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    suika_disuki

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    suika_disuki

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    🎍🐤要素があるのです
    本誌ネタバレ含みますので注意

    バレンタインの小話本誌ネタバレが含まれます!!!注意!!!




     テレビを見ているとバレンタインデー特集なるものがやっていた。そうか、もう2月。今までの人生で1度も嬉しい、貰いすぎて困った! なんてことになったことも、なる雰囲気もない。
    「チョコレート会社の陰謀……」
    「あんたも少しはモテればね~」
     母さんに笑われた。
     高級チョコなら手作りチョコまで広い特集にある考えが浮かび上がった。
    (そういえば、タイムリープした時代って友チョコとか、家族チョコ、マイチョコってのが流行ってたな……。これから新しいチームとして、千冬とイヌピーくんに友チョコあげよっかな? いや、これから頼りにするし、絶対あげよう!!)
     思い立ったが吉日。部屋に急いで戻り財布を確認する。軍資金は乏しいが、とりあえずこれで購入出来そうな物を探しにデパートへ向かう。
     未来の記憶と同様に催事としてバレンタイン特設会場が出来ている。
    (おお! ここがバレンタインの特設か……! なんかすげー!!)
     見た目は金髪の子供だが、中身はいい歳した大人。しかも過去という過ぎ去った時間。恥ずかしいと思うことも無くキョロキョロ店舗をみて回る。
    「ご試食いかがですか?」
    「い、いいんですか?!」
    「どうぞ」
     クスッと笑ったお姉さんに試食のチョコを爪楊枝から受け取る。美味しい。
     想像していたよりも、手頃な価格もあるものだと思いながら色々みて回る。
     ハンチングを被ったカフェ風の制服のお姉さんやパティシエ風の制服、皆楽しそうに買い物をしていて、釣られて楽しくなってきた。
    「あっ!」
     目に止まったのは可愛い猫がカラフルに街中をかける絵柄の缶。中身はチョコキャラメル。
    (これ、千冬喜びそう!!) 
     黒猫もちゃんといるし、価格も700円とまだ買える範囲。
    「いらっしゃいませ、キャラメルのご試食されますか?」
    「はい!!」
     チョコキャラメルではないが、出されたキャラメルは美味しかった。
    「これください!」
    「ありがとうございます。プレゼント用の袋もお付けしております」
     キラキラ眩しい笑顔で袋を渡される。
    (な、なんか……凄い温かい目で見られた気がする……!! ちょっと恥ずかしいな……早くイヌピーくんのも見つけて帰ろっ……!!)
     さて、イヌピーくんは年上だし、なにがいいのか店をみて回る。
     宇宙みたいなチョコレートにスティックタイプ、定番の生チョコにお酒から作ったチョコを見て、値段を見る。予算がキツイ。
     ディスプレイされる巨大テディベアのチョコに感動し、飴細工にも目が輝く。
    「イヌピーくん……」
     ひとつの店舗で目に止まったのはおっとりした犬の顔と骨がセットのチョコ。なんだかイヌピーくんみたいだ。2個入りで700円。
    「あの、これください!」
    「かしこまりました」
     プレゼントように、とこちらも新しく袋をつけてくれた。
     ホクホクして帰ろうと出口に向かう途中ふと1つのチョコが目に留まり、迷わずそれも買っておく。
     数日先のバレンタインデー。この日にやはり渡すべきだろう。学校には持って行くのはちょっと恥ずかしいが、そこで千冬に渡すのが1番。その後イヌピーくんにあって渡す。
    【イヌピーくんこんにちは、14日の夕方、学校終わったくらいなんですけど少し時間ありますか?】
     連絡を入れると直ぐに返事がある。
    【わかった。また連絡くれ】
     無事約束を取り付けられ、ホッとした。
     さて、当日が楽しみだ。


