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    dudududutsuu

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    これは雑さんと照さんが幼なじみだった場合の関係です。
    雑さん、照さん、虎ちゃん、伏くんが出てくる。
    二人の過去はぜ~んぶ捏造の嘘やで〜

    二人は幼なじみ 虎若が一人、学園の片隅で薪割りをしていた。
    これは、元々きり丸のアルバイトだったが、虎若の希望で自ら引き受けた事だ。木を割るのは虎若が請け負い、その後の片付けは、きり丸が担う事で交渉成立した。
    斧の柄を両手でしっかり握り、大きく振り被る。腕の筋肉に集中して丸太を割る。カンッ。と乾いた音がして、真っ二つに綺麗に割れた。
    「精が出るね」
    ふと、遠く離れた所から声が聞こえた。
    は組の子どもの声ではなく、大人の声。学園の先輩でも教職員達の声でもない。
    虎若は、左右を振り声の先を探す。
    学園の塀の上に大柄の男が顔を覗かせていた。
    焦茶色の忍び装束に包帯を巻いた顔。
    その男の名は、
    「あなたは、タコヤキドキ城のちょっとこなもんさん!」
    「タソガレドキ城の雑渡昆奈門ね。佐武虎若くん」
    昆奈門が訂正して名前を呼ぶ。塀の上に足を横に揃えて座る。
    「学園に何か用ですか?」
    「まぁちょっとね。ところで、薪割りにては効率が悪くないかい?」
    斧を大きく振るより丸太に刃を軽く当てて、叩くだけでも十分に割る事が出来る。わざわざ、大きく振り被る必要は無いはずだ。
    「これは、トレーニングの一貫です」
    虎若の目的は、薪割りではなく腕の筋力トレーニングだった。
    「そんなに鍛えてどうするの?」
    「照星さんの様になるために。鍛錬を積まないと」
    虎若が照星の名を出すと自然と目が輝く。
    「照星の様になるってどんな事?」
    昆奈門の問は続く。
    「えっ?それは、火縄銃の扱いに長けていて、高い技術があって、冷静で、頭は良くて、強くて、優しくて、格好良くて」
    虎若は、思った事を素直に言う。
    「ふふっ」
    昆奈門は、小さく笑った。
    「変ですか?」
    「いや。照星は、君が話すような人物の様だったわけでもないさ。君ぐらいの歳の頃は、もっと感情的ですぐ怒るし。悔しくて泣く事もしょっちゅうさ。本当に負けず嫌いで、誰よりも努力して鍛錬を積んだから今の照星になったんだよ」
    「へぇ〜。そうだったんですか」
    虎若には、初めて会った時の『用心棒さん』が完璧に出来上がっているので、幼い頃の照星の姿が想像できなかった。
    照星が佐武鉄砲隊に仕えてから虎若に鉄砲の使い方を教える機会はたくさんあったが、照星が自身の事を語る事は全くなかったし、虎若も訊ねる事もなかった。
    学園の関係者ではないが、危害を加える敵ではない。味方と一括りにはできないが、手を貸してくれる謎の忍び組頭が、自分の憧れの人の過去を当然の様に、するりと話す姿に今までになかった違和感と好奇心が湧いた。

    どうして知っているんですか?照星さんは、子ども時代どんな人だったんですか?修行はどんな事をしていたんですか?火縄銃の腕は?二人は、友達なんですか?
    たくさん聞きたい事がある。

