王位継承権第3王子の14歳の誕生日、冥府のサトゥン王は玉座に3人の息子たちを呼び付けた。
そこには使用人たち、隣国諸国から招かれた神率いる要人たちが集まり、皆一様にサトゥンの動向に注目していた。
「我ここに、第1王位継承権を第3王子のオウケン与えることを宣言する」
途端に、使用人たちはざわつき、神達はニヤついた。
第1王子のデスハーはこの事態を予想していたようで諦めたような表情をし、第2王子のデスパーはすっかり青ざめ父王を見上げていた。
当の第3王子は言われたことを理解するのに時間を要したのか、1拍置いて激昂した。
「父上!何故ですか!?王には私ではなくデスハー兄上が相応しい!そもそも私は第3王子です!何故です!何故です!」
今にも掴みかからんばかりの第3王子を、第1王子と第2王子が抱え込んで黙らせようと必死になっていた。
「オウケン…ああかわいいオウケン」
第3王子には甘いというサトゥンの噂は本当だったのだな、と神々は感心した。おそらく、第1王子と第2王子が同じことを言えば、命までは取らなくてもしばらくは起き上がれないくらいの折檻は受けていただろう。
「王は、私の器は、お前しか勤まらんのだよ」
ニコリ、とサトゥンは笑い、神々に向き直った。
「同志たちよ、時を待て。その時が来れば…もう我々があの忌々しいザキに頭を垂れることも無くなる…同志たちよ!新しい神々の時代を私と築こうではないか!
その時を!待とうではないか!」
神々は、応といっせいに声を揃え、拳を掲げた。
第2王子はその白々しさに腹の底がひえさらに青ざめたし、第1王子は父王の考えることが分からず、だがなおも父王に掴みかかろうと暴れる第3王子を必死になって押さえ込んでいた。
「父上!ご説明を!ご説明を頂きたい!何故です!何故デスハー兄上ではなく私なのです!父上!」
「先も言ったろうオウケン、私の器はお前にしか勤まらないのだよ」
ニヤニヤと笑うサトゥンを見て、次に神々は王子たちに目をやった。
第1王子は、その容姿こそサトゥンの生き写しだが思慮深く真っ当な人格者のように見えた。
第2王子は亡くなった王妃にそっくりで非力さがみてとれた。
第3王子は、唾を飛ばし、怒りに我を忘れ喚き散らすそのさまが癇癪を起こしたサトゥン神そっくりで、まさにサトゥンの後継者として相応しい物に継承権を与えたものだ、と感心していた。