君が濡れた夜 アパートの一室で本を読んでいた赤井は、雨の音を感じてふと目を上げた。しめきったままのカーテンの隙間から窓を見ると、降り出したばかりだと言うのにそのほとんどが濡れていた。
こんな雨の夜、彼はどうしているだろう。そう考えてしまうのは、赤井の癖の一つになっていた。
彼というのは、同じ組織に潜入していた捜査官のことであり、かつては殺したいほど憎まれていたこともあった。因縁の組織が実質的に壊滅してからは、同じ陣営になり、共に戦う仲間になったが、赤井にとって彼は言葉では言い表せない特別な相手だった。
そんな降谷零と初めて会った日のことは今でもはっきり覚えてる。黒い服に身を包んだ彼は、犯罪組織の一員とは思えないほど清らかで美しかった。
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