    ■□▪▫■□▫▪■□▪▫■□▫▪■□▪▫■□▫▪


     さて、当日のバレンタインデー。学校に来る男共は何処か浮き足立っている。しかし、浮き足立っているのは男だけじゃない。女子も皆ソワソワ、チラチラだ。
    「おはよう相棒!」
    「はよー。千冬の靴箱ヤベー……」
    「女子すげーよなぁ」
     千冬の様子から、ギュウギュウに綺麗に詰められたチョコ達は例年通りらしく、このモテ男め……!! と複雑な顔をして通学カバンに無造作に詰められたお菓子を見つめる。
    「相棒……?」
    「あ、ごめっ……。千冬って……めっちゃモテるんだなぁって……」
     羨ましくなんて……羨ましくなんてないっ! わけないだろうが!! 羨ましい!!
     溝中だとアッくんが1番にモテ、次はタクヤ。意外とマコトも貰うのだ。どれだけ山岸とギリギリしたことか。
    「あー、でも相棒はヒナちゃんから貰うしいいだろ。それ以外から、貰ったりしたのか……?」
    「げっ、それ俺に聞くかよ?! ヒナからもまだ貰えてないし……!!」
    「彼女から貰えれば十分だろ? 本命から貰えるとかさそれ以上の幸せないって。俺も、気になる奴からギリでもいいから欲しい……」
     チラッとこちらを見る千冬。モテ男の想いが通らない相手って人妻くらいしか思いつかない。少女漫画に飽き足らず、そっちに進んでしまったのか?
    「モテ男には沢山貰えるチョコのありがたみがわからんのですよ……!!」
    「わかんねー……。顔も知らない相手のチョコなんて嬉しくねぇ」
     義理と分かるチロルチョコとかキットカットとか音符チョコでも貰えれば嬉しい。それすら無く、昼のお菓子パーティーで余った義理ですらない、ただのお菓子しかない俺に謝って欲しい。
     さて、問題はこのチョコをいつ渡すべきだろう。千冬がここまでモテるとは思ってなかった。
     朝から女子がひっきりなしにやってくる。靴箱に入っているが机の中と荷物棚にも入ってた。千冬と同中のダチ曰く、今年は去年より少し多い、だそう。羨ましくなんて、やっぱりある!!
     しかも俺のチョコの価値がどんどん下がって来ている気がする……!!
     これは放課後も呼び出しも凄そうだ。折角持ってきたが今日は渡せそうにない。
     昼になるとアッくんと千冬、八戒が急いで来いと言うので急かされ後を追う。普段は使わない体育館裏までやってきた。
     3人曰くゆっくり出来ないから、との事だ。
     今年もゼロの山岸とギリギリし、新たに加わったタクヤともモテ男への恨み節を炸裂させた。
     唯一の良心ヒナが皆に生チョコを振る舞い、彼女からのチョコもゲットした! お熱いですね~! なんてからかわれる。
     皆でワイワイしていると気付けばもう少しで昼休みも終わる。
    「ごめん、今日職員室に呼ばれてるから」
    「あ! 俺も課題出してねー!!」
    「ヒナも先に戻るね」
     それぞれ用事が重なり、偶然のタイミングで千冬と2人きりになれた。
    「俺らも戻るかー」
    「あ、あの! 千冬……!!」
    「ん?」
     コーヒー牛乳のストローを噛む千冬。やっぱりこういうの、渡すの照れるな、なんて今更ながらの感覚がやってくる。
    「その、こ、これ!」
     持ってきたカバンから可愛い袋を取り出した。色々ありがとうとか、これからも相棒としてよろしく、とかそんな言葉が次々浮かんでくる。
    「千冬……これからも俺のそばにずっといてください……!!」
    「あっ、相棒……?!」
    「いっぱい貰ってるの分かってるけど、こないだ選んで買ってきた……!」
    「っ、タケミチっ!!」
     袋を受け取る、と思ったが抱きつかれた。そんなに喜んでくれるなんて。友チョコ最高!! 買って良かった。
     友情って素晴らしい。千冬の力に負けないくらい強く抱き返していると予鈴が聞こえ、2人で慌てて教室に帰る。
     放課後まで何度も教室で目が合うし、なんだか今まで以上に距離が近くなった気がする。未来で女子高生や女性がこういうことをしていたのはこのためか。アッくんたちはマブだし、必要ないと思ったけど、買っておけば良かった。なんならみんなで食べる為スーパーで売ってる大袋で良かった。
     そんなことを考えつつ、千冬も喜んでくれたのでイヌピーくんに渡すのも少し楽しみになってきた。
     たわい無い話をしながらの歩き、駅で足を止める。
    「ごめん、俺今日は行くところがあるんだ!」
    「相棒どこ行くんだよ? 俺も行くわ」
    「いや、いいって! アッくんたちとカラオケ行ってこいよ!!」
    「そうだ! 松野いつもいつも相棒相棒ってたまには俺らも優先しろー!」
    「そのチョコ仕分け手伝ってやるからか」
     持ち込みOKのカラオケへ千冬は連行されていく。連れていかれる顔はペットサロンで無理に連れてかれる犬みたいだ。こっちをじーっと見て少し残念そうにしているのに手を振る。
    【遅くなってごめんなさい! 今から向かいます!】
    【待ってる】


