すわり心地のいいゆりかご「なぁ、親友。本当に治せないのか?」
「こればかりはもうどうしようもないんだよ」
「ロッキー、頼みがある」
「なんだい?グレース」
「ぼくが眠るのを見ていてくれ」
「わかった。見ている」
「ぼくが眠ったら、そろそろエイドリアンも寝る時間だ。そしたら、ロッキーが見るだろ?エイドリアンが目覚めたら次はロッキーが寝る番だ。その時はエイドリアンがぼくを見てくれるかな。ロッキーが起きて、それでもまだぼくが眠っていたら」
「わかった」
「ぼくは寝る」
「見ている。きみは寝ろ」
「ありがとう。バディ」
「グレース。光の速度は、質問?」
ロッキーがわざと懐かしい言い方をした。ぼくは、笑顔で手を挙げ、子どものように高らかに答えたかった。
はい!はい!先生、ぼくを指して!答えを知っているよ!
そんなふうに手は挙がらないし、声も出ない。微笑むこともできない。しかし、耳はまだ聴こえる。ロッキーの声は、遠くに聴こえて、最後の余韻が消えたころには真っ暗になって、すべてがやさしく包み込まれた。
【おわり】