【ツワ夢】Jくんとマイハン♀ ここエルガドにもハロウィンがやってきた。
大穴の謎も暴かれ、その原因も取り除かれた。未だ傀異化モンスターは現れれど、優秀なハンターと騎士達の奮闘の甲斐あって、今現在に差し迫った大きな脅威は無い。お祭り騒ぎを楽しむ余地は十分にあった。むしろこれまで抑圧されてきた分、人々も盛り上がってしまった。
そもそもハロウィンとは子供のイベントであろうが、そんな細かいことを気にする者は生真面目なフィオレーネくらいしかいなかった。そのフィオレーネもバハリによって言いくるめられ、観測拠点であり子供など一人もいないはずのエルガドは、橙と黒の装飾に埋め尽くされたのだった。
宵も更け、そこここに灯るランタンの明かりがちらちらと揺れるその一角で。
「めっちゃ、エロいっすね……」
「ふふん」
得意気に鼻を逸らし足を組む女は、赤みを帯びた黒いマントを羽織っている。その下には透ける素材のブラウスを身につけていて、胸から下は革のコルセットで締め上げ、腰を細く見せると同時に下から胸を盛り上げている。タイトなスカートもまたブラウスと同じく透けていて、日々の鍛錬で鍛え上げた脚線美を惜しげもなく晒していた。
「見せてくださってありがとうございますは?」
「ありがとうございます……」
くつくつと機嫌良く喉を鳴らし、女は真っ赤な唇の端を吊り上げた。豪奢にラメを散りばめた瞼と睫毛は、瞬く度に光を弾いて煌めく。いつもよりしっとりと長くアイラインを引いた目の下には、泣き黒子のように小さな宝石まで貼り付けていた。髪は、今日はそのまま下ろしている。どこにも絡む事なくサラサラと流れ落ちるのは、日々の手入れの賜物だ。頭頂部にはツノ飾りのある冠が載っている。
「何の仮装ですか?」
「吸血鬼よ、見りゃ分かるでしょ」
どれだけ見てもジェイには分からなかった。はしゃぎ過ぎた魔女か、露出度の高さからサキュバスかと思ったのだが、いくら彼女でも流石にサキュバスまではやらないだろうと悩んだ結果聞いたのだ。聞いて正解であった。
「あんたは狼男ね」
「はい!」
「アハハ、似合うじゃないのよ」
ジェイは自前の赤毛をわざとくしゃくしゃに乱して、同じ色の耳付きカチューシャを着けている。着古した普段着のシャツとズボンを、ところどころ破ったり汚したりしてそれっぽい雰囲気に仕上げていた。
Jミ一緒に住むってなって流石に里に挨拶に行くやん、「覚悟しなさいよあんた、死ぬまで、いや死んでも飲まされるわよ」と事前に言ってた通り囲まれて飲まされているJくんを置き去りにして(酷い)ミドリが集会所2階に上がったらアヤメさんが居てニヤニヤしてるわけ
「まーたこんなところではぐれ者になってるの?」
「いいんだよ、アタシはここで」
「いい加減にしとかないと、また子犬みたいな顔で探しにくるわよあいつ」
とか会話してさ
「……で、結局捕まったワケだ、アンタも」
「……えーえそうよ、捕まっちゃったわ。笑うがいいわよ」
「笑わないよ。良い子そうじゃないか、ちょっとうるさいけど。この里には良いかもね」
「そ、絶対里長に気に入られるタイプよ。馴染むわよね、きっと。……だから嫌だったのよ、逃げ道無くなるじゃない」
手すりにもたれてぶー垂れるミドリを先輩ハンターは優しく見下ろして、
「ハハ、良い気味」
って鼻で笑う(ナカアヤがくっつきそうでくっつかないのをミドリが散々からかっていた仕返し)
「ホンット、良い性格してるわよね! ついさっきは『笑わないよ』とか言ってたくせに」
「ごめん前言撤回」
「勝手にしてなさいよ」
「それでさ、何がトドメだった?」
「はあ?」
「ああいうタイプ相手にするの珍しいだろ、アンタ。いくら相性良くてもさ」
「珍しく突っ込むわね…………まあ色々あったけど。一番はあれ、あの、……まあ絆されてたんだけど、最終的に泣き付かれちゃって、それで押し負けて……」
「アハハッ」
「笑うな……」
「くふっ、あ、あのアンタがね……ひひっ……」
「……」
「ふう……」
「……」
「まあ聞いてたけど、ヒノエさんから」
「そうよね!? 絶対里中知ってると思ってたわよ!! だっていたもの、ヒノエさんあの場に!!」
「実際にアンタの口から聞くと、また痛快だね」
「くそぅ……。だって、あんな皆んな見てるとこでグズグズ泣かれてるのに断ったら、私が悪いみたいじゃない!」
「それも計算のうちだろ。入れ知恵されてさ」
「そうよ、どいつも!! こいつも!!!!」
「アハハハッ」
「笑うなー!!!」
「アーハハハハ!」
言うてる間に捨てられた子犬みたいな不安げな顔したナカゴが暖簾の隙間からそーっと覗いてくるのでアヤメさん(酔って上機嫌)を押しつけて帰らせる