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    yuruyuru_oni

    @yuruyuru_oni
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    yuruyuru_oni

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    去年のクリスマスに書いたごんみきSS。
    頑張るおにゃのこは大好きです。

    「ただいまー……」
     無人の自宅に響くただいまの声は虚しい。それでも、根付いた習慣は変わらないし、この言葉ひとつで張り詰めていた『アイドルの私』がパラパラと剥がれ落ちていく。
     ベッドルームに入って薄い上着を脱ぎ、ひと息。ひと月近く続いたお仕事デスマーチがようやく終わったのだ、とじわじわと実感がやって来る。
    『今年もクリスマスはぼっちかのぅ』
     ぽつりと呟いたあの人の言葉にハッとしたのが冬の始まり、そしてあの鬼畜マネとの交渉という名の戦争が始まった。
     一切仕事にNoを言わない、その代わりクリスマスに収録のある仕事は断固断る!とのこちらの要求をなんとかマネージャーに呑ませて、それからの仕事はひたすらにアレだった。
     普通の歌番組、ライブの合間に怪我してナンボレベルのえぐいロケ、落とし穴ドッキリ、マキちゃんからの寝起きドッキリ、その他その他……。
    「アイドルって何だっけ?ってちょくちょく思ったなぁ……」
     乾いた笑いが私の口角を痙攣らせる。
     それでも、私はやり遂げた。これで明日と明後日はお休みで、あのひとと初めてのイヴとクリスマスを過ごすのだ。
     仕事の合間にプレゼントも用意した。お料理は無理できないから、オードブルとメインが明日届くように手配した。
     ロケで負った怪我は事情を知った天国の薬屋さんが塗り薬や湿布を処方してくれたので残っていない。『僕は恋する女の子の味方だからね』と前にはマキちゃんをナンパしていた事もあったらしい店主の神様は笑っていたっけ。
     そんな事を思い返しながら、スマホのメッセージアプリを立ち上げ、あの人にメッセージを送る。
    『お疲れ様です。明日のお休みが無事取れたので以前の通りご招待します。……逃げないでくださいね?」
     最後にしっかりと駄目押しして、明日に備えてお風呂に向かう。
     長年かけて捕まえた大好きなあの人と過ごす、初めてのクリスマスイヴ。頭の天辺から爪先に至るまで、ピカピカにしないといけない。乙女の本気を、あの逃げるのだけは達者なずるい人に見せつけないといけないのだから。
    「覚悟してくださいね?檎さん」
     初めてのクリスマス、恋人たちの聖夜。最高の思い出を、手に入れてやるのだ。
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