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    suika_disuki

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    suika_disuki

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    黒髪反社マイキーとにょたミチの話し

    反社の男とその女俺はしがないコンビニ店員。モブ田。
    普通に生きていたら普通の会社に入り、普通に結婚して、普通に子供ができると思っていた。なのにもう30後半で未だコンビニバイトだ。
    普通に普通を手に入れるのは、普通に難しいものだった。
    それはさておき、このコンビニは辺鄙な場所にある。駅から遠く、大通からも遠い。しかし周りは民家に囲まれ強盗は来にくい場所だ。あと町内会が設置した防犯カメラはこの店の出入口をバッチリ写しているので、そういう犯罪者は死角を知っているのでここは入りにくいので安全だった。
    こんな環境で、夜はほぼ人が来ない。
    時折深夜残業した老若男女がふらりとやってくる程度。
    そんな平和なコンビニだが、個人的にやばいお客さんが2組ある。
    1人は普段は良い人だが、明らかに酒を飲んでる時はヤバい男。
    どうやばいかって?酒が入ると人が変わるタイプというやつだ。
    いつもは丁寧で、子供がいるらしく連れてる姿は優しいお父さんだが、酔ってる時は人が変わる。粗暴な振る舞いと攻撃性がとても上がる。
    1度胸ぐらを掴まれたし、お前は底辺で人生負け組の糞、なんて言われた。
    言い返せず、彼が帰ったあと1人バックヤードでこっそり泣いた。
    もう1組はヤの付く男とその女だ。
    日替わりで変わる黒い高そうな車でやってくる。多分抜け道として使われている。この区画は1車線だが信号もなく深夜は大通りから迂回するより突っ切る方が早い。この道の先には高級マンションがある。初めて高級車が駐車場に止まった時は驚いた。
    そこから降りてきた人にも驚く。
    1人は金髪ベリーショートでふわふわくせっ毛、巨乳の女の子。空色の目が可愛いかった。半パン半袖クロックスというラフな服。1人は長髪黒髪、派手な3Pスーツのやたら黒く見える目が特徴の男。明らかにただの金持ちではない、だった。だって車以外に運転手やお付の姿がやばい。ピンク頭や紫頭のスーツがただの運転手であるわけない。
    援交か商売女ならこんな金蔓捕まえて、楽に豪遊できるのかと最初は軽蔑した。
    「マイキーくん、ごめんね……!どうしても食べたくって……」
    「いいよタケミっち。欲しいもの全部持ってきたらいいから」
    「それは勿体ないっす!」
    男の声は酷く甘く、女の声は天真爛漫。
    レジに持ってきたのは美味しいと評判のアイスと1つ入りのたい焼き。こういうものを食べるんだ、と当たり前の事に驚いた。
    「あ、肉まん……!ま、まいきーくん……肉まん……」
    「聞かなくてもいいよ 」
    「やった!後で半分こしましようね!オニーサン、肉まんください!」
    「――円になります 」
    「夜遅くまでご苦労さま」
    ニッコリ笑われ、労われて、あぁ、あのヤクザの男もこういう癒しが欲しかったのかぁとしみじみ感じた。
    「あざいましたぁ~」
    いつも通り見送った。
    それ以降週に1度から月に数度フラッと高級車を止めてお菓子を買う。そうしていると、女の子は人懐っこいためか、話すようになった。
    「こんばんは」
    常連さんなので挨拶するとちゃんと必ず返してくれる。
    「……おぉ」
    「あ、いつもこの時間モブ田さんだね。夜遅くまでご苦労さま」
    「他にもいるんですけど、いつもお2人は俺の時ですね」
    「……タケミっち……何買うんだよ……」
    「あ、ごめんねマイキーくん。すぐ取ってくるから」
    マイキーさんはタケミっちさんが男と話すことが嫌で仕方ないらしい。
    え?こんな巨乳天真爛漫タケミっちさんを好きにならないかだって?自慢ではないが、危ない橋はどれだけ金を積まれても、絶対渡らない。あだ名だって知っているが絶対呼ばない。呼んだら酷い目にあうのが分かる。
    そんないい距離感で店員とお客様な関係だったある日、事件が起きた。
    例の酒癖の悪いお客さんと、マイキーさんとタケミっちさんが鉢合わせになったのだ。
    明け方3時にフラフラ入ってきた彼は缶ビールを手に取りレジに来た。
    「負け組はこんな仕事に縋らねぇとならねぇって辛いなぁ?惨めな気持ちしねぇの?あぁ?!なんだその顔はよォ!」
    「いえ……なにもありません。お会計は――円です」
    「なんか言い返してみろやぁ!!負け犬!!!」
    めんどくさいなぁ。泣くぞコラ!と思っていたら、入店音がなる。
    見るとタケミっちさんとマイキーさん。タケミっちさんは少し驚いていた。
    「らっしゃいませ~」
    最悪な化学反応だ。
    この男改め、おっさんが早く何もせず帰りますように!と祈ったが、それは届かなかった。
    「あぁ~?おい、汚ぇ商売女が入ってきたぞぉ?ひょろひょろの男連れてぇ」
    タケミっちさんは慌てて奥に入っていく。マイキーさんは無視だ。
    「無視してんじゃねー!社会のゴミ!!」
    真っ黒い瞳がおっさんへ向く。もしかして、殴り合い?流血か?と身構えた。
    「お兄さん、ちょっと酔すぎだよ……?トラブルは嫌だろ」
    静かにマイキーさんが忠告する。別に怒っては、いなさそうだ。
    「あぁ?!ガキが生意気な口聞いてぇんじゃねー!どうせテメェら薬で頭ラリってんだろ??あの女も股が緩い売春婦で性病もちなんだろぉが!!」
    「……はぁ?」
    アイスとジュースを持ったタケミっちさんは早く退店しようと精算を急いでいる。
    「ま、マイキーくん……!」
    明らかに雰囲気が変わったマイキーさんに声をかけたことで、おっさんはターゲットをタケミっちさんに変えた。レジ寄ってきて、彼女にさらに暴言を浴びせた。
    「淫乱女!汚ぇ体で金稼いでいいよなぁ?股開いてりゃ金貰えんだからよぉ。あーお前みたいな女なんて言うんだ?便器っていうのか?」
    「おっさん……。もうやめろって。いい加減にしろよ」
    マイキーさんの声が聞いたことない位に低い。
    小さく縮こまり、泣きそうなタケミっちさんはおっさんの横をくぐり抜けマイキーさんの腕を掴んで「行こう……」と小さい声で言っている。
    「言い返せねぇのか?便所女!あ、便女か?あはは!なんだ金やるからちんこしゃぶれよ!!……あぁ?なんだヒョロガキ!!殴ってみろや!てめぇみたいなのはなぁゼンリョーナな市民触っただけで、1発でサツに捕まんだよ、ゴミ野郎!!」
    「……。タケミっち、車戻ってろ……」
    「ダメだよ……、マイキーくん……!!」
    「何度も言わせんの……?タケミっち……、車、戻れ」
    目付きが変わった。
    優しい言葉と声色でしかタケミっちさんには話して来なかったのに、絶対服従の命令に変わる。
    「……っ……、マイキーくん……早く戻ってね……」
    「おっさんこっち来いよ」
    「あぁ?!やんのかヤク中のヒョロガキ!!」
    二人は外に出て電柱に街灯があり、そこだけスポットライトに照らされてるように明るい。監視カメラの真下まで連れて行った瞬間、おっさんの顔はブロック塀とマイキーさんのこぶしに挟まれ、崩れる前に髪を掴まれ数度またブロック塀に叩きつけられた。水に濡れたように壁の色が濃くなったように見える。
    手を離し倒れる体が宙に浮くほど蹴りあげられて、それは終わった。
    マイキーさんは自身のスーツの裾を引っ張り綺麗に整えていた。
    多分この流れは30秒もかかってない。
    プロの技ってのは、これこれ程まで洗練されているのかと恐怖よりも感動を覚える。
    そのまま2人は行ってしまうのかと思ったが、マイキーさんは車行ってからコンビニに戻ってきた。
    「さっきは迷惑かけたね。これ、少ないけど受け取ってよ」
    握らされたものを見て驚く。束になった札だった。
    つまり、口止め料という事だ。
    ありがとうございますも、貰えませんも言わない。
    そのまま出ていくマイキーさんを見送った。
    車は倒れるおじさんを無視し、いつもの高級車マンション側に走っていく。
    札束を貰った以上、何もしない。おじさんはしばらくするとよろよろ立ち上がり、いつもの自宅方向へ帰って行く。
    バックヤードで札を数えると50枚の諭吉さんだった。
    やっぱり、マイキーさんとタケミっちさんたちとは適度な距離で関わってて正解だった。
    もしかしたら、自分がああなってたかもしれない。
    その後、直ぐにコンビニを辞めた。辞めて、このお金でスーツを買い、小さな会社に何とか就職した。






