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    SKR_Hajime12

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    SKR_Hajime12

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    まじで書きかけ、書きたいところだけ。結構文字数増えてしまったのでぽい。これ漫画で読みたい、誰か描いて。

    地獄「夏油さん!」
    「どうしたの伊地知」
     授業の最中、慌てた様子で伊地知が飛び込んできた。板書の手を止め振り返る夏油。只事ではない様子に、虎杖、伏黒、釘崎も伊地知の方へと顔を向ける。
    「授業中に申し訳ございません。突如特級呪霊が発生し…一般人に被害が出ております」
    「動ける特級は私だけか、了解」
     素早く状況を把握した夏油は、手にしていた教書をぱたりと閉じた。生徒に自習を指示し、伊地知に向き直る。
    「場所は?」
    「都内の○○病院です」
    「ッ⁉︎」
     ガタリ。大きな音を立て、伏黒が立ち上がる。伏黒の表情は青ざめ、僅かに身体が震えていた。
    「伏黒?」
    「ちょっと、どうしたのよ」
     明らかに様子のおかしい伏黒に声をかけるも、伏黒は動揺しているのか答えない。生徒の普段とは異なる様子に夏油も眉を顰める。
    「恵、どうした」
    「……その、病院に、……兄が……」
    「っ!」
     絞り出された声に全員が息を飲む。聞けば、ここ最近体調を崩していた兄が、その呪霊被害の出ている病院に先日から入院している、とのことだった。
    「……恵、悠仁、野薔薇。三人も来てくれるかい。私のサポートだ」
    「了解!」
     大丈夫だ、そう伝えるように伏黒の背中を二人が叩く。顔色が悪いままの伏黒も、こくりと頷いた。
     
     病院に着くと、既に周りに帳が下りている。病院内には未だ取り残された一般人も残っているらしい。被害の大きさに舌打ちする。
    「まずは逃げ遅れた人優先。見つけたらすぐに避難させること」
    「応!」
    「特級と対峙したらすぐに連絡。連絡用の呪霊を一体ずつ付けておくから。深追いはしないこと!」
    「了解!」
     同時に病院内へ乗り込む。まだ領域は展開されていない。羽化直後なのだろう、不幸中の幸いだ。
     院内を進む。ところどころ壁が壊され、ベッドやシーツがぐちゃぐちゃになってしまっていた。
     ふと、ひび割れた壁の向こう。何かが動く気配がある。じっと目を凝らしても呪霊のような呪力は感じられない。となれば、逃げ遅れた一般人か。
    「───そこか」
     ドゴ、壁を蹴破る。その中には複数の一般人の姿があった。幼い子供数人と、その子達を庇うように立つ、白い青年の姿。
    「────ッ⁉︎」
    「ぁ、……」
     白い青年とばちり、視線が合う。青い、空のような、宝石のような瞳。その瞳を見た瞬間、夏油はまるで時間の流れが止まったように感じた。違和感。──何故?
     初めて見たはずだ。こんな特徴的な目を忘れるわけがない。彼とは初対面のはずなのに、夏油が感じたのは「懐かしさ」だった。

     彼は誰だ。私の何だ。 
      
    「──兄さん!」
     はっと現実に引き戻される。いつの間にか夏油に追い付いていた伏黒が白い青年に駆け寄る。青年は伏黒を見て、「恵」と呟いた。
    「怪我は?」
    「ないよ。大丈夫」
    「っ、良かった……」
    「心配してくれたの?大丈夫、恵が来てくれるってわかってたから」
     そう言いながら穏やかに笑う。その表情にひどく違和感を感じて、夏油はその場から動けずにいた。
     
     
     
