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    甘味。/konpeito

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    本日の800文字チャレンジ
    付き合ってないクロリン/Ⅳ後/ハンドケア

    「んっ、なんだ?」
     手を洗った途端、指先に痛みが走った。石鹸を洗い流し、タオルで水気を拭き取ってから改めて観察してみると案の定、指先にささくれをいくつか見つけた。
    「ああ。これのせいか。傷薬……、は要らないな」
     とっさに分校内にある医務室へ行くか迷ったものの、ささくれ立った指先に出血は認められず、そのまま手袋をはめ直した。
     乾燥する季節にはよくあることだ。わずかに刺すようだった痛みも、慣れてきたのか次第に薄れていった。
    「こーら。お前またなんか隠してるだろ」
    「クロウ、またこっちに来ていたのか」
     放課後、格納庫に立ち寄るとクロウに出迎えられた。予想外の邂逅についつい頬が緩む。
    「そんなことよりお前だよお前。下手に隠し立てするようなら、裸にして全身チェックしてやるからな」
    「そんな大袈裟な。少し、指先が荒れているだけなんだ。気にしないでくれ」
     なんでもないと言い張るリィンなんてお構いなしに、見せてみろと手を引かれた。
     無駄な抵抗は諦め、ソファに並んで腰を下ろす。彼の手で手袋を剥かれ、荒れた指先が晒された。手を取られて入念に検分され、どうにも居心地が悪い。
    「こんな些細な傷でも、剣を握れば影響が出るもんなんだぞ。それくらい分かるだろ。気をつけろよ」
     似合わない説教をしながら、指の一本一本へハンドクリームを塗り込めていくクロウに微苦笑が溢れた。軽く眉を上げた彼に無言で問われる。
    「その、学院祭前にギターの練習をしていたときも同じようなことを言われたなって」
    「そりゃあ、痛いの我慢して演奏したって楽しくないだろ」
    「それは、そうなんだが」
     指先の、爪の周囲を丹念に撫で擦られて次第に彼の体温が手に馴染んでくる。身を預けたくなる心地よさに、ほう、とため息が出た。
    「ほら、きれいな手してんだから大事にしろよ」
     手の甲にクロウの唇が寄せられた。手袋をつけ直され、終わりだと彼の手が離れていく。
    「俺は、クロウの手のほうがかっこよくて好きなんだが」
     彼の温もりが残る手を名残惜しく撫でた。
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