すわり心地のいいゆりかご「なぁ、親友。本当に治せないのか？」
「こればかりはもうどうしようもないんだよ」

「ロッキー、頼みがある」
「なんだい？グレース」
「ぼくが眠るのを見ていてくれ」
「わかった。見ている」
「ぼくが眠ったら、そろそろエイドリアンも寝る時間だ。そしたら、ロッキーが見るだろ？エイドリアンが目覚めたら次はロッキーが寝る番だ。その時はエイドリアンがぼくを見てくれるかな。ロッキーが起きて、それでもまだぼくが眠っていたら」
「わかった」
「ぼくは寝る」
「見ている。きみは寝ろ」
「ありがとう。バディ」
「グレース。光の速度は、質問？」
ロッキーがわざと懐かしい言い方をした。ぼくは、笑顔で手を挙げ、子どものように高らかに答えたかった。

二人は幼なじみ　虎若が一人、学園の片隅で薪割りをしていた。
これは、元々きり丸のアルバイトだったが、虎若の希望で自ら引き受けた事だ。木を割るのは虎若が請け負い、その後の片付けは、きり丸が担う事で交渉成立した。
斧の柄を両手でしっかり握り、大きく振り被る。腕の筋肉に集中して丸太を割る。カンッ。と乾いた音がして、真っ二つに綺麗に割れた。
「精が出るね」
ふと、遠く離れた所から声が聞こえた。
は組の子どもの声ではなく、大人の声。学園の先輩でも教職員達の声でもない。
虎若は、左右を振り声の先を探す。
学園の塀の上に大柄の男が顔を覗かせていた。
焦茶色の忍び装束に包帯を巻いた顔。
その男の名は、
「あなたは、タコヤキドキ城のちょっとこなもんさん！」

実は3回ある雑さんの下の名前で呼んだ事は過去3回ある
1回目は、二人が若い頃、共同任務中にガチギレした時
そこから名前で呼ぶのをやめた
2回目は、数年前、戦場で雑さんが大怪我で出血がやばくて危篤状態だった時
名前を叫んだおかげで意識が戻ったが、雑さんは、意識朦朧としてたのであまり覚えていない
3回目は、半年前こっそり二人だけのいい雰囲気の時
密書を奪うための策だが、結構本気（マジ）だった