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    なめこ

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    なめこ

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    この世界での、とある悪魔の味覚と身体についての説明書。

    聖魔(青手)ちゃん。
    時系列の設定は中編あたり。

    #青手
    aGreenHand

    青八木はテーブルの前に座る。
    目の前に置かれた茶色い色のスープを神妙な面持ちで見つめていた。
    青八木の少し後ろに立つ手嶋はそわそわしながらその様子を伺っている。

    スプーンでひとすくいして口に含んでみるが、言葉にし難いような青臭さと酸味、そしてほのかな苦味が広がり、顔を顰めた。

    「あー……やっぱ、ダメ?」

    手嶋が残念そうに問い掛ける。

    「……」

    なんとか飲み干すが、青八木は答えないままだ。

    「ダメかぁ〜。一応、調味料で誤魔化してみたんだけど……やっぱ無理か。"安物"だしなぁ」
    「す、すまない……、純太」
    「別に大丈夫だよ。昨日村にやってきた行商人が勧めてきた食用花っつーのはどんな味かなと思って、興味本位で買ってきただけだし。もし美味しいなら日常食として取り入れようと思ってたけど。……酸味も強いが、青臭さ……とか。あとは若干の苦味か。聖都で売られてるのは別の品種で高価な分、甘くて美味しいらしいんだけどさ。コレは安く仕入れることのできる品種だから好き嫌いが分かれる、とか言われてたし……。青八木の味の好みは知ってるから、ダメかも知れないとは思ってたんだ」
    「あ。その、純太が好きな味、なら……」
    「青八木がダメだと思ったなら、それが答えだ。無理して飲まなくていい。オレは悪魔だから栄養素とか味覚には拘りねぇし。それにオレは、料理を作るなら誰よりも青八木に喜んで欲しい。青八木が美味しいと思える、笑顔になれるような料理を作りたい」
    「……」
    「試食ありがとな! 念の為の口直し用にいつものプリン作っておいたから、そっち食ってくれ。残りのスープはオレが全部飲んどくから」

    手嶋は悪魔という性質上味覚には無頓着なため、新しい料理に挑戦する際は青八木が味見をしていたのだが、今回の新メニューはハズレだったようだ。

    目の前のスープは取り下げられ、代わりに美味しそうなプリンが一皿置かれた。

    青八木は手嶋に感謝を伝えてスプーンを持ち、プリンを掬って口に含んだ。
    甘味が口の中いっぱいに広がり、軽く咀嚼したのちにつるんと喉を通っていく。カラメルのほろ苦さもちょうど良い。

    一方でテーブルについた手嶋は先程のスープを啜る。

    「ど? プリン。うまい?」
    コク
    「そりゃ良かった!」
    「……その、スープ。純太にとっては美味いと感じるのか?」
    「んー? いや、変な味だなーとは思う。から、やっぱこれが『不味い』ってコトなんだろうな。寒咲さんのレシピや本から作る料理じゃまず再現できねぇ味っつーか。調味料はいつも使ってるヤツだから、この味はやっぱ食用花から出てるんだな」
    「……純太は、味覚で嫌悪感や不快感は抱かないのか?」
    「んー、いや、これくらいなら平気かなぁ。オレが味覚っつーものに無頓着すぎるのもあるけど。あ、あの回復薬だけは特別だ! 悪魔専用の回復薬なだけあって、味はめっちゃマズい」
    「ふむ……」

    オレは特に不味いとは思わなかった。種族が違うなら味覚の感じ方も違うのか……?

