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    iz_mife

    @iz_mife

    だいたい今はゴーティエ兄弟。
    兄上に夢見がち。練習とかラクガキ多めです。
    絵のまとめはpixivに→https://www.pixiv.net/users/2916510

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    iz_mife

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    【ギャグにするつもりが、普通にアッシュくんが恐がっちゃってる痴漢系シルヴァンです……
    (ギャグにしたかったんだ本当に…)
    噛ませ犬みたいなシルヴァンを愛を持って書いています…(笑)】

    士官学校入学の手続きの為、ちょうどガスパール領からガルグ=マクへ行く予定の商団の馬車に乗せられてから丸一日馬車に乗った結果……まさにこの世の地獄をアッシュは体験していた。
    (うぅっ……駄目だ、まだ気持ち悪い……)
    もう胃には何も残っていないというのに。道中で馬車が休憩するたびに離れたところに駆けていき、身体を折り曲げる領主の養子の姿はどれだけ情けなかったのだろうかと、石階段の端で小さくしていた身体をさらに縮こませため息を吐く。
    (皆さん、呆れてたな……恥ずかしい…もう絶対に帰りは馬を借りて一人で帰ろう…)
    義父には怒られるかもしれないが、あんな醜体を晒すくらいならば少しばかりの危険を乗り越える自信はあった。何と言っても自分だって来年からは、あのガルグ=マク修道院の士官学校に身を置くのだから、と標高が更に上にある憧れの学校をアッシュは仰ぎ見たが、すぐに吐き気に襲われまた下を向いてしまう。
    今はやわらかな日の光も、商店の食欲をそそる匂いすらも、ただ気分の悪さを助長するものでしかない。あと少しだけ休んだら修道院へ向かおうと自らの身体を抱いて目を瞑った瞬間、聞き慣れない声が上から振ってくる。
    「やぁお嬢さん、どうされました?こんな地べたに座って……せっかくのお召し物が汚れてしまいますよ」
    (…………おじょうさん?)
    確かに先程、同行させてもらっていた商団の若い女性から「朝はまだ冷えるから被っていなさい!」と厚手の花柄のストールで、頭から身体ごと包まれた記憶はあるがそれだけで間違えられる筈はない。ガルグ=マクがこんなに標高が高い土地とは思わず、冬は終わったと思い込んで軽装で出て来てしまい外套を持ち合わせてなかったのだ。

    「いやっ……あの…」
    「あ!もしかして馬車に酔っちゃったのかい?いや~俺も昨日なったんだよね。そうだ!ちょっと待っててな?」
    アッシュが声を上げて否定する前に男は走り去ってしまった。後ろ姿から見て恐らく旅人だろう。心配してくれるのは有難いが、今は目線を動かす事も辛いアッシュは再び目を閉じ吐き気を追い出す為に大きく口を開く。
    (はぁ駄目だっ…息まで苦しくなってきた…)
    新鮮な空気を吸えば乗り物酔いなんて良くなると思っていたのに、初めての土地での緊張もあってなのか心臓の音まで早くなり身体のだるさまでどんどん増してくる。
    上体も起こしておられず、ずるずると頬を横の石壁に擦り付けながら身体が倒れていくのが分かるがもうどうしょうもない……寝転んでしまおう。そう諦めたところで突然肩を力強く引っ張られて仰天する。
    「おいおい駄目だよ。こんなとこで寝たら危ないって」
    先程の男の声が耳元で聞こえアッシュは身体をこわばせる。
    (隣に座られたの全然気づかなかった……)
    恐る恐る目を開ければ、目の前には露店で買ってきたのだろうか飲み物を片手に持った赤髪の青年が、鼻先が触れ合いそうなほど近くにいて思わず叫びそうになる。
    「……ッ!!」
    「あーごめんね驚かせて。ほっぺた大丈夫?擦ってない?ほらもっとこっち来なって」
    いきなりペタペタと頬を撫でられて声が出ない。
    「ひっ……」
    「あちゃーちょっと擦れてんな~駄目だろ?君みたいに可愛い子が顔に傷作っちゃさぁ」
    無遠慮に自分の頬を男の手が撫でまわすのに肌が粟立つ。指先で頬を何度も触られて、心配されてるのは分かるがただの擦り傷でここまでされる意図が分からず、アッシュは呆然と目の前の赤毛の青年を見上げるしかなかった。

