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    aneniwa

    @aneniwa
    マイハン♀ミドリさんの話しかしません

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    POIPOI 37

    aneniwa

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    ツワ夢展示品

    Twitterに投稿していたポメガバハン♀アヤ(https://twitter.com/aneniwa/status/1496343063375249408?s=46&t=d2C-OvLouKDrmrqD_GOGPg)を、冒頭だけでもちゃんと書き直そうと思ったんです。思っただけでした。

    【ツワ夢】ポメ書きかけ 昼下がりの集会所は、朝や夜に比べれば静かなものだ。朝発ったハンター達はまだ戻らないし、これから新たにクエストを受ける者も少ない。よって利用者も疎らで、手が空くため厨房のアイルー達は交代で休憩を取っており、マイドもまだ昼休憩から戻らない。『休憩中』の札が立てられている雑貨屋の隣で、ミノトは静かに書類を整頓していた。温んだ空気が漂う中、桟敷に座るアヤメは小さく欠伸をする。
     前日の夜に狩りから戻ったアヤメは、疲れを癒すために昼過ぎまでぐっすり寝ていた。寝足りた次は腹が鳴り、何か食事を用意してもらおうと集会所にやってきたところだ。オテマエから「出来上がるまで摘まむといいニャ」と団子を一盛り渡されたが、空腹のあまりあっという間に平らげてしまい、あとは暇を持て余してぼんやりしている。

     と、休日の軽装の足先に、何か暖かいふわふわしたものが触れた。

    「ん?」

     下を見ると、真っ黒い毛玉と目が合った。小さな口がぱか、と開き、中から桃色の舌が覗く。手足を一生懸命伸ばしてやっとこさ届くアヤメの膝にしがみつき、ふわふわと尻尾を揺らしている何か。

    「仔犬?」

     怪訝に思い見下ろしていると、アヤメが座る椅子に向けて細こい後脚でみょんみょんと跳ねる。それほど愛玩動物に親しんだことのないアヤメにも、何をねだられているのか理解できて、片手を伸ばすと仔犬は嬉しげにそれにしがみ付いた。
     掬い上げて膝に乗せてやる。ちんまりとお行儀良く座る毛玉は、アヤメの顔を見上げてまた口を開いて舌を出す。笑っているのだ。

    「何アンタ、どこの子?」
    「わん」

     高い声で一声鳴いた後、もす、とアヤメの腹に顔を埋める。懐っこい小さな毛玉に、クール系上位ハンターも思わず破顔した。衝動のままに小さな小さな頭を撫でくりまわすと、目を瞑って尻尾を振りたくり、膝の上でコロンと腹を出す。そこをわしゃわしゃしてやればもう、尻尾は千切れんばかりに振られ、鼻からきゅうきゅうと鳴き声を洩らして、仔犬は(たまらん)と身悶えした。あまりにも可愛い。

    「……可愛いな」

     ぼそっと呟くと、仔犬は目をキラキラさせて、誇らしげな顔をした。ツンと鼻を逸らして、(そうでしょ)とでも言っているかのようだ。未だへそ天を決めている真っ最中なので、お澄まし顔をしても情けないばかりだったが。

    「なんだそんな顔して。うりうり」

     首やら脇やら腹やらくすぐってやると、一転ハイテンションで(きゃー!)と暴れまわった。揶揄う指にじゃれてあぐあぐ噛み付くが痛くはない。全て甘噛みだ。仔犬の割によく躾けられている。

    「ん〜、可愛いなー。よーしよし。お座り」
    「きゃふ」
    「良い子だねー。お手できる? お手」
    「フッ」
    「よーしよしよし。賢いなー」

    「おまちどうさんニャ。……ニャ?」

     アイルー2人がかりで料理が運ばれてくる。今日のメインは脂ののった鯖の塩焼きで、そこに蒸し野菜やら漬物やら納豆やら茶碗蒸しやら、小鉢を無数に添えてある。当地の味にアヤメが早く慣れるよう、また食べ慣れない物を多く食べなくて済むようにとの配慮だったのだが、色々な味を楽しめるのが気に入ったので、数年過ごした今も同じ形式のものを頼んでいるのだ。ちなみに納豆はまだ苦手だが、オテマエは分かっていて毎回入れてくる。

    「またそんな姿になってるのかニャ、ミドリ」

     毛玉を膝に抱えたまま、機嫌良く箸を取ろうとしたアヤメの手が止まった。

    「……なんて?」
    「久しぶりに見たニャア」
    「クーン」
    「うんうん。お腹が空いたニャ? ちょうど鯛が一切れ余ってるニャ、焼いてくるから少し待つニャ」
    「アン!」

