輝けるあなたへ朝早く起きた私は、まだ誰もいない作業場で針に糸を通す。薔薇をイメージした真赤なドレスは私が貴族のお客様からオーダーされたもので、今日の昼までには仕上げなければならない。本当はもっと早くに出来上がっていたのだけれど、急なデザインの変更を頼まれたのだ。お客様は今夜の夜会に着て行きたいと言う。なんとか間に合わせなければ。私は急ぎながら、でも乱れがないように慎重に針作業を進めて行った。
「それでは届けに行ってきます」
数時間後、私は完成したドレスを大きな鞄に丁寧に詰め、店を出る。13歳の時にこの仕立て屋で働き始めて、もうすぐ5年になる。ドレス作りで名を馳せる師匠がいるこの店で師匠に弟子入りして働きたい、と1人故郷を出てきた。ドレスを作る針子の仕事は大変なこともあったが、私は好きだった。最近では、師匠に腕を認められ、お客様から直接オーダーを聞いて、デザインを考える仕事から任されるようになった。様々な要望に応えるのは難しいけれど、やりがいも感じていた。
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