    「なぁ、君さっき馬車から降りてきただろ?なのに、一人だけふらふらってここに座ってしばらく動かないから心配でさ……」
    距離が近い。先程から驚くほど距離が近く、お喋りが止まらない男にアッシュはとにかく圧倒されていた。
    身なりからしてそれなりの身分の男性だとは思うのだが、この馴れ馴れしさと今まで感じたことが無いような、居心地の悪さは何なのか?とアッシュは疑問を持つ。
    「これ飲みなよ。俺も昨日実家からここに来てちょっと馬車酔いしちゃったんだよね。ホラあそこの露店のやつ、さっぱりしてて美味いぜ?」
    店から買ってきたのだというそれは貴重な氷が一粒と、透き通った純水に果実の匂いをふわりと感じるものでゴクリとアッシュは生唾を飲む。気持ち悪さはあるものの、先程から水分を取りたくてしょうが無かったのだ。見ず知らずの人からの施しは危険とも思ったが、まわりには全く同じものを飲んでいる人も沢山いるし心配することもないだろうと、アッシュはようやく手に取る。
    「あっ……りがとうございます」
    「いえいえ、どーぞ」
    満面の笑みを自分に向けてくる男に軽く会釈をして、渡された杯に口をつければ想像どおり口の中が気持ちよく潤い、一気に気分も浮上する。喉の渇きもあいまって音をたててどんどん飲み込んでしまう。
    その様子を隣の男は、アッシュの隣にぴったりと座り微笑ましく見つめている。
    「……ぷは、染みわたります……生き返ったっ」
    「はは大袈裟だなっ……あーほら、ゆっくり飲みなって?」
    一気に口にしたせいで唇から一筋零れてしまった甘露の水を、アッシュが拭う前に男の指がなぞってくる。
    驚きに見上げたアッシュの薄緑色の目と意図的に視線をあわされ、そのまま指で下唇を ふに と摘ままれる。
    「なっ……」
    アッシュはまた混乱する。一体なんなんださっきからこの男は。旅人を介抱してくれる優しい紳士……なのは違いないのだと思うが行動がおかしい。先程からまるで……
    と、そこまで思い立ったところで思い出す。男の最初の呼びかけを。
    まさか、まさかとその可能性を打ち消そうとした瞬間、また青年がアッシュの肩を抱いて自分の方に寄りかからせる。
    「ははっ……ねぇ、君本当に可愛いねいくつなの?」
    「え……」
    振り向けば目の前の赤毛の男が自分に身体をもたれかかって耳元で話しかけてくる。

    (近いっ……ちかくない?この人……)
    先程、まさかと打ち消した可能性がまた真実味を帯びてくる。
    「いやっ……そのっ」
    「ねぇいくつ?どこから来たの?」
    有無を言わせぬ言い方に、肩が強張る。確かにそれぐらいなら教えるべきなのかもとも思うが目の前の男の真意が掴めない、とアッシュは頭を抱える。
    「あのっ……ちょっと、はなしてください」
    「ん?なに?」
    あくまで笑顔だが肩を掴む手の力が緩むことはない。ますます顔を近づかれ、男の厚い唇が耳に何度かあたる。視線からも逃げることが出来ない。
    「いや、あの、ちょっと……」
    「良かったらさ君の事もっと聞かせてよ?……何なら今から俺がとってる宿屋に来ない?」
    肩を抱かれ、杯を持っていない方の手を握られて指先で手の甲を何度も擦られる。
    ここまでされれば、流石にアッシュも男の真意に気付く。
    「あのっ僕……男なんです!!」

    ~続くか……フェリアシュになるか(゚_゚
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