    「マイキーくん……、暴力はダメだって……乱暴しないで……」
    「ダメだよ。俺は何言われたっていいんだ。でも、タケミっちの事はダメだ」
    「マイキーくんのことを言われたのは許せないけど、俺の事はどうでもいいよ……。それに、事実だし……」
    「なに?タケミっち体売ってるの?知らなかった」
    「……、マイキーくんに買われてるのと変わんないよ…… 」
    「そんなこと言わないでよタケミっち……。タケミっちの家族借金漬けにして、その清算に貰ったのは確かだけど……ちゃんと愛してる。タケミっちが欲しくてあんなことしたんだ。……怒ってる?」
    「借金の、カタじゃなくて……、マイキーくんの……ちゃんとした彼女になりたい……」
    「タケミっちは、ちゃんとした俺の彼女だよ。他の女も切った、タケミっち以外の女なんていない。でも、何も無いとタケミっちがどっかいっちゃうかもしれないじゃん。ごめんねタケミっち」
    「……っ、何処にも行かないよ!俺だってマイキーくんを本気で愛してる、ずっと傍にいるよ……!」
    「うん、分かってる。信用してる。だから外に出してるんだろ?」
    「マイキーくん……」
    「この話は終わり。三途、さっきの男始末しとけ」
    「ウッス。ボス自らしなくても俺らがやりましたよ」
    「タケミっちの事は全部俺がやるって決めてるんだ」
    「マイキーくん……、許してあげてよ……。あの人にも家族がいるんだよ……」
    「優しいねタケミっちは。でも、俺の家族を傷つけたんだ。償いは必要だろ……?あんま我儘言うと、外、出さないよ?」
    「ご……めんなさい……」
    「俺、傷ついたんだ、ヤツのせいで。慰めてくれる……?」
    「ん……。わかった……」
    「一杯慰めてね、タケミっち」

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