    青八木は頷き、手嶋は続けた。

    「そういやぁ何度か話してるだろ? オレは人間の生活に寄せてるだけの悪魔だから、人間の規格からは少しズレてるんだと思う。悪魔にとっては血肉と魂が極上のご馳走ってヤツだ。でもオレはそれすらも微妙っつーか……特に食べたいとは思わねーし。下級悪魔だからかな? それにオレの体内に入れたものは物体に含まれた魔力以外は吸収されずに胃の中で消えちまうんだよ。おもしれー身体してるよな。ツノや翼、尻尾以外は人間のそれに似せてできてるのにさ。んで今、オレの身体の中では食用花に元々含まれてる微量な『魔力だけ』吸収されて、肝心の花とスープは全部胃の中に入った瞬間消えちまってる」

    手嶋は器用に喋りながらもスープを平らげていく。
    青八木は口内に含んだプリンの味を確かめながら頷いた。

    「出会った当初、純太は珍しい子だと思った」
    「まず前提として、オレ悪魔だしなぁ〜。巻島さんも似たタイプだけど、違う種族の悪魔だし」
    「魔力があれば寝る必要は殆どないし、身体の機能としてはトイレに行く必要もないと知って凄いと思った。純太の身体は冒険者向きだ」
    「はは、ほんとそれな! オレの身体の中ってどうなってるんだろうな。体内の魔力量が一定を超えると身体の水分を放出するようになるのも不思議だ。小さい頃、孤児院で振舞われたジュースの飲み過ぎでおねしょしちまったのは正にそれだし」
    「あれは普通のジュースじゃなくて、魔力の籠った果実が使用されていたんだったな」
    「そうそう。オレの身体って変に人間味を帯びてるっつーか、五感や見た目は人間同様に"そう"なっていてさ。人間と同じような臓器ってあるのかな。……あ、まぁ。あるんだろうなぁ、きっと。"つくり"が違うだけでさ」
    「?」

    手嶋は楽しげにふふっと笑った。

    「青八木と『する』時は気持ちイイし、出すのも青八木と同じ白いヤツだし。ああでも、人間のそれとは違ってきっと子種とかは入ってないんだろうなぁ。見た目はあんなに白濁としてるのにさ。青八木が飲んだ時も無味無臭って言ってたし! マジで不思議だ」
    「……」
    「小さい頃は、トイレに行く必要ねーのになんでこんな棒とか玉とか穴が付いてんだろって思ったなぁ。まぁ棒の機能についてはおねしょした時に分かったし、穴は青八木と初めて繋がった時に機能を理解したけど。それからはオレの身体ってインキュバス寄りにできてるのかな、もしかしたら青八木とセックスするためにこの姿で生まれてきたのかなとか考えたこともあったな。ただそれならセックスしやすい女体で生まれなかったことが謎なんだよなぁ」
    「純太……」

    手嶋のお喋りは止まらない。
    青八木は夜、淫らに腰を揺らす手嶋を想像してしまい、眉間に皺を作りながら少しだけ頬を染めた。
    彼は続ける。

    「突かれるトコロも人間の男と同じ箇所が気持ち良くなるし、シてる時に青八木にギュッて抱き締められるとすっげー満たされる気がする。ただ人間と違うのはさ。ナカに出されてもオレの体内でそれがすぐ消えちまうから、腹を下さねーってところだな。処理する必要ねぇのが便利だよなぁ、オレの身体」
    「純太……」

    青八木は頬を更に赤く染めながら片手で頭を覆った。

    「"便利"とか、そういう言い方はよして欲しい。まるで……性欲処理だと言ってるみたいな言い方だ」
    「あ。悪ィ悪ィ。別にそういう意味で言ったんじゃねーよ」
    「……、ああ」
    「それにほら。青八木って最後出した後、そのまま抜かずにオレのことギュッて抱き締めてから眠る時あるじゃん。処理する必要ないから、オレもそのまま青八木のことギュッてしながら眠れるし。あれ、凄くイイんだよなぁ。気持ちが蕩けちまう」

    手嶋の尖った耳はぴょこんと横に垂れ、彼は「んふふ」と声を漏らしニコニコしながら二人の夜を想起している。
    一方で青八木の脳裏には淫らな手嶋の姿が浮かんだままで、口に含んでいるプリンの味に集中できない。
    最後のひと口が飲み込めずにいる。

