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    ちょこ

    主に企画参加の交流小説、絵など投稿してます
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    改めて、友達になれた これは昔の記憶。楝はメモ帳にさらさら、と文字を書いていた。書かれた文字は【君と友達になってもいいですか】今ちょうど、この部屋にはいない守優に向けての言葉だった。
     守優、楝がよくお世話になっている従兄弟の幼馴染で、知り合ってから遊ぶようになった。楝にとっては、初めて従兄弟以外と遊ぶ相手だった。今までは、その従兄弟としか遊んだことのなかった楝にとっては、新鮮で、初めて味わった感覚でもあった。
     なぜその言葉を書いたのか。それは、楝は従兄弟の家で読んだ本に書かれてあった文字に、楝はじっと読んでいた。それは友達の意味が書かれてあった。友達、楝にとっては初めて聞いた単語であり、どこか心惹かれてしまった。読み進めていくうちに、楝は友達が欲しい、と思うようになった。そして、守優が思い浮かんだのだ。
    「……」
     あの子と友達になってみたい。楝はそう思って、その言葉を書いたのだ。書いてすぐ、楝はすぐに駄目かもしれない、と目を伏せた。
     本来の性別は男だというのに、つい最近まで女として育てられていたせいか、男とも女とも言い難い見た目、声変わりのせいで声を発するのを咎められ、従兄弟以外には話せなく、筆談でしか会話ができず、守優自身にも打ち明けられていない。こんな嘘だらけの存在である自分と、友達になってくれるのだろうか。
    「……」
     視界が滲んで見え、慌てて目を擦る。泣いてしまうと、どう誤魔化せばいいか分からないため、目を擦ったあと、せっかく書いた文字を上からぐしゃぐしゃ、と塗りつぶしてしまった。
     こんな自分と友達になってくれないかもしれない、いや、そもそも、こんな自分とならない方がいいのかもしれない。友達がほしい、そんなわがままが許されるはずがないのだ。

     それから数年後、あの頃より髪を切り、家とも縁を切り、少しずつ前を向けていた頃、守優とも再会出来ていた楝は、何気なくだったが、楝はこう言った。
    「……僕、守優と友達になりたかったんだ。……わがままだよね」
     あの頃を思い出し、楝は黙りこみ目を伏せ、顔を下に向けてしまった。忘れようと思っていた、けれど、今でも友達になりたかったのだ。
    「ボクは、楝くんと友達のつもりやったけど……もしかして違った?」
    「……え……」
     楝は思わず顔を上げ、守優の顔をまじまじと見てしまった。守優は顔を逸らさず、楝をじっと見ており、その言葉が嘘偽りない事など、明白だった。
    「いや、違うというか……。でも、僕、友達……。……今まで……友達なんて……。……守優は、ずっと友達だって思ってくれたんだね……」
    「うん、楝くんと初めて会ったとき、絵しりとりしてくれたの、優しいなぁ、思うたし」
    「あれは、喋るの怖かっただけで……。………」
     僕は優しくないよ、と楝は呟いた。自分を優しいなど一度も思ったことはない。今までの境遇で、自分にはなんの価値も無いと、ここ最近まで思うほどだった。
    「でも遊んでくれたやろ?」
    「……」
    「楝くんの抱えてるのは全部分からんけど……。けど、ボクはもう楝くんと友達だよ」
     楝は守優の腕を思わず握った。今から言う言葉が楝にとっては中々言い出せず、言い淀んでしまう。伝えるという行為が、こんなにも緊張してしまうのか、と握っている手が僅かに震えてしまっていた。
    「……守優、その……」
    「ええよ、ゆっくり話してみて」
    「……」
     あの頃、言えなかった、自分から消した言葉をやっと伝える時が来た。
    「……僕と、改めて……友達になってください」
     言えた。やっと言えた、筆談ではなく、自分自身の声で言えた。目の前が滲んで見える、泣かないように我慢しつつ、守優の顔を見る。守優は、嬉しそうに笑っていた。
    「うん、喜んで」
    「……これからもよろしく、守優」
     楝は嬉しそうに微笑んだ。
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