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    【福沢】屋上、夕焼けのころ、をテーマに書きました!

    エンターテイナー「お~い!みんな~!」

     屋上のフェンスの向こう、遠い先の地表で帰宅のために歩みを進める人間たちに向かって、福沢は大きく手を振った。イヤホンを耳に差し込んでいる人間以外は、皆振り返ってその声の主を探して視界をさまよわせる。
     福沢は常日頃、太陽に嫉妬していた。存在するだけで喜ばれて、毎日同じことの繰り返しなくせに美しいなどと評価されるのってずるすぎる、と思っていた。とくに夕日は許せなかった。人間の仕事で言う所の退勤の瞬間なのに、カメラマンに愛されてトップモデルのような扱いを受けている。どう見ても丸顔短足なのにさ。
     だから、どうしても夕日より目立ってやりたかった。というのが福沢がこうして屋上にいる理由だ。その首には太い縄がかかっていて、今からしでかそうとしていることが一目でわかる様相をしていた。

    「見ててね~!」

     生徒たちは動揺した。どう考えても、福沢が今から飛び降りるようにしか見えないからだ。一メートルほどしかない柵を乗り越え、屋上を構成するコンクリートの一番端に立つ。福沢は今日のためにとびっきり可愛いパンツを履いてきたので、下から見上げられることになんの恐れも無かった。
     そして、福沢は皆の予想通り、まもなく飛んだ。海に飛び込むときの女子のようなテンションで、無邪気に中空に飛び込んだのだった。
     きゃっほう、という楽し気な声は、福沢を見上げる観客達の悲鳴でかき消えることとなった。イヤホンをつけていた生徒たちでさえ、周りの異様なようすに気付き振り返ったほどだから、そのどよめきは相当なものだった。
     福沢の軽い体は地球からの引力に無防備に導かれ落下し、まもなく首の縄の限界を迎えてその動きを止めた。縄が頸椎を折り曲げ、福沢の命はその瞬間に失われることとなった。
     福沢はおおむね満足だった。皆が夕日に背を向けて私を見ている!ざまあみろ!一つ不満があるといえば、このショーの感想を観客たちに聞けないことだけだった。
     私のパフォーマンス、どうだった?夕日なんかよりよっぽど綺麗でしょ。
     福沢の死体は、弛緩した体から内容物をすべて垂れ流し、顔はうっ血でまだらで、それはそれは汚らしいものだったという。
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