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    半田春

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    半田春

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    神代が寂しさやら不安を感じたときにあらわれる不思議な存在の話を書きたかった…のかもしれない(覚えてない)

    未完るいるい1初めは、高校生になってすぐの頃だった。
    二回目はそれから数ヵ月後、三回目は神山高校に転入してすぐ。高校2年生になり、ワンダーランズ×ショウタイムとして活動するようになってからは、めっきり見なくなった。

    「やあ、久しぶりだね」

    そう言って僕に歩み寄る男は、容姿から声まで何もかもが一緒な、紛れもない僕自身だ。



    この〈僕〉は、何故か突然現れる。ドッペルゲンガーを見ると死ぬなんて話もよく聞くけれど、こうして何度か姿を見ていると「所詮、噂は噂か」という呆れに似た気持ちになる。〈僕〉がドッペルゲンガーではなく、ただの僕の幻覚なのかもしれないが。

    「おかしいな。今回は別に徹夜しすぎたとかはないはずだよ」
    「寝不足からくる幻覚か何かだと思っているのかい?自覚があるならしっかり寝て欲しいね」
    「僕が言ってると思うと違和感があるな。僕ならもっと、演出の話にのってきて共に夜を明かすくらいのことはして欲しいんだけど」
    「まあまあ、そう深く考えずに。ほら」

    「おいで」とでも言うように両腕を広げてくる。意図を察して躊躇っていても、いつまでも腕を下ろさないから、仕方なく腕の中に入った。僕の行動に満足したように機嫌良く抱き締めてくる〈僕〉に変な気持ちになって、僕も腕を回してみる。まだ全然慣れないけど、この行為はなんとなく好きで、先程までの緊張が解けていくのが自分でも分かった。
    抱き締められている感覚も、触れている感覚も、ちゃんとある。どういう原理で同じ人間が二人存在しているのか、疑問は尽きない。けれど、普段の元気な知的好奇心が大人しくなって思考を放棄するくらい、〈僕〉はどうしようもなく安心できる存在だった。



    「寧々とえむくんが仲良くやれているようで嬉しいんだ。寧々が少し突き放すような言い方をしても、えむくんは寧々の本心を汲み取って笑顔でそばにいてくれる。あんなに楽しそうにしてる寧々を見てると、僕も嬉しくなるんだ」
    「うん、それは良かったねぇ」

    ごろんと寝転がって、座った〈僕〉の崩した脚に頭を預け、いわゆる膝枕の状態で僕の話をする。〈僕〉はそれを静かに聞きながら、時々頭を撫でて遊ぶ。

    「今まで退屈だった学校も、司くんがいるから楽しく通えている。授業中に隣のクラスから司くんの声が聞こえてくるとね、きっといつものかっこいいポーズとやらをキメてドヤ顔をしているんだろうなぁって、想像して笑ってしまうんだよ」
    「フフ、同じクラスじゃないのが惜しいね」
    「本当だよ。ドローンで観察するのも良いけど、毎日この目で見ることができたらもっと面白いだろうなぁ」

    ふと〈僕〉の顔を見上げてみたら、これ以上ないくらい優しい目で微笑んでいて、少し驚いてしまった。自分と同じ顔なのに、いや、同じ顔だからか、何とも言い難い変な気持ちになる。けれど決して不快ではなく、嬉しいような恥ずかしいような、むずむずする感覚だ。今、僕は絶対に変な顔をしている。制御しきれなくなった表情筋が勝手にゆるむから、見られないように身体の正面を〈僕〉の方に向けて、顔を腹の辺りにぎゅうぎゅうと押し付けた。

    「おやおや、そっちからくっついてくるなんて珍しいねぇ」
    「……」

    顔は見えないけれど、頭上でクスクスと笑っているような気配がして余計に恥ずかしくなった。

    「ねえ、瑞希についても聞きたいんだけど、いいかい?」

    頭を撫で続ける手は止めず、そう尋ねてくる。声が優しい。僕は子供以外にそんな声出さないはずなんだけど。僕と同じはずなのに僕のことを子供扱いしているのか?少しムッとしてしまうけど、やっぱり不快ではなくて。
    最近の昔馴染みの姿を思い出して、口を開いた。