    「伏黒のにーちゃん、無事で良かったな」
    「ふふ、ありがとね悠仁」
    「あれ?俺名乗ったっけ?なんで名前…」
    「…恵から聞いてたんだよ。いつも話に出てくるからね」
    「そういや伏黒、任務なければ毎週実家に帰ってるわよね。アンタもしかしなくてもブラコン?」
    「うるせ」
     事後処理について伊地知に指示を出してから辺りを見渡すと、遠くの方で一年の三人と伏黒の兄が話しているのを見つける。その様子を遠目に見ながら、夏油は先程感じた違和感を拭い切れずにいた。ざわり、胸騒ぎがしている。彼の表情が、声が、仕草が。夏油の「何か」を刺激する。
     衝動を抑えられず近寄る。人の気配に気付いたらしい彼が振り返った。空色の瞳が夏油を映す。
    「あの、」
    「あ……えっと、恵の担任の先生、ですか?」
     伏黒の兄に話しかけると、彼は驚いた様子を見せながらもそう言った。
    「伏黒くんの担任を勤めている、夏油です」
    「ご丁寧にどうも。……恵の兄です」
     にこり、微笑む。
    「まさか自分が被害に遭うとは思っていなくて…恵も連れて、駆けつけてくださったんですよね。ありがとうございます」
    「いえ、何事もなくて良かった」
    「原因を知っていても僕は対処ができないので。一緒にいた子供達も無事だそうです、皆さんのおかげですね」
     対処ができない、その一言に眉を顰める。
    「…貴方は呪いが見えていないのですか?」
    「ええ、どうやら適性がないみたいで」
     言ってからふと、何故、こんな質問をしたのだろうと疑問が浮かぶ。彼にも呪力があるはずだと、無意識のうちにそう思ってしまっていたらしい。
    「僕は見えないのですが、恵が見ている物を僕は信じているので」
     真っ直ぐに伏黒を見つめる。その瞳は信頼と期待に満ちていた。夏油の知らない横顔。
    (………あれ、)
     夏油は首を傾げる。彼とは初対面のはずなのに、何故「知らない」と感じたのか。
     ずっと不思議な感覚が続いている。まるで彼とは気の知れた仲のような、そんな気がしてならないのだ。今日初めて会ったというのに。 
    「兄さん」
     その声に振り向くと、伏黒が口をへの字に曲げた状態で立っていた。明らかに不機嫌です、という顔をした伏黒。一体何故。
    「何?恵」
    「何って、あんた入院してるレベルで体調崩してんだろうが、帰るぞ」
    「大丈夫なのに心配性だよねぇ恵。そもそも明日には退院予定だったっての」
    「兄さんの大丈夫は信用してない」
    「………。はいはいわかったよ……では夏油先生、失礼します」
    「あ、……」
     ぺこりと頭を下げた伏黒の兄が立ち去っていく。引き止めようとして、しかし口を噤んだ。これ以上何を話すと言うのだ。
     彼の隣に伏黒が並ぶ。隣にいるのがどうして自分ではないのか。そんな疑問が浮かんで消えた。
     
     
     
     
     禪院家と五条家の定期会合。お互いの連携を図るためとは言うが、要は腹の探り合いだ。
     禪院甚爾は早々部屋を抜け出し、五条家の中を歩き回っていた。見つかれば騒がれそうだが、生憎この屋敷の中では甚爾は透明人間も同然だ。誰に見つかることもなく闊歩する。
     ふと、廊下の不自然なところに扉があることに気付く。この先に良くないものがある、そう感じながらも好奇心を抑えられず、そっとその扉を開いた。
    「こんにちは」
    「っ…、よう、」
     扉の先には一つの部屋があった。座敷牢、そう呼ばれるに相応しい部屋。その中に白い子供がちょん、と座っていた。
    「こんなところまで何の用?」
     こてり、子供は首を傾げる。仕草こそ小さな子供のそれだというのに、雰囲気が、口調が、何とも言えない違和感を作り出している。
     こいつは何者だ。僅かに身構える。
    「家の人はこんなところに寄り付かないもの。一体何の目的で来たの?」
    「……………、散歩だ」
    「人の家で?」
     何それ、からからと子供は楽しそうに笑った。
    「お前はここで何してんだ」
    「何って、ここは僕の部屋だもの」
    「この牢がか?」
     子供がいるには不自然な部屋だ。
    「ま、呪術の名家に生まれたのに呪力がないからね、僕。いじめられてんの」
     ひくり、顔が引き攣った。甚爾と同じだ。ただ呪力がないだけで迫害される。
     
