ホラゲー風 目が覚めた時、視界が二重にぶれていた。風景が揺れ、天井と壁が重なり合って見える。
(うっ……くそ、頭が……ここは?)
目を凝らしても焦点が合わず、照明は落ちている。月明かりのような光が差し込み、浮かび上がるのは空中を舞う埃と沈黙に沈む空気。床も壁も、時間から切り離されたようにひどく静かだった。それでも構造は崩れておらず、古びた内装や廊下は病院としての形を保っている。だからこそ、異常が際立っていた。
待合室にあるはずの椅子が、廊下の端に寄せられ、階段を塞ぐように積まれていた。背もたれを噛み合わせて丁寧に組まれたものもあれば、無造作に積み上げられたようなものもある。複数の人間が各々の意図で築いた即席のバリケード。防衛か、隔離か、それとも逃走の足止めか。一体ここで何が起きたのか。
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