    「……瑞希は、どうやら仲間ができたようだよ。学校でも、最近は東雲くんや青柳くんと一緒にいるところをよく見かける。司くんをからかってるところもたまに見るね。まだ少し心配なところもあるけど、なんとかなりそうではあるから安心かな」
    「そうか。……うん、悪い方に進まないと良いね」

    僕の癖。手を口元に添えるアレ。何か考えているのか、両手が僕から離れてしまい、無意識でその手の行方を目で追ってしまった。真剣な顔でぶつぶつと何かを呟いて、時々笑う。なるほど、確かにこれは端から見れば怖いかもしれない。
    寧々ほどではないけれど、瑞希との付き合いは長い。関わる機会は少なくなってしまったが、なんだかんだ僕はかつてのぼっち仲間が気になっていたんだなと、自分のことなのに今更理解した。
    それはいいとして、だ。ついさっきまで子供扱いをしていたのに、今はすっかり思考の海の中にいる〈僕〉を、なんだか見ていたくないなと思った。頭に触れる手の温もりも、甘い視線も、なくなってしまった。僕にそういうことする人間はいないから、結構気に入ってたのに。早く戻ってきてよ。……と、そこまで思ってふと我に帰った。この気持ちは何だ、自分は今何を望んだ?と、自分自身の思考に戸惑う。呆然としていると、僕の異変に気付いたのかこちらを向く〈僕〉と目があった。

    「ん?どうしたのかな、そんな驚いたような顔をして」
    「……わからない」

    わからない。何もわからないけど、今、確かに「嬉しい」と思った自分がいたことだけはわかる。やっとこっちを見てくれた、と、歓喜する僕がいた。
    もしかしてこれって……と考え、そして自分で驚く。こんな感情、とうの昔に忘れたつもりだったんだけどな。

    「僕は今、寂しかったのかもしれない」
    「寂しかった?」

    目を丸くする〈僕〉に、気持ちは分かるよと言いたくなる。最後に言ったのはいつなのか、自分でも覚えていないくらい昔の話だから。

    「〈僕〉だから、みんなのことが気になるのは分かるんだ。だけど、僕以外のことしか考えていませんって姿を見ると、どうもね……」
    「……」
    「昔のことを思い出してしまうんだ。最初は僕に協力してくれたけれど、もうついていけないって離れていくみんなのこと。それと重なって、君が僕以外の人で頭がいっぱいになって僕から離れていくんじゃないかって……。ごめんね、おかしなことを言っている自覚はあるんだ。君は僕だし、そもそもそんなに頻繁に会っていないのに」

    頭の中で整理しながら喋るも、自分で自分が分からなくなってきて、視線を泳がせる。怖い。黙っていないで、早く何か言って欲しい。引かれてしまったのだろうか。不安を抑えるようにきゅっと自分の服の袖を掴んだところで、僕の体に影が落ちた。

    「うん。ごめんよ。寂しい思いをさせてしまったね」

    両手で頬を包まれて、顔が近付けられる。
    近い、近すぎる!

    「ふぐっ……なんらいこれは」

    近付く〈僕〉の顔を手でガードし、そのままぐいぐいと押し退ける。

    「ちょっと近すぎじゃないかい?何する気?」
    「寂しいって言うからできるだけくっついてあげようとしただけだよ。何もやましいことなんて……あ、もしかして期待した?」
    「してない、何もしてない、変な想像はやめてくれ」

    力いっぱい押し返しても、同じくらいの力で抵抗されてしまう。勝ち負けの話ではないけれど、力で優位になれないのはちょっと悔しい。ニヤニヤしている顔にも腹が立つ。
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