    ■□▪▫■□▫▪■□▪▫■□▫▪■□▪▫■□▫▪


     いつものバイクショップに行くと中で黙々とイヌピーくんは作業をしている。
     真剣な顔はドラケンくんと似ていて、少し切なくなった。
    「イヌピーくーん!」
     わざと大きな声で元気よく中へ踏み入る。
    「! 花垣……驚いた。心臓が止まるかと思った」
     顔は全然驚いてない。イヌピーくんの軽口なのか、本当なのかいまいち掴めない。
    「ごめんなさい。そんなに驚くとは思わなくって」
    「今日は少し疲れてな……」
     はぁ、と息を吐く。その理由を聞くまでもない。いつものソファーへ行けば机の上に沢山の小袋と高そうな紙袋、多分チョコじゃない。さらに言えば、イヌピーくんだけじゃなく、ここの主だったドラケンくんの分もある。2つに分けられ、飾られた写真の前に綺麗に並べられていた。
     きっと沢山の人がやってきて、それの対応に疲れてしまったのだと予想ができる。大人のバレンタインは子供のそれとはかなり違った。
    「疲れてるのに……すみません……」
    「ボスが来るのは大歓迎だ。で、今日はどうした? どっかの族でも潰すのか?」
    「急に物騒……! そんなことしませんよ……!!」
     少ししんみりしたがイヌピーくんの天然発言で空気が変わる。
    「えっと……。チョコ沢山貰ってますね」
    「ん? そうだな……。かわるがわる来て仕事にならなかった」
    「イヌピーくんやっぱりモテますね……!!」
    「女ばっかりならまだいいんだけどな……」
     その顔が引きっている。イヌピーくんは黙っていると深窓の佳人。店でもあまり喋らず無口なので変なファンもいるのだった。幸い深窓の佳人は見た目だけ。中身は真逆の院卒、バリバリの武闘派で自らの拳で解決している。
     男がチョコ、変なファン、が繋がり買ったチョコを渡しにくくなってしまった。モジモジしているとイヌピーくんの顔がハッとする。
    「……! すまないボス……。気が付かなった。チョコ、用意してないんだ。明日渡すからまた来てくれるか……?」
     チョコの山をじっと見ていた事に勘違いしたイヌピーくんは、申し訳ないと眉を下げた。
     いや! チームのメンバーにチョコ集るほどまだ落ちぶれてないから……!!
    「ちっ、違うから……!! チームからチョコ回収なんかに回ってないから……!!」
    「俺は気が利かない……」
    「ほんとっほんと違うんで……!! あの、いや、イヌピーくんこんなにチョコ貰ってるって思わなかったし……男らってやっぱあれだったかなって思って」 
    「?」
     イヌピーくんは何が言いたいか分からない、そんな顔で首を傾ける。
    「えっと……。これ……。今日はバレンタインだから……喜んでくれるかなーって……」
     カバンから小さな紙袋を取り出し差し出す。
     袋と顔を交互に見てくるイヌピーくん。これ、もしかしてパワハラ? 一応ボスとして立ててる相手からチョコ貰えって族あるあるな縦社会のパワハラ?!
    「ごめん……俺、イヌピーくんの変なファンと同じことしてる……よね? じゅ、純粋に喜んで欲しくて、変な気持ちとかじゃなくっ……な、無かったことにして……!!」