     何から聞いたらいいのか、虎若が口を開けたその瞬間、
    「雑渡家イチのきかん坊がよく言う。先代に大目玉食らって毎回大泣きして連れて帰っていただろう」
    また別の声がした。この低い声は、虎若は誰だか知っている。
    「照星さん!」
    照星が、虎若の後ろに立ってる。
    黒い頭巾を巻き、白の着物の私服姿だ。火縄銃の入った木箱を背負っている。
    「私が照星の昔話をすれば、照星も私の嫌な時の話をするんだよ」
    昆奈門は、不服そうに眉間に皺を寄せ、照星の方を指差す。「おや?」と、照星の背後に居るもう一人忍たまに気付いた。
    「こなもんさん〜こんにちは〜」
    保健委員の伏木蔵だ。昆奈門に手を振っている。
    「照星が伏木蔵くんと一緒とは珍しいね」
    「お父上から文を預かって来たんだが、来る途中で指を怪我をしてね」
    照星が包帯を巻いた指を見せる。
    「それで、僕が手当てをしました」
    伏木蔵が横から顔を出して言う。
    「狙撃手が大事な手を怪我するなんてねぇ。気をつけるんだよ。虎若くん」
    昆奈門は、随分離れた距離の虎若に内緒話の様に大袈裟に言った。それでも虎若は「はい」と、律儀に返事をした。
    「妙に仲がいいじゃないか」
    照星の眉間が微かに皺が寄る。虎若と昆奈門が話す姿は珍しい。
    「人のこと言えないだろう?」
    昆奈門は、しれっと返す。伏木蔵と照星が二人並ぶ姿を一瞥する。
    「仲良しですね」
    「そうだね」
    伏木蔵と虎若が、二人を見て言った。



    「お二人は小さい頃からお知り合いなんですねぇ?」
    二人のやり取りを見た伏木蔵が訊ねる。
    「まぁそうだな」
    隣に居た照星が答えた。
    「私達の頃は、忍術学園の様な学びの場所なかったからね。子どもが集まる所は自然と同じだったんだよ」
    昆奈門は、顔に手を当て、昔を思い出しながら感慨深く言う。
    「もし、お二人が忍たまだったら同じ生徒だったかも」
    虎若がふと思った事を言った。
    昆奈門と照星は、その言葉を聞いて揃って首を傾げた。
    お揃いの水色の忍たまの装束を来て、教科書を開き、手裏剣の練習をする可能性はあったのだろうか。
    「君達にとって、二年生ってどう?」
    しばらく思案した後、昆奈門が訊ねる。
    「うわっ、う〜ん」
    虎若は、渋い顔をして言葉に詰まった。学園の先輩達は、個性豊かだがいつも面倒をみてくれて、強くて優しい。
    しかし、一個上の二年生はどうも一年生には威張って意地悪をする嫌な思い出が強い。
    「でも、左近先輩はちょっと意地悪ですけど優しいですよ」
    伏木蔵は、身近な二年の先輩の姿を思い浮かべて話す。
    「ふふっ。私と照星とはそんな感じ」
    昆奈門は、愉快そうに目を細めて笑う。
    伏木蔵と虎若は「あ〜」と、納得して頷いた。
    「どんな感じなんだそれは」
    一人ピンときていない照星が訊く。
    「忍たまなら分かるよね〜?」
    「ねぇ〜」
    「は〜い」


     薪割りが終わった虎若は、きり丸を呼んでくると、その場を離れた。伏木蔵も、保健委員の手伝いのため、医務室へ向かった。
    「お前は、昔と変わらないが変わった」
    照星が言った。
    「そりゃ、歳も取れば嫌でも変わるさ」
    「忍組頭を継ぐ、素直なガキではなかっただろう?」
    「なりたくはなかったけど、自分なりになる事は出来たよね」
    「先代が見たら驚くだろう」
    「照星。昔話がしたいのかもしれなけど、父の話はやめてくれ」
    昆奈門は、むっと不快感を表す。これは照星も知っているはずだ。
    「きっと誇りに思うだろう」
    照星の表情は変わらず、さらりと言葉を続けた。
    昆奈門は、思わず振り返り、旧友の顔を見る。
    「照星の言葉としてなら喜んで受け入れよう」
    呆れながら大きなため息を吐く。
    「好きにすればいい」
    照星の口角が少し上がる。
    微かな表情の変化でも、ふっと周りの空気まで和らぐのが分かった。



    【終わり】
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