夕方の茜色の空から、夜へと変わる空模様。恋人である北統と歩いていた芽郁は、北統に話す。
「あのね、私の家に来て欲しいなって……」
本来だったら、日帰りで北統は帰るはずだった。芽郁が一緒にいたい、と言った時、北統はそれを聞いて帰るのは明日にする、と言ってくれたのだ。優しい人だ、と思ったのと同時に、宿などとっていない北統にとって、これから宿を探すのは大変な作業だった。芽郁の申し出に、北統が聞いてきた。
「いいのか? 突然俺が来ても」
「えっと、実はさっき連絡してみたら、北統くんに会ってみたいって。泊まるのも大丈夫って」
北統が泊まるために必要なものを買っている間に、芽郁は家に連絡をとっていたのだ。電話に出たのが母親で少し芽郁は安心しつつ、事の経緯を話す。母親は、芽郁に彼氏がいたことを知っていたが、まさか今日来るとは思っておらず、電話口では驚いていたが、快く了承してくれた。
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