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    ちょこ

    主に企画参加の交流小説、絵など投稿してます
    よその子さん多め

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    ちょこ

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    高月

    第2イベのあとの話
    よその子さんお借りしました

    ##高月

    もういないあの子 長い、長い最悪な夜が終わった。かつてないほどの犠牲者を出した夜は明けたのだ。けれど、柘榴はこれ程にない疲労を引きずりながらも、夜帳と一緒にいつも一緒に過ごしていた相手、こよみを探していた。実を言うと、下区に急いできて暫くした時、夜帳が自分の見えない視界の方に、こよみを見つけていたのだが、大型分霊でそれどころではなかった。どことなく、見つけたと言った夜帳の顔が優れなかったように見えたのだが、柘榴は聞く暇がなかった。
     二手に別れて瓦礫だらけの街だった場所を歩く。鼻に入る色んな香り、血の香り。思わず眉を顰める。無事だといいんだが、と柘榴が想っていると後ろから声をかけられた。その声は夜帳だった、こよみを見つけたのだろうか、と後ろを向いてすぐに、息が詰まった。

     夜帳は、無表情で高月のジャケットに"誰か"を包んで抱えていた。その"誰か"は一目見ても亡くなっていることが分かる。遺体の状態は良いとはいえず、おそらく叩きつけられたからだろう。黒いジャケットで見えにくいはずなのにシミがじわり、じわりと染みていたから。
     そして、頭があるはずの所はぺたんこに膨らみもない。ジャケットの隙間から見えていた服を見た時、柘榴の嫌な予感が身体中を走る。まさか、と柘榴はやっとの思いで口を開く。
    「……夜帳、まさ、か……」
    「……。……こよちゃん、だよ。……あんま見ない方がいい」
     首から上がない、と夜帳の言葉を聞き入れることを拒否したかった。けれど、夜帳が自分に対して嘘をつくはずがない、そもそも、自分の術で視力を飛躍的に上昇させたのだ。こよみを見間違えるはずもないということだ。
     柘榴は震える手でそっとこよみの手を握る。手は冷たい、動くこともない。
    「こ、よみ……、こよみ……」
     名前を呼ぶが反応はない。自分の手や唇が震えてしまう、自分の体温もさぁ、と引いていく感覚、そして頭痛がしてきた。
    「………こよみ……」
     ただ、彼女の名前をつぶやくことしか出来なかった。

     その後は目まぐるしく忙しかった。自分の家である八神家も今回の事で無視する訳にはいかず、家の方にも目を向けなければならなくなった。弟は居るのだが、あの弟では無理だろう、と柘榴も家の者も分かっていたため、柘榴も今回ばかりは無視しなかった。
     こよみの葬儀に関しては、彼女の本家に話をしに行ったのだが、思い出すだけでも腹が立っていた。こよみは複雑な事情があるのだろうな、と何となく思っていたのだが、まるで自分たちには関係ない、と言わんばかりの反応だった。もし断られたら無理やりにでも……と考えていたのだが、そうはならなくて良かったのか、相手にとって、こよみという存在を無視したかったのか、もう分からない。
     ならば、とこちらでこよみを引き取り、夜帳と、こよみとずっと一緒に過ごした彼女の家庭教師と共に葬儀を行った。なお、葬儀をする前、こよみの遺骨はどうしようか、となった。自分が引き取ろう、と思っていた時夜帳が口を開く。
    「こよちゃんはオレの妹だからオレが引き取るよ」
    「夜帳?」
    「お前だと、下区民を引き取ったとか、いわれるんじゃねーかって思ったんだよ」

     夜帳の言いたいことは分かった、現にこよみの葬儀を取り決めた時、一部の人間からヒソヒソと何か言っているのは聞こえていた。やはり快く思わない輩も居るのだろう。
     夜帳に心配されてしまったな、と柘榴は思いつつ口を開く。
    「……俺は生まれた時から似たような感情を向けられたことがあるから、大丈夫だよ。……俺も、こよみのお兄ちゃんだからね」
     そう言いつつ、柘榴は夜帳を見る。夜帳の穢れ具合をみて彼を一人にさせれなかった、この話し合いと同時に、夜帳に自分と暮らさないかと提案をした。今まで断られていたのだが、今回ばかりは夜帳も了承してくれた。
     葬儀が終わり、こよみのために綺麗な景色が見える墓地にお墓を建てた。そこは、季節によって花が咲くということを聞いていたため、知り合いに頼んだのだ。
     色んなことが終わり、柘榴は部屋の中で息を吐いた。息を吐いた後、飾られていた写真を見る。その写真は、自分と夜帳、こよみが写っていた。ついこの前撮ったばかりの写真で、三人とも笑顔だ。こよみの眩しいあどけない笑顔を見る。
     まだこれからだったのに、色んなところに出かけて、夜帳と一緒にこれから楽しい事が待っていたはずなのに。たった一夜の出来事で全てが消えた。

    ───もっと早く自分が来ていたら? 元から三人でいたら? 助けられなかった自分のせいで、こよみが死んだ……。

    「……」
     ボロ、と勝手に涙が溢れ出て止まらなくなった。ずっと忙しかったからなのか、我慢していたからなのか。いつの間にか隣に夜帳がいた、夜帳は何も言わない。部屋が薄暗いせいか、どんな表情をしているのかも分からなかったが、柘榴は夜帳の胸に顔を埋めると、声を出して子供のように泣いた。
    「う、あ、っ……あぁ……!」
     とめどなく涙が溢れてくる。鼻が痛くなり、同時に頭痛もしてきた。泣いてもあの子は戻ってこないのに。なんであの子が死んでしまったのだろう、なんで、なんで……。

     柘榴、と写真に写ってるこよみから声が聞こえたような気がした。
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    ちょこ

    DONEダミアさんお誕生日小説
    ダミアさんお借りしました!お誕生日おめでとうございます!
    モンブラン「ダミア、お誕生日おめでとうございます」
    「おー! ありがとな!」
     レイフが借りている拠点と言っていい住まいにダミアを呼び、目の前にケーキを出す。ダミアと前もって連絡を取っていたため、こうして呼べたのだ。ケーキはレイフの手作りだ。本当なら、料理も出そうかと言ったのだが、間髪入れずに断られてしまった。今度こそ上手く作れるような気がしたのにな、とレイフは残念そうに思いながらも、ダミアを見た。
    「このケーキ……モンブランか?」
    「そうです、アマロンを使ってます」
    「へー! 王様って呼ばれてるやつじゃん!」
     ダミアは感心したようにケーキを眺めた。アマロン、様々な栗の中で特段に甘い栗の事だ。身も大きいのだが、育てるのが難しく、しかも、大きく育てようと魔力を使うと、すぐに枯れるという性質を持っていた。なので、完全な手作業、時間をかけてゆっくりと育てる。そのため、栗の中の王様、という意味で【アマロン】と呼ばれるのだ。一粒だけでも驚くほどの高額で取引される。その高額さに、一時期偽物のアマロンが出回るほどだった。偽物のアマロンと区別を測るための道具すら開発されるほどに。
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