのいい二人、特に美男に思わず周りの女子高生達が顔を見てはひそひそと話す。そんな事を気にもとめずに美男は話した。
「それにしてもそんなにクレープ好きだったか?」
「甘いのは食べるけどさ〜、さっき看板見たけどめちゃくちゃ可愛かったもん。ちょっと興味湧いたんだよね」
少しして二人が注文をする番になった、メニューに載っているクレープの種類に迷っている世良。どれも可愛いのだ、プリン味のライオンのクレープに、チョコレート味のハリネズミのクレープ、クマのクレープを見て思わずとある先輩を思い出して笑いそうになった。
「俺はこのライオンで、世良は?」
「んー……ハリネズミのやつで!」
暫くして二人のクレープが渡された、メニューに載っていた以上に可愛く、世良はやや興奮した様子で話す。
「え、まって王さま可愛くない? 写真撮って。王さまのも撮らせて」
「待て待て、少し落ち着け。落としそうになってるぞ!」
なんとか片手でスマホを取り出し写真を撮る。美男のも撮った世良はトークアプリを開いて美男のトーク画面を開くと先程撮ったのを送った。ついでに自身のSNSにも投稿をする。
「よし王さま食べよ〜、溶けちゃう」
「そうだな! ……案外美味いな。もっと甘いかと思っていたが」
「うま……これ家で作れないかな〜。作れたら妹ちゃんに作ってあげれるのに」
「ほんとお前は里奈一番だな」
「そりゃ可愛い妹ちゃんだもん! 妹ちゃんのお見舞い行こうよ、途中でお土産買ってさ」
「そうだな、お姫様に会いに行くのに手ぶらで行く訳には行かないからな!」
美男は笑いながら歩く、食べ終わった世良も美男の隣で歩く。先程上げた投稿がこの後拡散が拡散を呼び、いわゆる”バズりツイート”になるのをこの時の二人は知らなかった。