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    Gym_the2nd

    うらひぎ学園のうちの子/うちよそ/よその子などなど

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    Gym_the2nd

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    麦と元カノと夢の話。事後表現注意。

    少し前に書いたIF日常編のギムかんの話と若干繋がってます。

    ##日常編
    ##異能編

    灰色の雲の中を、必死に羽を傾けながら飛んでいく。鳴り響く雷鳴の響きを頼りに、先の見えない嵐の雨雲を切り裂いていく。甲高い風切り音と激しい雷雨に混じり、身を掠めていく鋼の欠片が自分を包む黒い羽を一枚一枚剥がしていく。どうにかして乱気流に耐え続けていた羽は長く続いた逃避行に耐えかねて、ついには嵐の海を潜っていくように暗雲の下へと沈んでいった。

     火花、光、轟音と悲鳴。眼下で絶え間なく続く争いの波紋をその身で受けながら先を急ぐ。理由は分からない。ただ、急がなければならないという想いだけが、満身創痍のこの身を奮い立たせる。

     地の裂ける音と共に、高く高く昇る爆煙が視界を遮る閉じた瞬膜の向こう。その先に見えたシルエットが、すでに悲鳴を上げていた全身に久方ぶりの高揚を与えた。

    やっと、たどり着いた。█████。あそこへたどり着ければ――

     探し続けた明かりに、思わず意識が緩む。その緩みの隙間を縫うように、パン、と一発の破裂音が響いた。

    「――――――!」

     声が出ない。腹部から背中へと突き抜ける痛み。耐えきれず羽ばたきをやめた身体は、煙たい大気の中を真っ逆さまに落ちていく。

    鈍い衝撃と身を裂くような激痛。深淵へ沈んでいく意識の中、砂利を踏む音が聞こえる。乾いていく瞳が、突きつけられた銃身の先を捉えようと瞼を見開く。

    その先にいたのは――――



    ***


    「空を飛ぶ夢は運気の上昇、だって」

     朝焼けの差し込む薄暗い部屋の中、白く光る画面に向かっていた少女がボソリと呟いた。ベッドに座り込んだまま、情事の名残をくずかごへ放り入れていた麦は、ちらりと少女の方へと目線を移し、その意図を省みること無くベッドへと転がった。

    「ねぇ、麦くん。聞いてた?」
    「……聞いてたけど」

     素っ気ない態度に不機嫌そうな様子の少女は、面倒そうな様子を隠さない麦へと艶やかな肢体を寄せながら問う。

    「もう、話しかけてるのに無視することないじゃない」
    「うるせぇな……大体なんだよ急に」

     しびれを切らして耳元へと声を寄せてきた少女の口元を煩わしそうによけて、気怠そうに寝転がっていた麦はようやく少女へと向き直る。どうにも要領を得ない話し口がどうにも煩わしくて馬耳東風を貫いていた麦は、その意図を探りきれずに眉をひそめる。

    「『最近空を飛ぶ夢ばっかり見るんだ』って、この前麦くん言ってたでしょ? うなされてること多いし、心配だったから」

     ほら、と眼前に突きつけられた携帯の画面を訝しげに見る。どこか胡散臭さを感じさせる薄ピンクのページに大きく書かれた『願望成就』の文字には、過剰なくらい派手なマーカーが引かれていた。
     つらつらと並べ立てられた根拠も中身もない内容を斜め読みして、思わずあきれかえる。こんなもの、不安に駆られた人間が藁にもすがる思いで信じるレベルのもので、今の、麦にそれを信じる理由はない。

    「所詮占いだろ?」
    「信じない人は救われないよ?」
    「顔も知らねぇ神様にヨイショされたって嬉しくねえっての」

     吸い込まれるような赤の瞳から目を逸らすと、麦は肌をさらしたままの肢体にタオルケットを引き寄せる。夢占いなんてロマンにみちたピロートークに乗れるほど夢見がちにはなれない。

    「あのなぁ銀姉、夢見が悪いぐらいで……」
    「『銀子』」
    「……銀子はいちいち大袈裟なんだよ」

     言葉を交えるごとに不機嫌さを増す少女……銀子の顔色をさすがに慮った麦は、少々気圧されながらも言葉を続ける。

    「好きな人の心配するのって、そんなに悪いこと?」
    「『好き』? 最初にフッたの、そっちだろ」
    「『一緒に暮らせない』って思っただけ。麦くんは今でも好きだよ?」
    「……訳わかんねぇ」
    「わかんなくていいよ」

