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    tea_w1th_lem0n

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    tea_w1th_lem0n

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    これはmgのじゃふぁ夢
    やはり細かい夢主設定があるやつ(むかしのだからね)。シン冒軸

    おまえはしぬなよな〇夢主
     ナシームさん:医務室の主。シンドバッドが小さいときから一緒に旅をしている。ジャーファルとは幼馴染であり、最近いい仲になったが、それを満喫する間もなく最初のシンドリアが滅んだ。

    ──

    「ナシームさん。ジャーファルさんが」
     そう言ってマスルールが医務室を訪ねてきたのは、あのおぞましい戦いが終わって、三か月ほどすぎた、ある早朝のことだった。
     彼は私の顔を見ると、眉をわずかに持ち上げて、驚いたような顔をしたけれど、「ジャーファルがどうしたの?」と聞けば、背中に負った荷物を見せてくれた。それが荷物ではなく、書類を握りしめたまま気絶しているジャーファルだということに気付くまで、時間は要らなかった。空いている寝台にジャーファルを動かして、簡単に診察する。息は確かで、脈も正常、手足もあたたかい。私はマスルールを見上げた。
    「たぶん、睡眠不足だと思う」
    「……やっぱり」
    「最近寝てるとこ見た?」
     沈黙が答えだった。私はため息をつくと、額に張り付いたジャーファルの髪を払う。初めて出会ったときか、修羅場の後か、とにかく比較対象が結構前になるくらい、臭いし薄汚れている。起きたら湯殿にぶちこまないとな、と思った。私も清潔なだけで、人のことは言えないけど。
     シンドバッドを失って──でもそれだけじゃなくて、もっとたくさんのものを失って、でもぼんやりしていられないのが、責任があるということだった。あのおぞましい戦いが終わってすぐ、傷ついたひとの手当てに走り回って、魔力切れでふらふらになるまで回復魔法を使い続けて、手が痛くなるくらい包帯を巻いて、薬を調合して、その間にも医術者たちの指揮をとって。私がそうやって過ごしている間、たぶんジャーファルは、国を立て直すためのあれこれに奔走していたんだと思う。政治のことは私にはよくわからないけど、ジャーファルが類まれな頑張り屋さんなことは、知っているつもりだった。
    「寝かせておいてあげようか。すぐに戻らないといけない仕事があるのかな」
    「いや、それはもう終わったはずッス」
    「よかった。じゃあ、みんなに伝えておいて。起きるまで……うーん、二日間は、私の権限でお休みにします」
    「……だめです」
     ジャーファルの瞼が持ち上がる。伸ばした手が起き上ろうと寝台に手を突こうとするので、私はその腕を取って、一緒に寝台に倒れこんだ。
    「だめじゃないです」
    「まだ、やることが、たくさん」
    「お馬鹿さん、貴方が本当に体を壊したら、それを誰がやるのか答えて」
    「……壊れません」
     そうは言ったけれど、それ以上は動けないみたいで、ジャーファルはぼうっと天井に視線をやった。マスルールに戻っていいよ、と視線だけで訴えると、彼は頷いて席を立つ。ジャーファルが腹筋だけで上体を軽く起こした。
    「ごめんね、マスルール。ありがとう」
    「……そういうのは良いんで、ちゃんと休んでください」
     ぐうの音も出ないよね、ジャーファル。再び枕に沈んだ彼を見下ろして、私はくすっと笑った。体を寄せるようにして、横に寝そべる。
    「……医務室、空きができてたんですね」
    「動ける人は寝てても悪くなるだけだから、動いてもらってる。どうしても動けないひとで目が離せないひとも……もういないから」 
     よくなった人も、そうじゃなかった人も。私がそう答えると、ジャーファルは「そうですか」と頷いた。腕を伸ばして、ジャーファルの体をぎゅっと抱きしめる。くさい、と呟くと、じゃあやめろ、と不機嫌な声が喉を鳴らした。
    「嫌だ。……ね、ここにいて。しばらく顔を見られなかったから」
    「……どうしてもって言うなら」
     思ってたより甘えた声が出たな、と思った。だからジャーファルもほだされてくれたんだろうな、とも。骨っぽい掌が、私の背中に回る。色っぽい空気じゃなくて、ただ、本当に昔、私たちがきょうだいみたいに接していたころと同じ距離で、ジャーファルの息が耳にかかった。
     最後に会ったのはいつだったっけ。戦いの後、彼の手当ても私がしたし、シンを失ってからの数日で、方向を決めるための会議みたいなものも、一緒にした。でもそれから、まともに顔を見た記憶があんまりなかった。以前はよく二人で、それこそデートみたいなお出かけもして、できないときはお互いの部屋に通って、なんて、してたのに。
     ジャーファルの体は冷たくて、一緒に横になっていると体温を奪われそうだったけど、逆に私から奪い取った体温で、ジャーファルは少しずつ眠くなっているみたいだった。重たげな瞼の向こう側で黒い瞳が頼りなく揺れるのを見つめていると、私は急に彼が心の底から愛おしくなって、ほとんど縋りつくようにして、鎖骨のあたりに顔をうずめた。
     お腹のあたりに、彼の暗器の感触がある。しばらく振るわれていないのはいいことだな、と思って、私もかたく、目を瞑った。

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