ナチュラルラブホイホイ青い空!広い海!白い砂浜!
そして一心不乱にボールを投げる俺たち。
…いや、何やってんだ…。
なぜここに来て俺たちはポケモン捕獲してるのか。
それは数日前に遡る。
ある日同じ学年のやつに声をかけられた。
何でも捕まえたいポケモンがいるらしい。
「お前と転入生が浜辺でピクニックするだけでいいんだ!頼む!」
ドドゲザンの如く頭を下げる勢いに気圧されて、いまいちどんなポケモンが捕まえたいのかもわからずに了承した。
そして予定が合った今日。
パルデア十景の一つ、ひそやかビーチは相変わらず静かだ。
『お前たちの邪魔はしないからピクニック楽しんでてくれ!』
とは言われたものの、一体何を狙ってるのか首を傾げる。
「ほんとに誘わなくて良かったの?」
「んー…よくわからねえけど、俺とアオイがピクニックすることで現れるかもしれねえんだと。」
「へー…どんなポケモンなんだろ。」
テーブルを広げてサンドイッチを作って二人で食べる。
ついでにあいつの分も作っておこう。
荷物的にボールしか持ってなさそうだったしな。
なんだかんだテスト期間が終わりお互い時間に余裕ができてからの久しぶりのピクニックだった。
テストのことやここ最近の手持ちたちの話で盛り上がる。
ボタンやネモを交えたいつもの四人ももちろん楽しいのだが、二人きりのピクニックは特別だ。
アオイには、あの二人には感じないほわほわとした暖かい気持ちがある。
これを俺は親友としての特別感だと思い込んでこの時間を味わっていた。
「ペパーのサンドイッチはやっぱり美味しい〜!毎日食べたいくらい!」
「言い過ぎちゃんだろ!まあ言ってくれたらいつでも用意するぜ。」
アオイの口元についたソースを指で拭う。
ああ、この時間がずっと続けば良
「キターー!!!!読み通り!!!!」
「えっ何!?すごい!大量発生!?」
「………。」
ついこの前習ったからよく覚えてる。
浅瀬のサンゴ礁に棲むおだやかなポケモンで、その特徴的な形からカップルの間で人気があるというポケモン。名前はラブカス。
ひそやかの名を返上するレベルで一帯がピンク色に染まる光景に俺たちは目を丸くした。
「こんなにたくさん…繁殖期かな…?でも大量発生の通知もないし珍しいね!」
「あいつこれ狙ってたのか…?」
浅瀬でボールを投げつつ色違い来てくれー!という叫びに唖然としながら隣を見ると、アオイは目の前の光景に参加したそうにそわそわしている。
どんなカラクリなのかわからないが、あの時間はお預けらしい。
「アオイ行ってこいよ。俺ここ片付けて行くからさ。」
「えっでも、」
「いいから。お前の強いポケモンたちが協力してくれた方が早く終わりそうだろ?」
「ありがと。またゆっくりピクニックしようね!」
海辺に向かって手持ちを放ち指示する後ろ姿は小さいのに頼もしい。
アオイが手伝えばあいつの目的も達成されるだろう。そんな予感がした。
「本っ当にありがとう…!ここ最近毎日通ってても見つからなくて…。」
「それならよかった!」
「この特別なラブカスを贈りたい人がいるんだ。俺もちょっと疑ってるところはあったんだけど、図鑑の話は本当だって証明されたしとにかく助かったよ!」
「それにしても繁殖期とかよく知ってたな。あの時習ったっけ?」
俺たちが習うのはせいぜい繁殖期には海がピンクに染まるほど集まることと、ハートの形から恋人に贈る風習がどこかにあるということくらい。
狙って遭遇することができたことを疑問に思っていると、あいつはこう答えた。
「俺が言ってるのはエントランスにあるホウエン図鑑なんだ。ここでは見ないポケモンたちが載ってたり、同じポケモンでも違う説明があって面白いぜ。」
サンドイッチと捕獲手伝いのお礼にどっさりお菓子ときのみをもらった日、ふと思い出してアオイと一緒にホウエン図鑑を読んだ。
それがとんだ爆弾投下になることを今の俺たちはまだ知らない。