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    甘味。/konpeito

    800文字チャレンジだったりssを投げる場所

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    本日の800文字チャレンジ
    ジクリン(クロリン)/Ⅲ途中/届かない想い

    歓楽都市ラクウェルは、夜でも賑やかさを失わない。
     リィンは昼間に西の渓谷で遭遇した傭兵団や、別勢力らしい傭兵らの調査するため、この地へ舞い戻っていた。調査に同行してくれたアンゼリカやサラ、途中から合流したクレアとともに情報収集して回っていた、そのときだった。
    「すみません、ちょっと」
     見知った気配を察知して居ても立っても居られずに駆け出す。背後から聞こえた、サラたちの慌てるような声に気を配る余裕なんてなかった。
     飛び込んだ路地裏の奥、暗闇のなかに浮かび上がった背中を捉える。
     リィンの記憶と酷似するその背格好に特徴的な銀髪は、改めて見てもクロウにしか見えない。しかし彼はこの腕のなかで息を引き取った。もう一年以上前の話だ。
     目の前にいるこの男はクロウと別人だと理解しても、彼を求める心がそれを否定する。
    「やはりお前か。《蒼》のジークフリード」
     かけた声に振り返った彼は、こちらへ興味を示すことなくふたたび歩み出してしまった。
    「待て!」
     縋るように肩を掴む。手のひらから伝わってくる、機械に触れたような彼の体温に怯んだ。
    「お前は今、俺に構っている場合ではないと思うが?」
     仮面の向こうから冷徹な瞳で見下ろされ、彼を掴んでいた手が行き場を失う。それでも距離をとるように下がられれば、追いかけずにはいられない。彼の襟を掴み、押し付けるだけのキスをした。離した唇は冷たく、無感情な眼差しが突き刺さる。
    「それで満足か」
     掴んだ襟から剥がされた手を、もう一度彼に伸ばす理由は見当たらない。彼の薄い唇が、リィンを突き放した。
    「……その悪趣味な仮面、絶対に剥いでやるからな」
    「それは楽しみだ」
     抑揚のない声に歯軋りをする。
     追いかけてきたらしいサラたちの声に振り返った瞬間、彼の気配が溶けて消えた。慌てて前に向き直ったリィンの前には、暗澹とした路地裏だけが残っていた。
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