     じっと、青色の瞳が甚爾を捉える。
    「おじさん、強いでしょ。今この家にいる誰よりも。おじさんが一番強いよ。……ねぇ甚爾、」
     ごくり、生唾を飲み込む。喉の渇きが潤うような、満たされていくような感覚。
    「……お前、なんで俺の名前、」
    「………、ふふ」
     名乗った覚えはない。なのにこの子供は簡単に己の名を口にした。
     
     
     
     
    『傑!』
     眩しいほどの笑顔の彼が手を振る。
     あの頃はただ楽しかった。二人でいれば何だってできた。何にも負けなかった。お互いは対等な存在だった。──ずっとそう思っていた。
    『だって俺達、二人で───』
     ぱちり、目が覚める。いつもと変わらない自室の天井。頬が濡れた感覚があって手を伸ばす。……泣いている。
     ただひたすらに明るかった青い春。彼は今、自分の隣にはいないと言うのに。ああ、夢と呼ぶにはあまりに鮮明な。
     これは、私の記憶だ。
     

     
    「───悟!」
     その声に反応した彼が振り返る。驚きに見開かれた目。唇が僅かに「すぐる」と動いたが、それが音になることはなかった。
     
     こんなとこで立ち話もあれだから、と近くにあった喫茶店に入った。それぞれコーヒーとミルクティーを注文する。飲み物が運ばれてくるまで、二人の間に会話はなかった。
    「で、何の用?」
     先に口を開いたのは五条だった。
     
    「その様子だと、思い出したの?」
    「……そう、なんだ。何度か夢を見て。何もかも同じ世界なのに、君が隣にいないことが不思議でしょうがなくて。だから、もう一度会いたかったんだ」
    「ふぅん」
     角砂糖を二つカップに投げ入れ、ティースプーンでくるくるとかき混ぜながら言う。
     
    「悟、君は本当に呪力がないのか?」
    「うん。見事なくらいに今の僕は非術師だよ。お前が言うところの猿ってわけ」
    「………」
     
    「お前も気付いたでしょ?」
     窓の外、遠くを見つめながら五条が言う。
    「全部、僕のせいだ」
     五条悟が生まれたから。全ての均衡が崩れたのだ、と彼は語る。
    「僕が『最強』じゃなくなっただけ。それだけで世界はこんなにも上手くいく」
     天元と星漿体の同化は滞りなく済み、灰原も死なず存命のまま。呪霊も勢いを増すことはなく、呪術師が命を落とすなど稀なこと。
     
    「ここはお前の理想郷だよ。仲間達がただ浪費されることもない。……最強なんて必要ない」
     そんなことはない、そう言おうとして口を噤んだ。事実、この世界で夏油は離反しなかった。非術師に憎しみを抱くこともなかった。どう考えても平和な世界だった。
     そんな夏油の様子を見て、五条は困ったように笑う。頬をつき、穏やかな声で夏油に告げた。
    「思い出しちゃったのは不幸だけどさぁ、お前も前向きなよ。楽しそうじゃん、皆生きてて、親とか殺すこともない。絶対、前の世界よりこっちの世界の方が幸せだよ」
     
    「お前が言ったんでしょ。最強じゃない僕は、もう五条悟じゃないんだよ」
     ──だからもう、五条悟最強の幻影に囚われなくて良いんだ。
     そう言って五条は目を伏せた。ゆらり、揺れるカップの水面を見つめている。
     沈黙。夏油は何を言うべきか迷い、何も言えない。何も言葉にならない。五条もカップを見つめたまま何も言わない。
     その静寂を引き裂いたのは五条のスマホだった。通知音に彼がスマホの画面を開く。届いたメッセージを確認し、半端に残ったミルクティーをぐいと飲み干し、伝票を手にして立ち上がった。
    「んじゃ、迎え来たしもう行くね。バイバイ」
    「え」
     どうして。その言い方は、まるでもう二度と会うつもりはないような、そんな突き放し方だ。慌てて彼の腕を掴む。きょとんとした彼に何と言うべきかわからず、ただもう一度「どうして、」と呟いた。
    「どうしてって…もう僕と関わんない方が良いでしょ、お前は」
     
