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    くらうん

    @Kuraun_hiroaka

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    くらうん

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    公安委員会委員長のホークスとプロヒーローの常闇君の話です。
    ふわっと読んでいけると嬉しいです。

    俺の光明カンカンカン!!
    目の前で踏切が閉まる音がする。
    (頼む! 間に合ってくれ!)
    そう思いながら必死に手を伸ばすも、そんな俺をあざ笑うかのように踏切は閉まり電車が通過しようとする。その様子を見た人の口から
    「きゃぁぁぁ!!!」
    という悲鳴が聞こえたのを最後に俺の意識は暗闇へと落ちた。

    「……して……」
    俺の近くで声が聞こえて、ゆっくりと目を開くと真っ白な天井が視界に映る。
    (どこだ……?)
    そう思いながら瞬きをすると、隣からガタッと音がした。
    (誰かいる……?)
    そう思いながら首を動かそうとすると
    「動かしてはいけません!」
    とよく知った声に止められる。
    「とこ、やみ、くん?」
    声の主の名前を呼ぼうとすると何故か声が出しづらく、途切れ途切れになってしまう。その様子を見た常闇君は
    「少し待っていてください」
    と言って俺の正面に移動してから
    「医者を呼んできますから」
    そう言い残して退室していった。常闇君が退室する様子を耳だけで聞きながら今に至るまでの状況整理をする。
    (さっき常闇君が言ってたことからここが病院だということは分かった。でもなんで病院に?)
    思い出そうと考え込んでいると、ズキッと頭が痛む。思わず手で押さえようとすると腕が固定されていて動かすことさえ出来なかった。
    (なんでこんなに傷だらけ……というか重傷を負ってるんだ?)
    自分の状況を不思議に思っていると、コンコンとノックした後、ガラッと扉が開く。そして
    「ホークスさん、お身体の方はどうですか?」
    と言いながら白衣を着た男が近づいてくる。
    「お、れ、は」
    途切れ途切れに答えようとすると
    「ついさっき目覚めたばかりで、体を動かすのは困難な状況です。ずっと眠ったままだったので声を出すのも厳しいです」
    と後から入室してきた常闇君が答える。それを聞いた男は
    「すぐに水をお持ちします」
    と言ってナースコールで水を持ってくるように伝える。その様子を見ながら俺の見える範囲に立つ常闇君に驚きの顔をしていると口パクで
    「後でお伝えします」
    と言われ瞬きで返事をする。暫くしてナースコールを受けた女性が水差しをもって現れた。その水差しを常闇君が受け取り、俺の口元に運んでくれる。少量飲んだだけで、喉が痛み思わず咳込むと
    「大丈夫ですか⁉」
    と慌てた様子で俺の顔を覗き込む常闇君に大丈夫だと瞬きすると、ホッとしたように胸を撫で下ろした。その様子を少し離れたところで見ていた男は
    「今、水分も取れたので大丈夫そうですね。私は一度退室します。何かあった際はナースコールでお呼びください」
    と言って退室していった。その後ろ姿を睨みつけるかのように見ていた常闇君を不思議に思いながら
    「とこ、やみ、くん」
    と声を掛けると
    「! 5日間昏睡状態だったので無理に声を出さないでください!」
    と言いながら俺を気遣うように見てくる。
    「いつか、も、おれ、ねて、たの?」
    と聞くと常闇君は頷きながら
    「5日前、何があったか覚えていますか?」
    と聞かれる。
    「う、うん」
    と否定の意味を込めて伝えると正しく意味が伝わったのだろう
    「そうですか」
    と言いながら5日前に俺の身に何があったのかを教えてくれる。

    ___5日前___
    俺はいつものように公安委員会本部に向かって歩いていた。いつもなら通る事のない道をその日は、最近起きているひったくりの現場から近いという事で通ったらしい。
    そしたらたまたまひったくり犯に出くわして、ひったくりをされた被害者が線路に足がはまって動けなくなっていたところを俺が助けたまでは良かったが、俺達が線路から出ようとした直後に踏切の閉まる音が鳴り響き、俺は咄嗟に被害者を突き飛ばして線路から出し自分だけ轢かれ、今日に至るまで昏睡状態だったらしい。
    「いやー、なんて、いう、か……すご、い、そうぐう、りつ、とあく、うん、だね」
    5日前の話を聞き終えた俺は思ったままの心情を伝えると常闇君は顔を顰めて
    「貴方は……もう少し生身の身体であることをご自覚いただきたい。ただでさえもう剛翼はないのです……から……」
    そう言いながら俯いていく君の頬に手を伸ばしたくても固定されていて伸ばす事ができない。
    (近くに居るのに触れられないのはもどかしいな)
    「き、みに、ふれ、た、い」
    思っていたことが口に出たことに驚きつつ常闇君を見ると真っ赤な顔をして俺を見ていた。そして
    「貴方という人は……」
    と言いながらそっと頬に手を添えられる。久しぶりに感じた常闇君の体温を心地よく思いながら
    「あり、がと、う」
    とお礼を伝えると
    「早く治してくださいね」
    と微笑む常闇君に瞬きで返事をした後
    (そういえば……)
    「さっ、き、なん、で……ゴホッ!」
    と言ったところで話過ぎたのか、咳込んでいると
    「あまり無理はしないでください! セントラル病院に移動するまであと2日は此処に居るのですから……」
    と水差しを持ちながら苦虫を嚙み潰したような顔をする常闇君に
    「な、んで、そんな、かお、、する、の?」
    と聞くとハッとした顔をしてから
    「すまない……ただ、あの医師の対応をあまり好ましく思っていないが故……」
    と言って言葉を濁す常闇君を見て
    (珍しいな……)
    と思いつつ話そうとすると突然、館内放送が流れる。
    『面会終了時間となります。面会にいらしているご家族様はお帰りのご用意をお願いします。繰り返します』
    「もうそんな時間ですか……じゃあ俺はこれで失礼します」
    と言って立ち上がる常闇君に
    「き、を、つけ、て、ね」
    というと会釈をしながら退室していった。
    その後、点滴の付け替えと言って入室してきた男を見送って少し経つと異様な眠気に襲われ俺はそのまま意識を手放した。

