後日談2 昼は人の姿に、夜は獣の姿に。
今の雑渡は、人と獣の間を往復する存在だ。女神の神託は半分しか実現しなかった。それは、伊作が雑渡に愛したせいかもしれない。
七夜六日に亘って半獣半人の雑渡と交わり、人心を与える。ここまでが伊作の使命だった。だが、本当の目的は暴君を名君にするための人智を越えた家来を作り出すためだった。
伊作の話を一通り聞き入った雑渡は、それではおまえと離れ離れになってしまうねと呟いた。
その通りだ。小さな村の医者見習いでしかない伊作は、城に仕えることになる雑渡とは身分違いとなる。こんなふうに一緒にいることはもう不可能だろう。
だからといって、伊作は自分を生贄に差し出した村にひとりで帰ることも考えていなかった。お世話になった新野先生や可愛がっていた伏木蔵に、何も告げずに別れるのは心残りだったが。
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