夏が終わる声(ひぐらしの鳴き声) 雑賀先生が隠居していた森の中には、様々な生物がいた。夏の終わりには夕涼みに誘われて、狡噛と訪ねることもあった。そんな日はいつもひぐらしが鳴いていて、俺は幼い頃に祖母に手を引かれて、見知らぬ人の中を通ったことを思い出す。あれは祭りか何かだったのだろうか? 記憶はあやふやで果たしてそれに行ったことすら曖昧だ。だが、あの鳴き声はいつも思い出すのだ、夏が終わる頃、もう楽しい日々も終わると、俺に教えるように。
出島でもひぐらしは鳴いた。俺はそれに懐かしい思い出を引き出されそうになって、改めてそんなんではいけないと思い直した。優しい思い出で自分を慰めてもしょうがない、今は狡噛がいる、そう思うのだ。しかし今日は何故か狡噛が俺を誘って出島のマーケットに任務帰りに寄った。なんの記念日でもないというのに花城の許可まで取って。
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