    「眠ったか……」
    特別室と書かれた部屋の前で中の様子を注意深く見ていた男は、ホークスが眠った事を確認すると中に入り注射器を取り出す。そして薬で深く眠っているホークスの腕に刺そうとしたその時
    「黒影!」
    「アイヨ!」
    という声と共に何処からか黒い影が伸びて俺に巻きつく。
    「ぐっ……!」
    力強く拘束されたことで手に持っていた注射器を落とす。それを見た影はすぐさま拾い上げ主である男に渡す。
    「くそっ! なんでお前がここにいるんだ!」
    帰ったはずの男に叫ぶと男は
    「公安委員会委員長が入院しているのに護衛がいないはずがないでしょう? ましてやここの病院にひったくり犯が居るとなれば」
    と言われ言葉が詰まる。
    (まさかバレてんのかよ)
    そう思いながらどうにかこの場から逃げようとすると、影の力が強まる。
    「逃げようなどと思わない方が身のためだぞ。俺の相棒は力加減が出来るのは最初のうちだけだからな」
    俺を見ずにそう言って注射器を確認する男の瞳には俺に対する怒りしかなく、ぎりぎりと俺を拘束する手も強まっていた。
    (意識を飛ばしたら終わる……!)
    そう思いながら必死に意識を保とうと男に言葉を投げた。
    「はっ、昔は早すぎる男なんて言われていたホークスも、羽根がなくなればただの地に落ちた鳥だな……ぐっ……!」
    挑発をして動揺を誘おうとしたら、影が思いっきり俺を壁に投げつけた。望み通り拘束が外れて逃げようとしたが壁に叩きつけられた勢いが強かったからか、体が思うように動かず這いずるような形でドアへと向かう。
    (今は分が悪い……一度引いて体制を整えよう)
    そう思いながらドアまでもう少しという所で黒い影が俺の手を踏む。
    「ぐぁぁ!!」
    ミシミシと音を立てながらあらぬ方向に曲がりつつある手をもう片手で庇おうとしながら男の顔を見ると、瞳に光がなく敵と言っても過言ではないくらいに暗い雰囲気を纏っていた。
    (まずい……殺される……!)
    そう思いながらガクガク震えていると
    「と、こ、や、み、くん」
    とかすかな声が聞こえたのを最後に俺は意識を手放した。

    (許さない、許せない、こいつだけは……!)
    「と、こ、や、み、くん」
    怒りに身を任せ、目の前の男を威圧しているとか細い声で名前を呼ばれる。その声にハッとして声のした方向を見ると、険しい顔をしながら体を無理やり起こしたホークスが酸素マスクを外しながら
    「と、こ、やみ、くん、だ、めだ……」
    と言って俺を見る。その姿を見て我に返った俺は慌ててホークスに駆け寄り背中に手を添えて
    「ホークス! 大丈夫ですか⁉」
    「だい、じょう、ぶ」
    「そのお身体で無理しないでください!」
    俺がそう言うと、ホークスは俺を睨みながら
    「むりも、する! たいせつ、な、こが、みち、をふみ、はず、そう、と、して、るのを、だまって、みてる、なんて、できない!」
    と言われ、ハッとする。
    (俺は、ホークスが呼んでくれなかったら何をしていた……?)
    何をしようとしていたかに気付いた瞬間、手の震えが止まらなくなる。それを感じ取ったのか
    「だい、じょう、ぶ……まだ、きみのては、きれい、だから」
    と言われ緊張の糸が切れたのかボロボロと涙がこぼれる。
    「ホークス、すみません……すみません……」
    謝りながらもホークスを支える手はそのままにしていると、ホークスは
    「だい、じょう、ぶだ、から」
    と繰り返し伝えてくれていた。

    それから暫くして、警察が到着しひったくり犯の男は連行されていった。俺達はというと、ホークスが薬の効果で眠るまでずっと俺に大丈夫だと伝えてくれ、警察が到着するまで俺がホークスを横抱きにしながら額と額を合わせる形で眠っていた。その時の2人はあどけない子供の様に幸せそうに眠っていたと後々、公安の人たちの間で噂されるなんてことはこの時の俺達は知る由もなかった___
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