     じっと見下ろすアヤメを、毛玉は首を傾げて(なあに?)と無邪気に見上げる。

    「……いや、アイツと同じ名前なんだよね? 英雄にあやかってか。良い名じゃないか、洒落てるね」

     オテマエの『またそんな姿になった』という言をまるっと記憶から削除することで、アヤメは無理矢理納得した。そういえばこの子の艶やかな黒い毛並みは、どことなく後輩を彷彿とさせる。(ふふん)と胸を張り鼻を逸らす仕草などそっくりだ。……いやまさかね。

    「残念ながら本人なんだよ」
    「ギャ!!」
    「わ」

     声と共に後ろから伸びた腕が、ひょいと仔犬をつまみ上げた。
     腕の主は里の教官職に就くウツシである。首根っこを掴まれて吊られた仔犬は、先程までの愛くるしい態度を一変させて、歯茎まで剥き出しにして怒りめちゃくちゃに暴れ狂っていた。ぎゃうぎゃうと叫ぶ様も可愛い(アヤメは凶暴なモンスター達を見慣れているので、こまい犬が多少怒っている程度では全く怯まない)。
     そんなことよりも、先程ウツシは何と言ったか。

    「食事中にすまないね」
    「いや……。……………本人?」
    「そう。本人だよ」
    「……疲れてる? ウツシ教官」
    「この子がね。疲労が限界を越すとポメラニアンになる体質なんだ」
    「ポメ……体質……?」
    「俺たちも随分悩んだんだけど、歴とした事実なんだ。ちゃんと目の前で変化するところも押さえてあるよ」

     深く考えちゃ駄目だよ、とウツシは遠い目をして言った。アヤメも同じ目をした。荒唐無稽な話であるが、ウツシは大真面目に「大社跡の見廻りは?」「わん」「届け物」「わん」「じゃあ済んでない仕事はないんだね?」「わん!」と弟子? と会話している。仔犬にしては賢いと思っていたが、どうも本当に中身は人間らしい。え? そんな馬鹿な。

    「休むのも仕事のうちだと言っただろう」
    「フン」
    「余暇は何をしてた?」
    「びーー!」
    「どこから出してるんだその音……。まあ、なったものは仕方がないか」

     ぺ、と解放されたポメは、一目散にアヤメの足元に舞い戻り、きゅうきゅうひんひんと鼻を鳴らしながら縋り付いた。(あいつひどいの、みたでしょ)とまんまるな黒い瞳をうるうるさせて可哀想な顔をする。変わり身の早さと愛らしい仕草に、アヤメは思わず吹き出した。

    「ふ」

     わしわしと頭を撫でてもらってポメはご満悦である。

    「……アヤメさん騙されちゃいけないよ、中身はアレだからね」

     ウツシが近付くなり牙を剥きギャギャと喚いて後退りする毛玉。いつか見た、師匠の忠告に八つ当たりで返してお仕置きとして扱かれながら、尚もきゃんきゃん喚いていた後輩の姿が重なる。

    「はい、お待ちどうさんニャ」

     オテマエが焼いて皮を除いた鯛を持ってきたので、アヤメが受け取った。「待て」と手の平を見せると、戸惑いながらもちゃんとお座りをしてじっと待つ。アヤメはそろそろ面白がっていた。

    「ところでアヤメさん、これの面倒を頼めないかい」
    「ん?」
    「甘やかさないと元に戻らないんだよ。そう難しくはないから」
    「あま?」
    「いつもはヒノエさんに頼むんだけど、今日は里長に付いて出掛けてるから。ミノトさんはその分も仕事があるし、俺もこの子が抜けた分の穴埋めをしなきゃいけなくて」

    「アヤメさんにはよく懐いてるようだし。今日は休みだろう?」


    「はあ……」
    「きゅう」
    「いや、嫌な訳じゃないよ。元々一日中ダラダラするつもりだったしね」
    「わん」

    「危なっかしいな……」

     抱き上げてやると、ポメはぷりぷり尻尾を振って喜んだ。


    (あっちあっち)と前脚が示す先に歩いていくと、この娘……犬……? の根城である水車小屋に着いた。所要時間2分。アクセス良好だが防犯面に不安のある物件である。今だって玄関は開けっ放しだ。

     アヤメの腕からぴょいと飛び降りてポメがとことこ向かう先には、引き出し付きの鏡台がある。鏡掛けも畳まれ綺麗に片付いていた。器用に取手を噛んで引っ張り、黒い仔犬は一番上の引き出しを開けた。ぷるぷると爪先立ちで頭を突っ込み、木製の櫛を咥え出して、満足げに「ふ」と鼻息を立てながらアヤメの元に戻ってくる。櫛を置いて伏せた。

    「……やれって?」

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