輪廻の蛇妖怪私には生まれつき、家族がいなかった。
お父さん、お母さん、お姉ちゃんお兄ちゃん。
誰もいなかった。
自分の名前もわからない。
だけど一人ではなかった。
私にはマメヤカがいた。
マメヤカは男の人で、ほっそりとして背が高く、動作には品の良さが香ってくるようだった。
髪の毛は黒く、目は薄い茶色ともオレンジ色ともとれる。
顔もすごく綺麗で、私はマメヤカのことが好きだった。
マメヤカは私のことを「あなた」と呼んだ。
まるで昔の奥さんみたいな口調だった。
「マメヤカ、あのね」
私はそれっきりうまく言葉にできず口ごもった。
その様子を見て、少し不安そうにマメヤカは尋ねる。
「あなた、どうしましたか。
お腹がすきましたか、それともどこか・・・」
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