     だめだ。ストーカーの言い訳、勘違い痛客の【俺は勘違いしてねーし? お前の勘違いだし?】ムーブすぎる。
     チョコを持って帰る為、カバンに戻そうとする手がガッと掴まれる。
    「えっ」
    「俺のじゃないのか?」
    「いや……これ以上は迷惑かなって……」
    「迷惑って俺は言ってない」
    「もう沢山あるし……」
    「……」
     め、眼力が凄い……!!
    「俺のも……貰ってくれます?」
    「ありがとう花垣、嬉しい。1番嬉しい。大切にする」
    「大切にしないで食べてくださいね?!」
     イヌピーくんには食べ物よりたものの方が良かったか……?でも物って、何かカレカノみたいでちょっとなぁ……。送るもので色々意味があるとか何か聞いた気がするが、次があるなら消耗品のタオルとかにするかな……。
    「えっと、俺に着いてきてくれてありがとうございます! イヌピーくんのこと、大切にするからこれからもよろしくお願いします……!!」
    「花垣……俺も、花垣のこと大切にする」
     両手をギュッと握れて言われると、顔が良すぎて目がっ……!
     イヌピーくんは、東卍のメンバーのイケメンとちょっと方向の違うイケメンだ。
    「あ、あの……手、そろそろ……」
    「すまない。もう店も閉めるし送ってく」
    「いや! 大丈夫ですよ。他に用事あるので、疲れてるのにそんなのさせれません」
    「夜道は危ない」
    「あはは、女の子じゃないし、まだ7時なんで大丈夫ですよ! また集会……って言うには人が少ないか、次のスカウト会議で!」
     これは本当に送ってくれそうだから走って店を出た。
     イヌピーくんも喜んでくれて良かった!
     ほくほくした気持ちのまま来た道を戻る。
     目的のマンション前に来て電話をかける。
    『もしもし? どうしたの?』
    「もしもし、ヒナ今、時間ある……? 近くまで来てて……」
    『えっ? すぐに行くね……!!』
     マンションの外までヒナは来てくれた。ドアの前でも良かったが……、ちょっと恥ずかしい。
    「どうしたのタケミチくん?」
    「その、ヒナ。こっこれ……!!」
     誰よりも緊張する。ネックレスを上げた時は覚悟が決まってた。決意の表れの勢いだけど、今は違う。
    「その……買い物行ったら、ヒナっぽいなって思って……! バレンタインだから……!!」
     顔はきっとゆでダコ並に赤いと思う。驚いたヒナの顔は優しく、花が咲いたみたいに笑った。
    「まさか君から貰えるなんて思って無かった。ありがとう、すっごく嬉しい……!」
     ヒナの顔もポッと赤くなっている。
     チョコレート売り場から出る時目に止まった。緑にコーティングされたハートが四つ入ってクローバーの形になったチョコ。ヒナの顔が浮かんで、自然と買ってしまった。
    「……ヒナ、また明日」
    「うん、タケミチくんまた明日」
     さっきの流れ、キスの1つでもするところじゃん! なんて考えが帰り道浮かんで少し後悔する。
     それでも今日は人生で1番良いバレンタインだった。
     
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