「本当に、よろしいのですか?」
いつになく深刻な声色で重々しくオレに尋ねる類。類の両手に収められたオレの手が強く包み込まれる。
「もちろん、だ……。おまえ、に、なら」
「ふふっ、恋人冥利に尽きます……」
耳元で響く声は笑っている。霞み揺れる視界では、類の顔を詳細に捉えることができないが、長い間聞き続けてきた声だ。類の心の機微に気づけないオレではない。
「僕がこんなことしたとばれたら、冬弥くんたちに怒られてしまうかもしれませんね」
口調はいつも通りなのに、心なしか指が震えているような感触がする。酷なお願いであることは重々承知していた。でもやはり、このままいつ目覚めるかわからない状態で眠り続けるより、ほかの誰でもない、類の手で眠りたかった。
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