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    おいなりさん

    カスミさん……☺️

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    おいなりさん

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    ブラライ後の☀️👤

    ##真スミ

    「カスミはさ……誰が一番カッコよかった?」

    クッションに顔を埋めたまま、丸くなった真珠がそんな風に呟いた。
    耳を真っ赤にして、首まで紅潮させて、聞きたい気持ちと聞くんじゃなかったという後悔が綯交ぜになったように丸くなった背中は、それでも懸命にたった一つの答えを求めている。
    期待に応えるのは容易いだろう。
    真珠を喜ばせるのは自分にとっても嬉しい事だ。
    けれど、聞かれているのはあくまで真摯に自分の中でどうだったかという事だから、正直に答える事にした。

    「そうッスね〜、自分としては、ケイと晶ッスかね〜、選ぶのは難しいッスけど、どちらかと言うと……うーん、晶ッスかね」

    クッションに突っ込まれた頭がさらに深く沈み込み、その奥の奥の奥の方から、ゔぅ、と呻き声が聞こえる。
    やっぱり聞くんじゃなかった、なんて言葉が全身から溢れ、器用に狭いソファの上をコロコロと転がっていく。
    端っこまで辿り着くと、自分と大差ない身長差とは思えないくらいに小さく収納された真珠の身体は、外敵から襲われたダンゴムシのようにも見えてきて、ほんの少しだけ笑ってしまった。

    「真珠」

    ソファの背もたれに片肘をつき、もう片方の手で真珠の身体を撫でる。
    触れた瞬間、びくりと一瞬身体を強張らせていたけれど、それもすぐに解れ、丸まっていた真珠の足や背中もちょっとずつ伸びていく。
    クッションの中では何やら恨み言のような事を言っているようだったが、小さすぎて良く聞こえなかった。
    ずっとこのままでも面白くていいのだが、恨み言に混じって鼻を啜るような音も聞こえてきては流石に可哀想になってきた。
    フォロー、というわけではないけれど、折角なのでもう少し言葉を続けてみることにした。

    「真珠。誰が格好良かったかって聞かれると、さっきの二人になっちゃうッスけど、自分は、真珠が一番好きッスよ」
    「……どゆこと」
    「優しくて柔らかい声も、弾けるような笑顔も、元気に飛び跳ねる姿も。誰が一番好きだった?って聞かれたら、迷わず真珠って答えるッス」
    「カッコよくはないってこと?」
    「うーん、カッコよさだけを取り上げたら、あの二人には敵わないって事ッス。真珠もカッコいいけど、あの二人は飛び抜けてカッコいい、みたいな?」
    「……ふーん」
    「ふふ、怒っちゃったッスか?」
    「別に」

    鼻を啜る音も、恨み言も止まった。
    けれど、真珠の声にはまだ不貞腐れた雰囲気が残っている。
    そういう所が、なんて言うと余計拗ねそうだから言わないけど。

    「.……ねぇ、カスミ」

    暫くの沈黙の後、真珠がクッションの下から小さく話しかけてきた。
    はい、と返事をしつつ、内心ではにんまりと笑ってしまう。
    きっと真珠は、こういうだろう。

    「誰が、一番好きだった?」

    そして、自分はそれにこう答える。

    「真珠ッス」

    クッションから漸く覗いた蜂蜜色の瞳はしっとりと潤んでいたけれど、期待に満ちた強い光で此方を見上げていた。

    「カスミの、好きな人は」
    「真珠ッスよ」
    「おれのこと、好き?」
    「もちろん」
    「それじゃやだ」
    「真珠が好き」
    「……恋人として、すき?」
    「恋人としても、パフォーマーとしても、シンガーとしても、真珠が一番好きッスよ」
    「……へへ、うれし……」

    溢れる笑顔。
    床に落ちるクッションを目で追っていると、視界は真っ青になり、唇に柔らかい温もりが触れる。
    そのまま抱き上げてベッドに向かうと、真珠の目はもう蕩けていた。

    「……カスミ」
    「今日はキスだけ。もう眠いって顔してるッスよ」
    「んー……でも……」
    「真珠が寝るまで、抱き締めて、キスしてあげるッスから。ね?」
    「……うん」

    疲れ切った身体を撫でながら、額に、鼻の先に、頬に、顎の先に、口付けを落としていく。
    そうしている内にすっかり閉じられた瞼の奥では早速何かの夢を見ているようで、もにょもにょと動く真珠の口は、柔らかく弧を描いていた。
    そんな幸せそうな寝顔を見ていると、なんだかこっちまで眠くなってしまう。

    「お疲れ様、おやすみなさい」

    また明日。
    そう呟く頃には、自分もすっかり意識を手放してしまっていた。


    end.
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