高鳴るバトル 最近、挑戦者が来ない。
「暇だなー」
ダミアはそう言ってポケモン達をボールから出す、そう高頻度に挑戦者が来るというわけでもなかったが、ダミアの言う通り、明らかに挑戦者が来ない。レイフはシャンデラを撫でながら考える。
「四天王達が頑張ってる証拠では」
「だろうけどさー、こうも暇だとな」
どこかの地方のチャンピオンはよく街を歩くとレイフは何となく聞いたことがあった。まぁ、そのチャンピオンは考古学者だから、と理由もあるが。だが、こうも何もすることがないのも時間がもったいなお。レイフはロトム型のスマホを見た時、顔色を変えてダミアに見せた。
「ダミア、これ」
「んー?」
ダミアは画面を見る、そこにはとある街でポケモンバトルの大会が行われる、と書いてあった。飛び入り参加も大丈夫らしく、優勝賞品は他地方の旅行チケット、と書いてあった。このバトル大会は有名で、一般のトレーナーはもちろん、実力者もよく参加していた。書いてある街の名前も、ここポケモンリーグから近い。レイフの言いたいことが分かったダミアは笑う。
「レイフがそれ見せたってことは行きたいんだろ?」
「ダミアも行きたいでしょう、こうも挑戦者が来ないと腕が鈍りますし」
そう言って既に行く準備をするレイフに、またダミアは笑う。涼しい顔をしていたレイフも、気持ちはダミアと同じだったということだ。
二人はこっそりと裏口からチャンピオンリーグを後にして、そらをとぶで街へと向かう。流石に変装なしではすぐに周りにバレてしまうため、軽い変装をしてエントリーした。丁度ダブルバトルの項目があったため、迷わず申請する。
「さぁ! 始まりましたダブルバトル! 第一回戦! 地元の仲良し双子と、そして相手は飛び入り参加でのバトルだー!」
暫くしてダブルバトルが始まる、レイフとダミアはお互いの顔を見て笑ってモンスターボールを取り出す。
「いけ! ウィンディ!」
「シャンデラ!」
お互いにポケモンを出す、バトルを進めるうちに、二回戦、決勝へと勝ち上がる二人。あの挑戦者、強いと周りが興奮している中、観客の誰かがあれ、と声を出す。
「なぁ、あの飛び入り参加の人、もしかしてチャンピオン?」
「まっさかー、チャンピオンが参加することってある? 確かにあの人達、強いけど」
来ているのだが、と二人は観客席から聞こえた声に思わず笑う。チャンピオンだから、と手加減しないあたりが二人らしかった。そして決勝戦、これに勝てば優勝となる。
「みんな強かったよな、リーグ挑戦してもいいくらい」
「ダミア、手を抜かなくて驚きましたよ」
「レイフもだろ?」
そう笑いつつさぁ、ポケモンを出そうとした時、二人の耳に怒号が入る。
「こぉら! チャンピオン! バトルバカ! なにリーグ抜け出してんだこら!」
やばい、と二人は顔をひきつらせる。後ろをむくとそこには青筋をたてた四天王の一人が居た。誰が見てもわかる、怒っていると。そして、突然現れた四天王と、その言葉に周りは騒ぎ始める。
「あー、今決勝なんです! これ終わったらいくらでも説教は聞きます!」
「そうそう! ポケモンバトル邪魔しちゃダメでしょ!」
そう言うと更に顔をひきつらせる四天王、けれど折れたからか観客席の隅に座った。どうやらバトルを見るらしい、こちらを見る目付きが殺人者にみえるが。
「……んで、レイフ。素直に説教聞くの?」
「終わったらそらをとぶで逃げましょう」
「わはは、こうなるよな」
対戦相手は、チャンピオンと聞いても笑って見ていた。その目つきの良さに、二人は笑う。相手は帽子をかぶり直してボールを握る。
「ダミア、相手の顔つき、いいですね」
「だな、もしかしたらリーグ挑戦するかもな?」
そう言ったダミアの顔は、楽しそうに笑っていた。強者を目の前に、気持ちが高ぶっているのだろう。レイフも同じく、心臓がうるさい。ボールから出てきたポケモン達も、やる気に満ち溢れていた。これから始まるバトルに、胸が高鳴る。
なお、大会が終わったあと、怒られるわけなのだが。