キスの日フロマティ 幼い頃、母におはようのキスを貰ったことはある。
額に軽く口付けるだけの簡単なもので、そこに情熱性は一切なく、我が子を想う純粋な気持ちだけが込められた温かいものであったことを覚えている。だからこそ、フロリアンから送られる「おはようのキス」がおかしいことには気づいていた。
「おはよう、マティアス!」
朝、フロリアンは私を見つけると嬉しそうに駆け寄ってくる。人懐っこい笑みを浮かべたまま私を抱き寄せ、鋭く尖った歯の覗く唇をむちゅ、と押し付けてキスをしてくる。当然のように唇同士を触れ合わせ、彼はうっとりと目を伏せて食むように唇を動かすのだ。
「……おはよう」
「んん、ちゅ……ぷはっ。ふふ、今日も頑張ろうね」
「ああ……」
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