目潰し事変後の密会雲一つない明るい夜だった。満月がデカくて落ちてきそうだと思ったくらいだ。
件の鬼城を調べていたせいで用事を済ませにくるのが遅くなってしまった。
岩柱邸はほとんどの者が寝入っているのかしんと静まり返っている。
俺もさっさと自分の家に帰らねえと。
息を殺し、気配を隠しながら廊下を歩いていく。何故俺がこんな面倒なことをしなくちゃならねえ、と思いはするが、背に腹は変えられない。ここには俺が会っちゃいけない人間がいる。
愚図だし、大して勘も鋭くない男だ。俺がここにいることさえきっと知らずに今頃スヤスヤと寝ているだろう。
そう思いはするのに、前へと進む力が強くなる。
歩くたび歩くたび、奴の顔が浮かんだ。はっきりとこちらに顔を向けた姿を見るのはいつぶりだったろう。
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