    「僕はまたお前が笑えなくなんの嫌なの。今まで上手くいってたじゃん、だからこれで終わり」
     じゃあね、恵とか生徒のことよろしく。
     そう言って立ち去る背中に手を伸ばし、しかしその手は彼に届かない。店の外へと出ていく背中をただ呆然と見つめながらその場に立ち尽くす。
     終ぞ、彼は己の名前を呼ばなかった。それが悲しかった。
     
     店を出て、道路沿いに停められた車に近付く。振り返ることはしなかった。これ以上目が合ってしまえば、みっともなく彼に縋ってしまいそうで。
     車に寄り掛かりながら立っている男──甚爾が顔を上げる。
    「坊」
    「甚爾」
    「良かったのか?」
     何が、とは聞かない。甚爾のこういうところが好きだった。踏み込み過ぎず、かと言って放置することもなく。その距離感が有難かった。
    「…良いんだよ」
     傑が今、笑えているならそれでいい。
     
     ──この痩せ我慢が。
     甚爾は小さく呟いた。
     
     
     
     
    「もう一度会って、それでどうするつもりですか」
    「っ」
     伏黒の強い言葉に一瞬怯む。感じたのは敵意。彼にこのような目を向けられたことは今までなかった。
    「アンタのせいで苦しむをずっと見てきました」
    「……、君は、」
     伏黒悟を「五条」と呼ぶ。そんな人間はこの世界にはいない。だというのに、彼はそう呼んだ、ということは。
    「あの人をまた苦しめるなら、俺はアンタが俺の担任だろうと容赦しません」
     鋭い眼光。
    「俺は。俺は、今度こそあの人に幸せになってもらいたいだけだ」
    「…………」
     
     
    「とうじ」
     虚な目が甚爾を映す。目が合っているようで合っていない。
    「…とうじ、」
    「駄目だ」
    「ころして」
    「………」
     懇願。
     
    「おねがい、しにたい、」
    「…もう寝ろ、坊」
    「ねぇ……」
     こちらの言葉は届かない。ふらふらと甚爾に近寄り、服を掴む。縋り付くその手は弱々しい。
    「なんで、」
     くしゃり、顔が歪む。今にも泣き出しそうな、迷子のような表情。
    「なんで、ころしてくんないの…」
     ひどく細く、頼りない声。普段の彼の様子からは想像もつかない。
     
     ガタ、ふいに廊下の方から小さな音が響く。驚いた甚爾がそちらに顔を向けると、扉の隙間から深い緑が覗いた。
    「っ恵、お前、」
    「あ、……」
     暗闇の部屋でもわかるほど、顔を青白くさせた己の息子。気配に気付いた悟がゆっくりと振り返り、その目に義弟を映した。
    「めぐみ」
     空っぽな声。呼ばれた彼はびくりと肩を跳ねさせる。
    「めぐみでもいいよ」
    「にい、さ…」
    「ころして」
     ひゅ、息を飲む音。恵は青褪めたまま目を見開いている。
     
    「………、すぐる、」
     つう、一滴の涙が頬を伝う。そしてそのまま、悟は意識を失った。
     
     
     
    「……おい、」
    「昔からだ」
    「っ……」
    「時々こうなる。…酷くなったのはアイツと再会してからだな」
     アイツとは誰か。それを恵はしっかりと理解していた。
    「こうなったら落ち着くまで宥めるしかねぇ」
     さらり、綺麗な白髪を撫でる。


     家入、七海、灰原と円になって。楽しそうに笑う夏油の姿。
     ───そうか。
    「僕が、いなくてもよかったんだね」
     眩しいものを見るように目を細める。
     
    「坊、お前、」
    「……、ただいま…」
     悟は、全てを諦めたような、そんな顔で笑っていた。 
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