中禅寺秋彦の手記(二)学舎を離れてから、
関口の変容が早まった。
まず背が異様に伸びた。
いや、四肢が伸びているのだ。
胴に比べて手足が長くなっている。
指などは顕著で、短く丸っこかった
彼の指は私の倍近くの長さになった。
左目の様子もおかしい。
まるで見えていないことに気づいてから
数日で、目の周りの肉が膨れ始めた。
膿でも溜まっているのだろうか。
声をかけても反応がすこぶる悪い。
虫がうるさいとよく書き記している。
学舎にいた頃は、筆談のやりとりが
それなりにできていたのに、
今はすぐにペンを置いてしまう。
おそらく、文字を思い出すのも
難しくなっているのだろう。
学舎を出てからひと月も経っていないのに。
本当は、理解っている。
学舎を離れたからではなく
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