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    甘味。/konpeito

    800文字チャレンジだったりssを投げる場所

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    本日の800文字チャレンジ
    クロ+リン/移り香/Ⅳ後くらい

    「リィン教官、昨日はクロウさんが来てたんですか」
    「ああ、そうだ。よく分かったな」
     授業を終えてリィンの元へ質問をしに来ていたユウナが鼻を鳴らしている。てっきり昨夜の酒が残っているのかと口元を覆うも、すぐさま否定されてしまい困惑する。
     彼女の言う通り、昨夜はふらりと訪ねてきたクロウと取り留めのない話を肴にして、翌日に響かない程度の酒を飲み交わしていた。最終列車がなくなったからと自室に転がり込んできた彼と文句を言い合いながらもひとつのベッドで夜を明かしはしたものの、職場で酒の匂いをさせたくないリィンは早朝から宿舎で風呂を浴びてきていたのだった。
     酒が残っていないとなると、なぜクロウが来ていたのをユウナが知っているのかという疑問が残る。
    「だって香りが――んぐっ」
     突然、ユウナの口が塞がれる。彼女の背後からミュゼが顔を出した。
    「ユウナさんは少しお口を閉じていましょうか」
    「教官もお気になさらず」
    「あ、ああ」
     ミュゼに続いてアルティナも現れ、ユウナを連れて廊下へと姿を消してしまった。
     香り。ユウナの言葉に引っ掛かりを覚え、ついつい己の袖に鼻先を寄せた。石鹸の香りがする程度で、これといって気になる香りはせず、首を傾げるしかない。
    「その顔、全然分かってねえな。こりゃどう考えても重症だろ」
    「アッシュ」
     クルトの咎めるような声が割り込む。それに怯んだ様子も見せず、アッシュは続けた。
    「つまり、自分じゃねえ香りが移ってるのにも気が付けないくらい、その香りが馴染んじまってんだろ」
     リィンを肩を叩いたアッシュは楽しげに笑っている。そのままクルトを伴い、教室を出ていった。
     生徒の誰もいなくなった教室でひとり立ち尽くす。もう一度、袖に鼻先を埋めた。意識をすればようやくそれに気がつく。
     爽やかな香りの奥に、深みのある香りが広がるそれは、まさしくクロウの愛用している香水の香りだった。
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