灰色がかった青い髪。癖がついておりふわりと青空の下で揺れるそれに、思わずミチルは目を見開いた。ある人の名前を呼びそうになり――口を閉ざす。
その髪を持った幼い少女がミチルを見つける。元気よく手を振る少女に、ミチルは小さく手を振り返した。
「ミチル先生、おはよう!」
「おはようございます。……その髪、どうしたんですか?」
「暑いから切っちゃった! どう、似合ってる?」
少女が見せつけるようにくるりと回る。先日まで腰ぐらいまであったその髪は今やベリーショートと呼べるほど短くなっていて。彼女の面影に父親を見いだして、ミチルは苦しそうに笑った。
「ねぇミチル先生、今日は時間ある? 先生の診療所にお邪魔してもいい?」
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