北町奉行所御用控 荒川筋夜鷹怪死一件顛末
近頃、荒川筋において、若き夜鷹のむくろ、度々見出されるようになり候。奉行所にて不審に思い、手先の者を川辺に配し、密かに見張らせしところ、数日後の夜、若い女の悲鳴が聞こえ候。目明かしどもが駆けつけ候えば、茣蓙の上にて中年の男が夜鷹に馬乗りになり、揉み合ひており候。
手先の者、その場にて男を捕縛し奉行所に引き立てて吟味を遂げしところ、本所に住む蘭方医、石井宗謙と申す者にて候。同人は仁医として名高き者なれど、南蛮渡来の注射器という道具を用い、多くの夜鷹を毒殺しておりしこと、明らかになり候。
お上の取り調べに対し、宗謙は「夜鷹どもは皆、世に害をなす梅毒者なれば、取り除くは医師の務めなり」と頑なに言い立て候。
本来ならば獄門に処すべき重罪なれど、殺されし者どもが夜鷹という下賤の身分なりし故、御慈悲を以て罪一等を減じ、遠島に処せられ候。
なお、いよいよ島送りの船が出帆せらる当日には、これまでの療治を深く徳といたし候あまたの病家ども、船着き場へ群集いたし、名残を惜しみ見送りに来たりし由に候。
この一件は、今なお町々にて取り沙汰尽き申さず候。

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