     布団の下から回された細腕の温度に応えるように、骨張った腕を背へと回す。胸元に寄せられた唇から漏れる寝息を確かめると、麦は視界に広がる若草色を眺めながら、静かに瞼を閉じた。


    ***

    若草色の髪、赤くぎらついた瞳。

    はっきりとした死の予感を感じたあの夢の中で、銃を突きつけていた女。
    光を失ったその瞳の持ち主を、俺だけが知っている。
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    Gym_the2nd

    DONE異能編の野漆先生が自分語りをするそうです。昔話をしましょうか。私の昔話ですよ、つまらないかもしれませんけれどもね。

    当時はまだ異能力がようやっと世間に認知され始めた頃でした。
    どれほどの脅威なのか、どのような機序で、どのような人間に宿るのか、それが何者であるのか。それすらもわからず、持たざる人間共が勝手な妄想を振りかざして持つ者を弾圧する行為が正当化される。そんな愚かしい時代でした。

    とても幸いなことに、私は生まれた時から持つ者の側でした。あらゆる気体を、とりわけ構造的に不安定な気体を生成する力。私は、私の力を愛していました。それ故に、私は学生の折にこう思いついたのです。すなわち、「私の力を世に広めたい。持たざる哀れな者達に、この素晴らしき力を分け与えてやりたい」と。

    大学で解剖学を学び、国立の研究所に就職した私は、手始めに路地裏のチンピラを雇いました。
    私の研究に関わらず、異能力の研究は人間の検体が大量に必要です。何せ、地球上で異能力を扱うことが出来るのは一部を覗いて人間だけですからね。
    とにかく、当時の私には可能な限り損傷の少ない遺体、欲を言うなら生きた非異能者が必要でした。大概、こういう時に頼るべきは病院、葬儀屋、 2775

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    Gym_the2nd

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    少し前に書いたIF日常編のギムかんの話と若干繋がってます。
    灰色の雲の中を、必死に羽を傾けながら飛んでいく。鳴り響く雷鳴の響きを頼りに、先の見えない嵐の雨雲を切り裂いていく。甲高い風切り音と激しい雷雨に混じり、身を掠めていく鋼の欠片が自分を包む黒い羽を一枚一枚剥がしていく。どうにかして乱気流に耐え続けていた羽は長く続いた逃避行に耐えかねて、ついには嵐の海を潜っていくように暗雲の下へと沈んでいった。

     火花、光、轟音と悲鳴。眼下で絶え間なく続く争いの波紋をその身で受けながら先を急ぐ。理由は分からない。ただ、急がなければならないという想いだけが、満身創痍のこの身を奮い立たせる。

     地の裂ける音と共に、高く高く昇る爆煙が視界を遮る閉じた瞬膜の向こう。その先に見えたシルエットが、すでに悲鳴を上げていた全身に久方ぶりの高揚を与えた。

    やっと、たどり着いた。█████。あそこへたどり着ければ――

     探し続けた明かりに、思わず意識が緩む。その緩みの隙間を縫うように、パン、と一発の破裂音が響いた。

    「――――――!」

     声が出ない。腹部から背中へと突き抜ける痛み。耐えきれず羽ばたきをやめた身体は、煙たい大気の中を真っ逆さまに落ちていく。

    鈍い衝撃 1734

    Gym_the2nd

    DONE異能編の野漆先生が自分語りをするそうです。昔話をしましょうか。私の昔話ですよ、つまらないかもしれませんけれどもね。

    当時はまだ異能力がようやっと世間に認知され始めた頃でした。
    どれほどの脅威なのか、どのような機序で、どのような人間に宿るのか、それが何者であるのか。それすらもわからず、持たざる人間共が勝手な妄想を振りかざして持つ者を弾圧する行為が正当化される。そんな愚かしい時代でした。

    とても幸いなことに、私は生まれた時から持つ者の側でした。あらゆる気体を、とりわけ構造的に不安定な気体を生成する力。私は、私の力を愛していました。それ故に、私は学生の折にこう思いついたのです。すなわち、「私の力を世に広めたい。持たざる哀れな者達に、この素晴らしき力を分け与えてやりたい」と。

    大学で解剖学を学び、国立の研究所に就職した私は、手始めに路地裏のチンピラを雇いました。
    私の研究に関わらず、異能力の研究は人間の検体が大量に必要です。何せ、地球上で異能力を扱うことが出来るのは一部を覗いて人間だけですからね。
    とにかく、当時の私には可能な限り損傷の少ない遺体、欲を言うなら生きた非異能者が必要でした。大概、こういう時に頼るべきは病院、葬儀屋、 2775