    「でも……オレはさ。最近。青八木がナカに出したものが消えちまうのが、なんか。残念でさ」
    「……?」

    先程の楽しげな様子とは一転し、手嶋は少しだけ表情を曇らせた。

    「地下室にいた頃はさ、ほら。処理する必要ねーから楽だなって思ってたけど」
    「……」
    「最近は。青八木の出したヤツがオレの腹の中に入っても、すぐに跡形もなく消えちまって何にもならねーってのがちょっと残念に感じて」
    「……」
    「なんで、すぐ消えちまうんだろうって思ってる」
    「……」
    「例えばサキュバスはさ、男との性交を通じて生命力ごとごっそり搾り取るらしいけど。オレは淫魔とは別の種族だから身体に相手のモノを取り込んだり吸収して自らの血肉にするとか、そういう風にはならないし」
    「……」

    何だか、嬉しいような……それでいて複雑な気分だった。
    もの凄い告白をされているような気がする。

    青八木は真っ赤な顔で俯いた。
    もうプリンの味は感じない。

    「あ! でも別にオレは田所さんみたいな健啖家じゃないぜ。誤解すんなよ? オレの腹には確かに何も残らねーけど、魔力の満腹感ってのはあるんだぜ。魔力だけじゃなく『気持ち』が満たされると『腹いっぱい』になる。そういうところは人間と変わらない。だから際限なく何でもパクパク食べれる訳じゃねぇからな!」
    「……知ってる。純太はいつも少食、だから」
    「え、オレ少食っつー基準? 普通に食ってるつもりなんだけどなぁ。ただ青八木は悪魔(オレ)以上にガッツリ食べるから、ちょっと心配」
    「……」

    手嶋はむぐむぐ言いながら食用花を口に含んでいる。

    経口摂取の話からとんでもない話に飛躍してしまった。
    食事とセックスは似ているとよく言ったものだ。

    『ガッツリ食べる』
    その通りである。

    青八木はただひたすらに手嶋を愛で、彼の身体の中に愛の楔を打ち込み続ける。

    口の中で転がるプリンの甘みを舌で味わおうとする度に、昼間から手嶋へいやらしいことをしているような気がしてくる。

    顔を赤く染めて眉を寄せつつ俯く青八木は当分の間、立ち上がれそうになかった。
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    なめこ

    DONEこの世界での、とある悪魔の味覚と身体についての説明書。

    聖魔(青手)ちゃん。
    時系列の設定は中編あたり。
    青八木はテーブルの前に座る。
    目の前に置かれた茶色い色のスープを神妙な面持ちで見つめていた。
    青八木の少し後ろに立つ手嶋はそわそわしながらその様子を伺っている。

    スプーンでひとすくいして口に含んでみるが、言葉にし難いような青臭さと酸味、そしてほのかな苦味が広がり、顔を顰めた。

    「あー……やっぱ、ダメ?」

    手嶋が残念そうに問い掛ける。

    「……」

    なんとか飲み干すが、青八木は答えないままだ。

    「ダメかぁ〜。一応、調味料で誤魔化してみたんだけど……やっぱ無理か。"安物"だしなぁ」
    「す、すまない……、純太」
    「別に大丈夫だよ。昨日村にやってきた行商人が勧めてきた食用花っつーのはどんな味かなと思って、興味本位で買ってきただけだし。もし美味しいなら日常食として取り入れようと思ってたけど。……酸味も強いが、青臭さ……とか。あとは若干の苦味か。聖都で売られてるのは別の品種で高価な分、甘くて美味しいらしいんだけどさ。コレは安く仕入れることのできる品種だから好き嫌いが分かれる、とか言われてたし……。青八木の味の好みは知ってるから、ダメかも知れないとは思ってたんだ」
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