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    おいなりさん

    カスミさん……☺️

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    おいなりさん

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    あめのよる。

    ##真スミ

    降り頻る雨の中、その音をBGM代わりに本を読む。
    薄い紙に敷き詰められた沢山の文字。
    それがブレるのと同時に、背中に温もりを感じた。

    「カスミ、何読んでるの」
    「真珠が歌う曲の原典ッスよ」
    「ふーん……」

    興味無さそうに吐き出され首筋を撫でた息は、風呂上がりのせいか温度が高く少し湿っていた。
    ぽつりと肩に落ちた水滴は冷たかったけれど、ぎゅ、と腹の辺りを掴む手の力が強まり、背中の体温は上がっていく。
    ゆっくり、じんわりと。

    「眠い?」
    「うん」
    「それじゃあ、寝るッスかね」
    「やだ」
    「眠いのに?」
    「カスミともっとイチャイチャしたい」
    「ふふ、それじゃあベッドに行きますか」
    「んー……うん」

    パタンと本を閉じ、真珠を張り付けたまま移動する。
    寝室、ではなくて、洗面所へ。

    「あれ、ベッドじゃないの?」
    「その前に、ちゃんと髪乾かさないと」
    「……はい」

    素直に背中から離れた真珠の髪の毛をタオルで拭きながらドライヤーの風を当てる。
    乾いた髪はいつものようにするすると指の間を滑り、蛍光灯の光を反射して綺麗な輪を作っていた。

    「はい、終わったッスよ」
    「ありがと、カスミ」
    「で、また抱き着くんスか?」
    「……ダメ?」

    ちら、と見上げる蜂蜜色は、こういう時に限って瑞々しく煌めくのだから敵わない。
    苦笑いで誤魔化して、歩き辛いからとお尻に手を回して抱き上げると、真珠の素っ頓狂な声が聞こえて少しだけ胸がすいた。
    ベッドに着いて、真珠を降ろして、その横に自分も寝転んで。
    額にキスをすると、こっちにも、と突き出す唇は可愛らしくて目眩がするくらいに甘い。

    「今日はキスだけ?」
    「明日起きれなくなるッスからね」
    「……じゃあ、もっとキスしていい?」
    「ダメ」
    「キスだけ」
    「だぁめ、そう言ってこの間も」
    「お願い、カスミ」
    「ん、だめ、ンンッ」

    ダメと言っても聞かないクセに、何でわざわざ聞いてくるんだろうか。
    窓の外を打ち付ける雨の音が遠く聴こえる。
    絡み付くやわらかい熱に腹の底までくすぐられているような気がして全身を震わせながら、ぼぉっとしている頭で考えていた。
    明日、朝から映画を観に行く予定は、きっと雨水と一緒に流れて行ってしまうだろうな、と。

    end.
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